恐怖
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目が笑っていない国王陛下から逃げるように真っ白な空間を走る。
いつもなら勝手に目が覚めるのに、今日は目が覚める気配がない。
ただ白い空間しか続いていな中での鬼ごっこはすぐに終わった。
『レウシアなんで逃げるんだい?』
「それは……あなた様のおっしゃることが分からないからです。国王陛下」
『そんな冷たい呼び方をしないでくれよ』
私の肩を痛いほど力を籠めて掴むこの人は、本当に国王陛下なのだろうか?
目には光がなく、私を見ているようで虚構を見つめている気さえする。
「私はただの平民です。国王陛下をこれ以外でお呼びすることはできません」
私がはっきりと告げると目の前の国王陛下は、狂ったように叫び頭を抱えてうずくまる。
『なんで! なんでだよ! レウシアまで、俺のことを否定するのか?』
怖くて距離を取った私に、ゆっくりと国王陛下がにじり寄ってくる。
後ずさりをしているとさっきまでは無かったのに急に背中に壁が当たる。
そして、その壁から手が出てきて私の事を抱きしめる。
あまりの怖さに、身体の震えが止まらない。
国王陛下の顔が眼前に迫ってきて目を閉じる。
『ねぇ……レウシア。私の生まれ変わりなのだから彼の子孫を愛してくれるわよね?』
温度のない声が私の耳元から聞こえる。
驚いて目を開けるとそこには、ティア様が陛下を抱きしめて立っていた。
状況が呑み込めなくて固まっていると、愛おしい者を慰めるようにティア様が陛下の頭を撫でている。
『レウシア。ヘリオスが可哀想だとは思わないの? あなたが彼の為に祈らないから彼はより不幸に近づいているわ』
「何を言われているのですか? 私がこの国全体のために祈らないことが不幸の元凶だと言われたのはティア様ですよ?」
何が言いたいのだろう……。
ティア様の真意が分からなくて、私はただ絶世の女神を見つめることしかできない。
『そういえばそうね。私もあれから考えたんです。私が神界に行くことになった時誰の幸せを願ったのか。私はこの国の王の祖先である彼と私たちの子どもの幸せを願っていたのを思い出したのです』
何も間違っていなかったというように、恍惚な笑みを浮かべながら陛下を抱きしめるティア様からは、恐怖すら感じる。
それはさっき国王陛下から感じた恐怖の何倍も底が知れない……。
『ふふふ。レウシア、あなたは知っているかしら? 神って意外と俗物的で自分勝手な存在なのよ?』
そう言いながら高笑いするティア様は私の方に手を伸ばされる。
触れられていないのに、私の身体が引っ張られてティア様の方へ近づく。
怖くて、抵抗するように自分の中にある力を放出する。
『抵抗しても無駄よ。あなたは所詮ただの人間だもの。あの人に良く似たこの彼を手に入れるための私の器なの。アウラムなんかに獲られる前に、私が手に入れないと!』
ティア様が叫ぶと私を封じるようにティア様の神力の壁ができる。
『堕ちたのが本当にアウラムだけだと思っていたの?』
壁にどんなに叩いてもヒビの一つも入らない。
声も外に聞こえていないのか、ティア様の声は聞こえるのに私の声に反応する様子はない。
気がついたら国王陛下は、ティア様の腕の中でぐったりとしている。
「オーシー! 目覚めて! あなたが居なくなったらこの国はどうなるの!」
私がどんなに呼びかけても彼は糸の切れた操り人形のように動かない。
なんで……こんなはずじゃなかった。
『喜びなさい。これでもうレウシアが繰り返すことは無くなるわ。だって、あなたの身体も魂も封印されるの。ある意味、望んでいた死を迎えることができるのよ』
慈悲すら感じる笑顔を私に向けるティア様を見つめながら私は、涙を流すことしかできなかった。
確かに私は死を望んでいた。
永遠のように繰り返す時に、嫌気がさしていた。
毎回愛した人が亡くなるのを見続けていた。
発狂したときもあった。
食事をしなくても生きることに絶望を感じた。
あの日からやり直したいなんて全く思っていないのに、帰ってくる一日目に毎回絶望した。
誰が悪いのだろう?
最初に陛下のためだけに祈った愛に憑りつかれた浅ましい女?
一人の女神に執着して身を堕としてまで、執着し続けた男神?
一人の人間を愛して他の物を全て自分を愛してくれいた男神に押し付けて人間界に降りた女神?
誰が悪いの?
全員が悪いの?
私はこんな形で最期を迎えるの?
本当に……女神はオーシーを幸せにしてくれるの?
『大丈夫よ。神は記憶も人格も思いのままに洗脳できるのだから』
私の頭の中に流れてくるこの国で一番尊敬されて、尊いとされる女神の言葉が流れ込んでくる。
私は、目の前にいる女神を睨みつける。
『言ったでしょう? 神は自分勝手なの。この子が彼に似ているだけの別人だなんてわかりきっているわよ。それなら、彼のようにすればいいじゃない』
未だにティア様の腕の中にいるオーシーは、微動だにしない。
『ねぇ? レウシア。なぜあの地下にある魔法陣のあなたが横になるところに石碑があるかわかる?』
楽しそうにティア様が笑う。
本当に愉快で仕方ないというその様子にもう何も感じない。
『あそこに私と一番相性のいい聖女を封印するためよ』
私は言っていることの意味が分からなくて、固まる。
『昔、私が彼の為に人間界に降りるのを嫌がったアウラムに教えたの。私がもし神界から帰ってくるとするなら依り代を封印するための石碑が必要になるって……そしてらあの子まんまと作ったのよ。石碑を!』
あぁ……神とは皆狂っているのだ。
世界なんて気まぐれに創造できて、自分の思い通りにならなければ簡単に消してしまえる。
そして、自分が思い描くストーリーを描くための私たちは駒でしかないのだ。
全身の力が抜けて床にペタリと座る。
「あははははははは」
もう……笑うしかないじゃない。
私はただ……ただ一番女神と相性が良かったというそれだけで封印される役にされたのだ。
『ティア様……捕まえた』
今までに聞いたことない低い声に驚いて、ティア様の方を向く。
さっきまで操り人形のようにだらんとしていたオーシーが、ティア様の事をきつくきつく羽交い絞めにしている。
そして……その姿が少しずつ変化する。
頭頂からドロドロと溶けるように変化したその人物は……。
黒く大きな羽が背中から生えたミケの姿だった。
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