悪夢~国王陛下side~
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エリスが俺の執務室に現れるようになってから見ている悪夢がある。
なぜ夢だとわかるのかというと……出てくる人間がみんな故人だからだ。
『ヘリオス……お前に最高の聖女を用意したぞ』
俺が小さい頃に父上が言っていたセリフを亡くなった当時の姿の父上が俺に囁いてくる。
「エリスのどこが最高の聖女なのか教えてほしいですね」
夢だと分かっているのに俺は、父上に返事をしてしまった。
たぶん、今王城が俺の敵に満ち溢れているのを父上のせいだと思いたいからなのだろう。
『エリス? あれは、聖女などではないぞ?』
心底不思議そうに俺に言ってくる父上の幻想に意味が分からなくなる。
「いやいや、父上が俺に宛がった婚約者じゃないですか?」
『何を言っている。わしがお前の婚約者に選んだのは、レウシアという教会の女児じゃ』
「レウシア?」
教会で会ったことある子どもは、女神の遣いだと言って夢に出てくる『ルル』だけだ。
確信を持っているわけではないが、彼女しか教会で会ったことのある女児はいない。
俺が考えていると父上の幻想が急に頭を抱えてしゃがむ。
『だから……レウシアを……に閉じ込め……違う! 婚約者はエリスで……』
「父上! 大丈夫ですか?」
俺がそう言って近寄ろうとしたらサッと砂のように消えていった。
初日はここで目が覚めた。
涼しくなってきたのに、汗で寝具が濡れていた。
その次の日は、カドモスとアストンだった。
『ヘリィは、エリスをないがしろにし過ぎだ』
『いくら最低な聖女でもあれはお前の妻なのだから管理くらいしろ』
二人は、俺を責めるようにエリスへの文句を言ってくる。
『元々は、俺の婚約者だったのをお前が奪ったんだから大切にくらいしろよな』
アストンの言葉に引っかかりを覚える。
エリスがアストンの婚約者だった?
そんなはずはない。
アストンの隣にいるカドモスを見ると首を縦に動かし頷いている。
彼らは何を言っているんだ。
「俺とエリスは幼少期からの……」
『何言ってるんだよ。俺とエリスが婚約式をする直前にお前がエリスと婚約するって言いだしたんだろう?』
『そうですよ。ヘリィは婚約者が亡くなったからエリスでといっていたじゃないですか』
呆れたように二人が言うけれど俺には、身に覚えがなく、首を傾げる
そんな俺の様子に二人がため息を吐く。
どうしたものかと考えているとアストンが俺に向かって剣を抜いていた。
『あの時、ヘリィがエリスを幸せにすると約束したから俺は引き下がったんだ!』
そういって、俺に剣を振り下ろしたところで目が覚めた。
また、汗で寝具は濡れていた。
夢のはずなのに、生々しいくらいに感覚が覚えている夢に驚く。
寝れる気がしなくて部屋の中にその類のお香などあるのかと探したがなかった。
それから、エリスやその親、教皇猊下などが俺の夢に出てくるようになった。
そして、口々に言うのだ。
お前が不幸にした少女の事をなぜ忘れているのかと……。
『レウシア』という名前に聞き覚えは無かった。
そこで、秘密裏に師匠である賢者プロメ様に調べてもらった。
そうすると父上の遺品として避けてあった書類の束の中から一通の婚約証明書が出てきた。
夫となるもの ヘリオス・ガルディアン殿下
妻となるもの レウシア
これだけが描かれた書類だった。
普通の婚約証明書よりも安っぽい羊皮紙に書かれていて、装飾もなにもされていない。
でも確かに教会で発行されたという証明の印が入っていた。
プロメ様に聞いても間違いないという。
それでもやはりこの『レウシア』という人物に覚えがなかった。
それから、しばらくプロメ様に頼んで教会の子どもの出入りなどを探ってもらった。
教会のゴルゴス教皇猊下と対立している派閥と親交のあるプロメ様だから任せることができた。
数日後、プロメ様が持って来た名簿を見て俺は驚く。
そこには『レウシア』という名前に二重線が引かれて、『ルル』と書き換えられた名簿。
彼女がレウシアだった。
でも彼女のようなプラチナブロンドの少女と交流をした覚えがない。
なによりルルはまだ幼いはずだ。
それからゴルゴス教皇猊下に反対派という事で地方に飛ばされた司祭たちに会った。
彼らは口々にこう言った。
『過去稀に見ないほどの最高の聖女がレウシアで殿下の婚約者だった娘。教皇猊下がエリスを推薦し、国王陛下がレウシアからエリス様に変えた』
どの話も俺が結婚する一年ほど前に俺の婚約が変わったと証言が合っていた。
でも、にわかに信じられなかった。
だって俺は幼少期からエリスと婚約をしていて、あいつと週に二回くらいはお茶会などの交流もしていた。
なのに、それが実は違う女性だったなんてことはあるのか?
『レウシア』という女性について可能な限り聞いて回った。
ハニーブロンドの髪が綺麗な色白の女性。
神秘的なほどに聖力が多く、綺麗な黄金色をしているとのことだ。
それこそきっと俺の結婚式の時に瞬いたあの光がそうだったのだろう。
そして、探している時に彼女ととても仲が良かったという神官が、姿絵を見せてくれた。
そこに映るのは、髪色は違うけれど間違えなく夢の中の少女『ルル』だった。
大きくなれば絶世の美女になっただろうと思われる彼女の事を俺は、さらに詳しく調べ始めた。
だって……彼女が俺の本当の婚約者なのだから。
偽物だと分かってからエリスには何の感情も湧かなくなった。
俺に今必要なのは、『レウシア』だけだ。
こんなに綺麗な女性が本当は自分の妻になるはずだったのだ……。
手に入れたいと思うのは当たり前のことだろう。
そのころから見る夢が少し変わった。
遠く水の上に立つ一人の女性が俺の方を向く。
それは、紛れもなく俺が求めていた本当の婚約者だった。
「君はレウシアなのかい?」
俺がそう聞くと彼女はプラチナブロンドの髪を逆立てて俺の首を絞めた。
次の日もその次の日も一緒。
彼女は俺の存在に気が付くと必ず俺のことを殺そうとするのだった。
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