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ティア様に誤魔化されたあの日から少しだるさが出るようになった。
まだ夏だし、風邪をひくような季節ではない……。
ミケにお願いして毛布か何か持ってきてもらおうかと考えていると、夕食を持ったミケが人を連れてきた。
一緒に来た人物に見覚えがあって驚くけれど、彼と私は面識がないのでどう反応したらいいのか悩んでしまう。
「初めまして、聖女様」
恭しく礼をする彼が私を『聖女』と呼んだことに驚く。
「あの……」
「私はエピと申します。ミケの兄弟でして、今は賢者プロメ様の弟子として国王陛下に仕えております」
「は、初めまして……こんな姿で申し訳ありません」
鎖で床に縛り付けられたまま間抜けな恰好での挨拶にも優しい笑顔を向けてくれる。
「いえ、ミケ……早く解放して差し上げなよ」
「エピが話すからできなかったんだよ」
ふくれっ面をしながらミケが丁寧に私の鎖を外してくれる。
今日も豪華な食事だった。
「エリス様のご機嫌がいいのね」
「はい。国王陛下もエリス様の魅力に気づかれたみたいで、最近は閨もご一緒にされるんですよ」
「閨も? そうなのね……」
もやもやと黒い感情が胸の中に広がるけれど、無視をする。
薄いステーキをただ無心で食べる。
私は、もう国王陛下が好きではないんだ。
そして、その感情すらもきっと嘘で塗り固められたものなのだ。
この黒い感情はきっとその時の残像が騒めいているだけ……。
「そうは言うけどな……国王陛下はエリス様のことを警戒されているみたいだぞ」
「そうなのか? エリス様は毎日教皇猊下に会いに来ては関係は順調だと言っていたぞ」
「……エリス様は執務室に来ては一人でお茶をして帰って行かれるし、閨だって本当のことか怪しいぞ」
「えぇぇぇっ。これで国も安泰だと思ったのに」
「それに最近国王陛下は、どなたかを探しているらしい。ただ、カドモス様にしかそのことを話してないんだよな」
「それなら、俺知ってるぞ!」
人がご飯を食べている横でよく話せるものだと、ミケとエピを見てしまう。
ミケはいたずらっ子のような笑みを浮かべて私の方を手で示す。
「陛下がお探しなのは、聖女様だ!」
「本当ですか? でも、ここは王城……陛下が知らないことがあるなんておかしいじゃないですか!」
「私をここに連れてきたのはエリス様と教皇猊下ですから、知らなくてもおかしくないわよ」
「そういうものなんですかね?」
「国王陛下が私に会って、何を聞きたいのか分からないけれども……もしエピが気になるならこちらにお連れしてもいいわよ」
食事を終えて、ミケが差し出したハンカチで口元を拭う。
本当に連れてくるのか、ただのおべっかなのかは分からないけれども拒否する理由もない。
だって彼は、この国の国王陛下なのだ。
「でも国王陛下は、王妃エリス様を聖女だと思っていらっしゃるのだからその辺りはあなたが上手く説明して連れてきてよね」
私の要望に少し難しい顔をする。
「聖女でない証明ですか……教皇猊下と仲が良いのであれば難しそうですね」
「でしょうね。きっと彼女に何かをしてみろと言ったら私に同じことをさせて追及を免れるでしょうね」
「今までもそのように?」
「どうだったかしら……きっとそうだと思うわ。私はそれが王妃殿下のためだと思っていたから」
彼女が表で国民の為に働いてくれていれば私もここまで心が乱されることもなかったのかしら?
そう思いながら床にゆっくり寝転んでみる。
するとミケが毛布を持って来た。
「最近は夜冷えますから、どうぞこちらに包まってください」
そう言ってエピと二人で私の事を毛布でぐるぐる巻きにしてくる。
そして、その上から鎖で床の石碑に縛り付けられた。
「珍しい魔法陣ですね……」
「あら、エピは魔法陣が分かる人なの?」
「詳しくはありませんが、少し古代語が分かるんです」
「そうなのね……じゃあミケも古代語が分かるの?」
「いや、分かるには分かるのですが……エピほど学問に詳しくないもので……」
「そうなのね。何事も人には向き不向きがあるわ」
「少しこの魔法陣に触れても?」
「えぇ……もちろん大丈夫よ」
ゆっくりとエピが魔法陣の淵をなぞっていく。
ティア様の魔法陣がなぞられているはずなのに、天井の魔法陣が浮かび上がってくる。
両方が対になっているのかしら?
満足いくまで古代時や模様を触り、手元にスケッチを終えるとエピは満足そうな表情を浮かべた。
「私の身体で隠れている場所もあったでしょう?」
「そうですね……。お食事されている間に書き写せばよかったです」
「ミケが監視の時にまた来ればいいじゃない。他の人の時は危ないけれど」
「また来てもいいのですか!」
エピはこんな誘いをされると思っていなかったのだろう。
凄く嬉しそうに私に言う。
「えぇ、ミケが良ければだけど」
「見つからないようにするのは大変なので、頻繁には無理だけどお前が暇な時はいいぞ」
「そうね。国王陛下もまだまだ身辺がお忙しいでしょうし……しっかりとお仕えして支えてあげてくださいね」
「ふふふ。聖女様の方が国王陛下を案じていらっしゃるんですね」
そう言われて考えるけれど、好意はないので反応に困る。
「私はこの国の聖女ですもの。国王陛下を敬うのは当たり前だわ」
「きっと陛下は幸せでいらっしゃいますね。聖女様がこんなに気にかけてくださるんですから」
エピは笑顔なのだけど底の知れない寒さを感じる笑顔だった。
少し怖くなってミケを見るけど、彼もエピと似たような笑顔を浮かべている。
「では、聖女様。エピが帰りに人と遭遇してはいけませんのでこれにて失礼します」
「えぇ……エピにも会えて嬉しかったわ」
「僕も聖女様にお会いできて嬉しいです。今のプラチナブロンドの髪をハニーブロンドとは違う魅力があってとてもお綺麗ですよ」
「ありがとう」
二人が出て行った扉を見つめる。
――エピはなんで私の髪色が元々ハニーブロンドだったことを知っているんだろう?
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