僕らの女神~ミケside~
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僕は、産まれた時からある記憶を持っていた。
それは、創世記において美しい女神が創る世界を管理していた時の記憶。
気弱で他の神々に馬鹿にされていた僕をあの方は、一緒に世界を作る細胞として選んでくださった。
あの方は、僕に対して愛を囁いていた……なのに、結局は人間の男と恋に落ちて地上に降りて行った。
僕だけの女神だった。
地上の生き物たちに愛を注ぐのは、神の慈悲だからと我慢ができた。
天使たちに愛を囁くのだって、あいつらに仕事をさせるのに楽だからだと許容できた。
だって、僕がいつも不安になったらあの方は言ってくれた。
『私の特別はアウラムだけよ。だから安心して、あなただけを愛しているわ』
僕は、あの有象無象と違ってあの方の『特別』だったんだ。
僕だけがが特別愛されていたんだ。
なのに……なのに、あの方は僕たちの引き留める言葉を聞かずに、人間の男になびいた。
それは、許されない裏切りだった。
だってそうだろう?
俺だけが特別だって言っていたのに……ただ正義感が強いだけの人間ごときに現を抜かしたんだ。
でもすぐに制裁を下すには、俺に力が足りなかった。
だから、あの方の目を覚ますために冥界へ降りて力を蓄えた。
力を蓄えてからは、あちこちであの方の創った世界を歪めるためのいくつかの魔法陣を仕掛けた。
戻った時には、あの方とあの男の子孫が王族になっていて、一思いにこの世界を壊してやろうと思った。
だけど、俺だってこの国の大部分を支えてきたんだ。
あの男の子孫だけが不幸になればそれでいい。
そう思って、歪みを起こして世界をリセットできるようにだけしたんだ。
着々と準備が進み。
ついに作戦を決行するときになった。
南の砂漠地帯では、砂嵐が起き、北の豪雪地帯では大雪からの雪崩が起きる。
西の湖の水は腐り、東では日照りが続き干ばつに国民は喘いだ。
「はははは……。どうだ。俺にだってこれくらいの事はできるんだ」
あの方の元に居た時のような気弱さはもう俺にはない。
俺はあの方すら凌駕したのだと見せつけた。
ようやくあの方に似合う鳥かごに捕らえる鵜ことに成功した時は、歓喜に全身が打ち震えた。
銀色の格子が綺麗なその鳥かごは、人間ごときに打ち破ることはできない。
――そのはずだった。
僕の作戦は完璧だったはずなのに、あの方は自身の命すら自身の神力に変えて鳥かごを破った。
僕の起こした災害を全て打ち破ると……肉体が持たなくなり魂だけが神界に帰ってしまった。
僕は慌ててその魂を追いかけた。
でも、一度冥界に落ちた僕は神界に入れなくなってしまっていた。
僕はこのいら立ちを世界にぶつけようとした。
けれど、それすらも叶わなくなっていた。
僕は各地で災害を起こすために色々な布石を打った時に、神力を使い過ぎていた。
さらに、どう言いくるめられたのか分からないが各地には天使が配置されていた。
僕の魔法陣もあの方の神力で、上書きされていて使えなくなっていた。
本当に、最後の力をすべて使ったのだろう。
それから、あの方と世界を作っていた時に居た僕の居場所に籠った。
なぜここにだけ僕が入れたのかは、分からない。
でも、そこに小さく丸まっていると安心した。
ゆっくりゆっくり……世界の底から僕の神力を染み込ませていった。
数百年に一度、僕の溜まった神力が暴走をして世界で何かが起きるのにそれがいつの間にか収まっているという不思議なことが起きていた。
何度目かの時に暴走の瞬間に世界に顔を出す。
すると一人の少女が俺の魔法陣の前で祈りを捧げて暴走を治めているのを目撃した。
あの方の神力を聖力という形で受け継いだ生まれ変わりがいることをその時知った。
俺は歓喜した。
いつかきっとあの方に近い生まれ変わりが現れれば、きっとあの方をまた地上に引きずり下ろすことができるのではないかと!
それからは、急ピッチで用意を進めていった。
かつてあの方が消滅してしまった鳥かご地下深くにある魔法陣を見つけた。
そこを人が入れるような空間に、あの男の子孫に枕もとで囁き地下室を作らせた。
各地にいる天使たちに、『聖女』と人間たちが呼んでいるあの方の生まれ変わりが稀に現れることを教えた。
良く聞けば、天使たちもあの方とは連絡が取れないらしいからな……。
会いたくて仕方ないのだろう、俺の作戦に協力してくれることになった。
それから好機を窺い続けていたら、ようやく産まれた。
あの方のちからをほぼすべて受け継いだ少女が……。
彼女の小さな身体では、増え続ける聖力を扱いきれずある日その力が暴走した。
それは、俺がいる場所でもすぐに気づけるだけの大きな力の暴走だった。
すぐに一番強欲そうな教会の司祭に近づき、彼女を教会へ招き入れた。
『あの子どもを連れてくれば、お前が教皇猊下になれるだろう。あの子どもこそ聖女なのだから』
教会に来るとすぐに少女の名前を奪い、自我を弱くしていった。
私利私欲の強い人間どもに近づいて、甘言を囁いていく。
ある侯爵令嬢は、誰よりも偉くなることを望んだ。
『お前が聖女だと偽り王妃になれば国王すらもひれ伏す存在になれる』
あの男の子孫は国が亡くなることを恐れていた。
『聖女がお前の息子の為だけに祈れば、世界は安定してお前の血筋は永遠にこの国を支配できる』
俺の甘言にのって人間どもは分かりやすく動いてくれた。
ただ、その中で上手くいかない存在がいた。
それが、この国の王太子だった今の国王だ。
奴には、全く傲慢なところがなかった。
しかも、教皇猊下になったあの司祭が、生まれ変わりの少女に王太子を近づけた。
そのせいであの方の加護をより受けることになった王太子に精神的な手出しができなくなった。
だが、計画は思ったよりもスムーズに進んでいった。
名前を奪われた少女は思いのほか扱いやすかった。
そこで、計画を変更した。
彼女が絶望してしまうくらいこの世界を繰り返す。
それは、あの方の元々の神力の性質を利用すれば簡単だった。
あの方の神力は『慈悲』。
それは、万物に注がれて初めて力を発揮するもの。
だから、それを一人に集中させれば力は暴走し、歪みが起きて正しい世界を迎えるまで続く呪いに変わる。
いつでもそばで彼女を見ていられるように、俺は魂を二つに分けた。
力が弱まれば人間界に人として肉体を維持しながらいることはできる。
彼女が絶望していく様を近くで見届ける聖騎士の『ミケ』と、国王を傍で監視するための賢者の弟子『エピ』はこうして生まれた。
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