いるはずのない影~国王陛下side~
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エピを送り出して数日。
カドモスがバタバタと慌てていた。
何があったのか聞いてもカドモスは何も言わないので、動向を注視していた。
それからさらに数日して、アストンとカドモスが俺のところに来た。
「国王陛下、エピについてお伝えしたいことがあります」
「カドモスからエピという人物と連絡が取れなくなったと聞かされて、北部へ俺の部隊が向かった。雪崩に巻き込まれていたらしく雪の中にいるところを救助した」
「エピは、無事なのか?」
俺が驚いて聞くとアストンが大きく頷く。
「目が覚めるまでには時間がかかったが、生きている。雪だからよかったのか……よくわからないが大きなけがもしていなかったぞ」
「そうなのか……よかった」
「宿屋の女将に頼んであと数日は泊まれるようにお願いしている」
「そうか……わかった。アストンは他に報告はあるか?」
「いや、ないな。そういえばさっき俺の部下から急に北部が昔みたいに夏なのに寒くなったって伝書鳩の報せがあった。もし、調査が必要なら部下を数人残しているけどどうする?」
アスラムの部隊の人間はみんな優秀だけれど……信じていいのだろうか?
カドモスは、アストンを王宮騎士団の第一騎士団団長から降ろすことはしなかった。
それは、アストンが信用できるからなのか?
それとも、他の疑わしい人間たちと同じように近くに置いておきたいからそのままにしているのか分からない。
こういう時、ルルならなんて俺に声を掛けてくれるだろう?
きっと疑わしいなら一旦様子を見るように言うだろうな。
「いや。雪崩が起きたばかりなら危険だから調査は時期を見て行う。その時にまたアストンの部隊にお願いするかもしれないが……お前の部隊の本来の役割は、この王城と王族の警備だからな。それを忘れるなよ」
「わかってるよ!」
そう言って、アストンは用が済んだと言わんばかりに部屋を出ていく。
そして、部屋に残ったのは俺とカドモス。
なんで、俺に何も話さずにアスラムたちを行かせたのか……。
「弁明ならあるからな」
俺が口を開くより先にカドモスが発言する。
「まずはその弁明を聞こうか」
カドモスの話によると、エピが調査に入ると言った次の日から定期的に来ていた伝書鳩の報せが来なくなった。
不審に思いカドモスから何度か伝書鳩を飛ばしたがそれらは、手紙を付けたまま帰ってきた。
アスラムを信用していいか悩んでいたカドモスは、あえて奴にエピの救出を依頼する。
とりあえず、王妃の妨害もなくすんなりアストンたちが旅だったのを確認。
アストンの帰還前にエピから伝書鳩で報せが届いていたらしい。
「で、そこには何と書かれていたんだ」
「エリス王妃の話をするときだけ様子がおかしくなるのが気になる」
「あいつがエリスに対してエリスを崇拝しているかのような様子なのは昔からだろう?」
正直俺としては、アストンとエリスが結婚すればよかったとすら思ってる。
「それはそうなんだが、話している時少し目の焦点が合っていなかったりしたらしい」
「それは……確かに様子がおかしいな。あいつもしかして」
「変な薬の類はしてないぞ」
「だよな……」
「アストンの弟が手を出してどうなるかを見てきてるんだ」
数年前の事だった。
清廉潔白で正義感の強いアストンの弟が、入手経路不明の依存性の高い薬物に侵された。
結局、正気を失って暴れた弟を……あいつは自分の手で始末することになった。
流石にあの時は、普段能天気なアストンもふさぎ込んで部屋から出てこなかった。
そういえばあの時に教皇が来てエリスと教皇だけが、アストンの部屋に入る日が設けられていたな。
それからひと月くらいして、アストンが少しずつ部屋から出てきて、騎士として練習に打ち込めるまで回復した。
俺たちの結婚に際して人事をしたときに、アストンにはまだ早いと思っていたけれど周囲からの推薦であいつを第一騎士団の団長にした。
その時に一番多かったのが、人の痛みを良く分かっているから、アストンにという声だった。
「俺たちも実際に見てみないと分からないな。しばらく様子を見よう」
俺がカドモスにそういうと賛成らしくカドモスも頷く。
それからいつも通りに書類仕事や謁見を終えて、王城の中庭に行くと珍しい人物がいた。
「ミケだったな。お前がなぜ王城にいるんだ?」
夕方になろうとしている頃、王城の中庭に教会で会った聖騎士がひとり立っていたのだ。
俺が声を掛けると振り向いて、人の良さそうな笑顔を浮かべて近寄ってくる。
「これは、国王陛下。私の名前を憶えていただいていたなんてありがたき幸せです」
そういって最上位の騎士の礼を俺にする。
「貴殿には、世話になったからな。それで、なぜ教会にいる聖騎士が王城にいるんだ?」
なんとなく距離を取りたくなり仰々しく対応をする。
「はい。教皇猊下より聖女エリス様へのお使いを頼まれまして……帰りにふと目に入った中庭がとても綺麗だったので見ておりました。もしかして、立ち入り禁止区域でしたか?」
教皇からエリスへのお使いか。
それなら、納得はできるか。
「いや、ここは王城で勤めている者なら入ることができる区画だ。貴殿が使いで来たのなら立ち入っていても何ら不思議はない」
「そうでしたか。安心いたしました」
「俺は子どもの頃から見ているから見慣れてしまったんだが……貴殿はこの中庭の何が綺麗だと思ったんだ?」
俺がそう聞くとすっと手を挙げて中庭の奥を指さす聖騎士。
――そこには、大きな銀色の鳥かごのような東屋。
俺はあそこに近寄ると寒気がするから近寄ったことがない。
なにより……本当に人が一人通り抜けられないくらい細かい格子で趣味が良いと思ったことがない。
「あの東屋は芸術品のようで綺麗で惹かれました」
「そうなんだな……なぜか錆びることのない不思議な東屋なんだ」
「そうなのですね。きっとティア様の加護を授かっているのでしょう」
「そうだといいな」
人を閉じ込めたことがありそうなあの東屋のどこがいいのか……。
俺が無言で東屋を見ていると甲冑がこすれる音がして聖騎士の方を見る。
「それでは、私はお使いも終わりましたので教会へ帰還いたします」
「そうか。引き留めて悪かった」
「とんでもありません」
そう言って聖騎士は、教会へ帰っていった。
それにしても今まで、そんな人物が来ていたなど聞いていない。
俺もエリスの周りに監視もつけていないから分かるわけがないのだけれど、令嬢と会ったという話だけは俺の耳に入ってきていたな。
かといって、急にこちらから人員を補填しても怪しまれるだろうな。
自室に戻る前にもう一度ミケが指さした東屋に目をやる。
床が光った気がして近寄ろうと中庭に足を踏み入れる。
「ヘリオス様! ご夕食を一緒に取りませんか? 私の事をいつも放っておかれて私、寂しいですわ」
いきなり後ろから腕を掴まれたかと思うと、さっきまでいなかったエリスが俺の後ろに立っていた。
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