敵か味方か……~エピside~
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国王陛下から北の万年氷の調査を依頼されて、三日かけて、万年氷に最も近い町へと辿り着いた。。
適当な宿に部屋を取ると、まずは周囲に聞き込みをする。
「最近変わったこと?」
「えぇ……数年前にもここに来たことがあるんですがその時より涼しい気がしたんです」
「たしかにそうね。ここ数年で少しずつ涼しくなっているのよね……」
宿のおかみさんは、不思議そうに呟くけれど特に気にしている様子はなかった。
「そんなに深刻ではなかったのか?」 と思いながら食堂でも聞き込みをする。
そうするとびっくりするほど色々な話が聞けた。
毎年ここに泊まっている商人は、夏になっても雪が溶けなくなった。
王都から出稼ぎで帰ってきた男性は、涼しくなった気はするけど、暑くなった気もすると矛盾したことを言っていた。
そして、万年氷があると聞いている雪山の方から来たという旅人は、雪山があまり寒くなくて驚いたなと……。
万年氷がもし本当に溶けているのなら、雪山が寒くないのも納得だ。
それでも、王都の冬よりも寒い。
なぜか万年氷がある雪山だけ夏でも雪が降っているのだ。
厚着をして、万年氷のある洞窟に向かって歩く。
宿から数時間歩けば洞窟に着くはずだったが……。
「思ったよりも雪が解けているんだな」
雪山の雪が解けていて、その上に新しい雪が積もる。
そしてまた積もった雪が解けて新しい雪が積もる。
だからか、つるつると滑って足を取られてしまい困る。
しばらく歩いているとまもなく洞窟に着くというところで、急に目の前が真っ白になった。
少しずつ細かくなっていた雪が、風に煽られて舞っていると思っていた。
――ゴゴゴゴゴゴ。
進んでいた方向から地鳴りのような音が響き、顔を上げた瞬間には雪崩が迫っていた。
避ける間もなく俺の身体は白銀の暴力に巻き込まれ……、俺の意識は深い闇へと沈んだ。
「おいっ! おいっ!目を開けろ!」
身体を揺さぶられる衝撃で、目が覚める。
目の前には、アストン様がいた。
「ようやく目が覚めたか。お前二日も雪の中に居たのに良く生きていたな」
「えっ! 二日ですか?」
「あぁ、カドモスがお前と連絡が取れなくなったから俺に探しに行くように言ったんだ」
「カドモス様が……」
カドモス様は、厳しい人だけど自分が信じられると思った人には優しい人みたいだ。
僕は、良く怒られてばかりだけれど。
「目が覚めたならよかった。とりあえず、カドモスとヘリオスには、部下に報告に行かせておく。何か食えるなら簡単な物を女将に頼むけどどうする?」
「そうですね……スープとかいただけるとありがたいです」
「わかった」
そう言ってアストン様が部屋を出ていくのを見届けて口笛を吹く。
カドモス様が連絡用に貸してくれた伝書鳩を呼ぶ。
簡単な手紙を付けて放すと伝書鳩が飛んでいく。
アストン様の部下よりも早く着くはずだ。
ちょうど伝書鳩を飛ばし終えた時に、女将さんがスープを持って入ってくる。
「もう! 遭難するなんて危ないわね」
「まさか雪崩に巻き込まれると思っていなかったので……」
「雪崩だって? この時期には起きることなかったのだけれど変ね」
「そうなんですか?」
「冬になればどうしても季節がら起こることがあるけれど、夏に起きたなんて聞いたことないわ」
女将さんは、街の人たちにも聞いてくれると言ってくれたのでお願いすることにした。
「俺も夏に寒い場所で動くための訓練でこの周辺に来たが……雪崩なんて起きなかったな」
「騎士団ではそういう訓練があるんですね」
「まぁな……いつ何時でも王都と王族を守れるようにするために用意できることはしておかないとな」
「たしかにそれはそうですね」
女将さんが持って来たスープを飲みながらアストン様と話す。
僕が普通に話していると急にアストン様が頭を下げる。
「その……この前はお前を不審者だと思って酷い扱いをして申し訳なかった」
そう言って謝ってきたのだ。
僕は、慌ててアストン様に頭を上げてもらう。
「あの時は、僕もボロボロだったので不審者だと思われても仕方ないです。それにアストン様は国王陛下のところへ連れていって下さいました」
「それもエリスに言われたからだ」
「アストン様は、エリス王妃殿下と仲がよろしいのですか?」
「まぁ子どもの頃からの仲だからな。ヘリオスとカドモスがエリスに対して厳しすぎるから、俺だけは優しくしてやってるんだ」
「そうなんですね」
「あいつらは優秀だからな……努力しないといけない人間の気持ちが分からないんだよ。エリスは聖女と言われてから教会に通ってすごく努力していたんだ」
「そうなんですか……確かにあんな状態の僕を国王陛下のところに行かせてくれたんですから、優しい人なんでしょうね」
「分かってくれるか! そうなんだよ!エリスは優しくて本当に聖女みたいなやつなんだ。エリスが居るところは華やかになって人が集まってくるんだよ」
王妃殿下の話をするアストン様の目は……少し生気が感じられなかった。
でも、熱がこもっていて心から思っているのが伝わってくる。
そのアンバランスな感じが少し怖かった。
それからも、アストン様のエリス様語りが止まらなかった。
「アストン様……すみません。眠くなってきてしまって」
「そうだな。お前は倒れていたんだからゆっくり休むといい。外に居るから何かあれば言え」
そう言って部屋を出ていかれた。
僕は目を閉じて、布団にもぐる。
そして意識を自分に向けるととても懐かしい気配が、僕の周りを包み込んでいることに気が付く。
凄く愛おしい人の気がするのに……それがだれか思い出すより先に意識を手放してしまった。
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