不快感~国王陛下side~
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ミケに助けられ、カドモスに怒られた後に目当ての図書館に着いた。
中に入ると高い天井にまで届くくらいの本棚が壁の両側に並んでいる。
真っ白な壁のお陰か、圧迫感を全く感じない。
そして、真ん中にはいくつもの机。
王都の教会にいる司祭や聖騎士たちが座って何かを読んでいた。
「陛下のお好きな席にお座りください」
「いや、その前に読みたい本があるか確認してみる」
そう言って、宗教史が記載された本が多くある本棚のあたりにやってくる。
『聖女』に関連していそうな本を数冊手に取って、空いている机を探そうとした時だった。
一つだけ綺麗なステンドグラスになっている窓が目に入った。
その窓には、女神ティア様と……ティア様に寄り添う男性が描かれていた。
俺は、そのステンドグラスの前で立ち止まる。
「陛下は、見る目がおありですね。このステンドグラスは、女神ティア様とその恋人のアウラム様が寄り添っているところを描いた物なんです」
眺めている俺の横に来て、ミケがそう教えてくれる。
そのミケの説明に俺は、首を傾げる。
女神ティア様に恋人が居たというのも初めて聞いたし、アウラムなんていう登場人物は創世史には登場していない。
いつの間にか近くに来ていたカドモスも疑問に思ったらしく、俺と同じように首を傾げている。
「お二人は、影の神アウラム様をご存じないのですか?」
心底不思議そうに聞いてくるが、本当に知らないのだから反応に困る。
ここは、素直になるべきかと口を開こうとすると、カドモスに先を越されてしまった。
「そうですね。私が子どもの頃に習った創世史にアウラム様と言われる神様は、いらっしゃいませんでした」
カドモスも素直に伝えることを選んだのかそう言うと納得したような顔で、彼は俺たちを見る。
「陛下達がお子さまの頃なら納得です。最近、アウラム様の痕跡が発見されたんですよ」
「そうなんですね。何が発見されたんですか」
「ティア様とお揃いのリングだと聞きました」
「……それは二つ一緒にどこかで出土したということですか?」
「そう聞いています。でも、俺みたいな末端の聖騎士には詳しい情報が降りてこなくて……」
「いや、それが本当ならすごい発見だ。女神に愛を誓う我が国の婚約が今後はこの二柱の神に愛を誓うことになるのだから」
俺は、そう言って目の前の寄り添いあう二柱の神々を見つめる。
それから、空いている席を見つけてカドモスと一緒に創世史や聖女の歴史について書かれている本を読み漁った。
しかし、そんな時間も長くは続かなかった。
「ヘリオス様! まだこちらにいらしたんですか?」
エリスが用事をすませたようで、図書館にやってきた。
「わぁ……。懐かしいですわね。覚えていらっしゃいますか? たまに私たち図書館でお話ししましたよね」
懐かしそうに話すエリスに驚く。
そんな記憶は俺に全くない……。
誰かと間違えているのかとも思ったけれど、しっかりと俺を見据えて言っている。
「そうだったか……。あまり覚えていないな」
「えぇ! ヘリオス様、酷いですわ。幼い頃の私にとってかけがえのない時間でしたのに……」
俺は困惑しながらカドモスを見るけれど、カドモスも横に首を振っている。
ということは、エリスは誰との記憶を話しているんだ?
俺とカドモスがどうしたものかとエリスを見ていると彼女の目がミケに向く。
すると一瞬怯えたような表情をエリスがした。
すぐにその表情は、笑顔に戻ったが、目を大きく見開いていて驚いていた。
令嬢の頃からこの国で一番地位が高い家のご令嬢だったエリスが、怖がるようなものはなかった。
「エリス、紹介する。案内役をしてくれた聖騎士のミケだ」
俺がそう紹介すると、エリスは綺麗な礼をする。
「陛下のご紹介に預かりました。ミケです。私のような一介の聖騎士に礼を尽くしてくださるなんて……。やはりエリス様は『とても素敵な聖女様』ですね」
「そんな風に言っていただけて光栄ですわ」
ミケの言葉にいつもの傲慢な態度で返すエリス。
教会の中だ自分の権威を高めたくて、聖騎士に礼をしたのだろうと結論付ける。
「ヘリオス様! お父様が王城でお待ち見たいですの! 早く帰りましょう」
そう言って、エリスは俺の手を引っ張る。
「陛下……あとは片づけておきますので、どうぞ行かれてください」
ミケの言葉に頷いて、エリスに急かされながら俺とカドモスは、中庭を抜けて王城へと帰還した。
――中庭にあった穴が、跡形もなく消えていることに気が付かないまま。
「おぉ!陛下。待ちくたびれてしまいエリスの侍女に呼びに行かせたのですぞ」
俺が執務室に入るとエリスの父であるポシリード公爵が、我が物顔でソファーに座っていた。
「お待たせして申し訳ない。それで予定にはなかったと思うのだが、何があったんだ?」
「はははっ!陛下、国とは生き物です。予定なんてものは変わるものです」
そう言いながら膨れた腹をさするその姿に、不快感を覚える。
「なにやら北の万年氷が溶けているらしいのですよ」
「万年氷が?」
「えぇ……私も半信半疑だったのですが、北部の方に出かけていた商人や旅人に聞くと本当らしいのです……。ここは先日、西の問題を解決されたエピでしたか? あの若造に行かせてみてはどうでしょう?」
本人はアドバイスのつもりなのだろうが、全くそんな気配はない。
どうしたものか考えるも万年氷が溶ければ、北部は水害に悩むことになる。
溶けているのが本当ならば一刻を争う事態だ。
「わかった。エピに調査を命令することにしよう」
「せっかくですし、殿下も一緒に行かれてはいかがですか?」
にやりと笑いながらそういう父親の横には、いつの間にか腰かけていたエリスが居る。
「いや、今回俺はここに残る」
「そうですか……たしかにそれがよろしいですな。では、このことをお伝えしたかっただけですので」
「お父様、私新しいドレスが欲しいんですの!」
満足げに立ち上がって執務室を出ていく公爵とエリスを見送る。
執務室には、何とも言えない不快感だけが残っていた。
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