精霊たちのお願い
いつも読んでいただきありがとうございます。
21時に間に合わず申し訳ありませんでした。
楽しんでいただけたら、嬉しいです。
西の湖が綺麗になった日に、領民の人たちが来てくれて夜も見張ってくれていた。
精霊たちも交代で警戒してくれて、怪しい人物が来ないか様子を見てくれた。
一安心したのか、陛下と来ていた青年は帰っていった。
湖の精霊たちに、また何かあれば声をかけるねぇって言われた。
そのまま、私の生活はまた石碑に繋がれる日々に戻った。
ミケは、ほぼ毎晩私の見張りに就いていて、話をしてくれた。
そして、聖力が国中に満ちたことでの変化があった。
『ねぇねぇ。レウシア』
そう、私の周りに実は精霊がいたのだ。
『陛下……。敵だらけなの』
『かわいそうなんだよ』
彼らは、この城の城壁の石に住んでいる岩の精霊らしい。
湖の件が終わってから、毎晩私のところに来ては、陛下が可哀想というのを伝えてくる。
でも、私はもう陛下の為に祈らないって決めたのだ。
「私に言われても困るわ」
『でも、レウシア……』
「私が願うのは、この国の幸せな未来とここに住む国民の幸せだけよ」
『じゃあ、レウシアはもう陛下が嫌いなの?』
「嫌いなんてことないわよ。何とも思わないわ。興味もないの」
『なんで、なんで! レウシアがこんなにたくさんここからやり直してるのは、陛下の為じゃないの?』
「違うわよ。私は繰り返したくて、繰り返しているわけじゃないの。なんでか分からずにずっと繰り返してるのよ」
そう叫ぶとミケが、心配して入ってくる。
「聖女様、どうしたんですか?」
「なんでもないの。ちょっと疲れたから寝るわ」
そう言って、目を閉じるとある日の光景が目に入る。
「この町のこの家で、強い聖力の反応があった。その娘か?」
当時、私の産まれた町の教会で司祭をしていた今のゴルゴス教皇猊下が、私の家にやってきた。
我が家は裕福ではないけれど、幸せな生活をしていると……あの日まで思っていた。
畑を耕して少しだけでた余分を売って暮らす日々。
優しくて料理の上手な母。
でも、私はお金が人を変えることを知ってしまった。
私が聖力に目覚めた時。
私の身体から溢れた聖力が一気に放出されて、黄金の柱が現れた。
その翌日、教会から来たゴルゴス教皇猊下は、両親にこう言った。
「この娘を引き渡すなら、これだけの金貨と馬に家畜もやろう。だが、この娘の事はもう忘れることが条件だ」
そう言って、荷馬車いっぱいの金貨と馬に家畜を父と母に見せる。
その瞬間、私の事をゴルゴス教皇猊下の方に突き飛ばし、二人はお金に飛びついた。
私に声を掛けることもなく……。
目の前の金で何を買うかで盛り上がっていた。
そのまま、引っ張られて王都の教会本部へ連れてこられた。
私は、そこで教会の奥にある部屋を宛がわれて、私の教育はゴルゴス教皇猊下がしていた。
だから、彼が教えてくれたことだけが私の正解だった。
他の人たちは、私の事を大切に扱ってくれた。
でも、私に近づくとゴルゴス教皇猊下や彼の部下がやってきて、他の人たちを追い払ってしまっていた。
私が教会に来た翌日に、初めて当時王子だったヘリオス様に会った。
教会の隅で泣いていたら、ヘリオス様が話しかけてくれて、私を慰めてくれて一緒に過ごしてくれた。
そのあとも、ゴルゴス教皇猊下が居ない時に一緒に遊んでくれていた。
でも、大きくなるにつれて国王陛下とヘリオス様がいらっしゃる時に、私は図書館に閉じ込められるようになった。
でも、それは私にとってありがたかった。
自分が知らないことを誰かに教えらるのではない体験は、最高の時間だった。
自分が知りたいことを誰にも邪魔されずに、本を読み耽ることができた。
それでもきっと私に知られては困ることは、あの図書室から排除されていたのだろう。
そうじゃなければ、おかしいのだ。
『精霊』のことも、『聖力』との関係も何も知らないのだから……。
精霊たちは、私に話が通じるのが分かって嬉しいらしい。
城壁の岩の精霊は、本当にしつこいくらい話しかけてくる。
でも、夜の方が話しかけやすいって言ってた。
皆が寝静まっているのとミケが私の味方だって分かるらしい。
だから、安心して声を掛けられるんだと言っていた。
『レウシア! レウシア!! 起きて!』
「私は陛下の為に祈らないわよ」
いつものように来た岩の精霊に言うと、慌てた様子の精霊たちが騒ぎ立てる。
『違うの! 危ないのが来てる!』
「危ないの?」
『うん。陛下の部屋が危険なの!』
「どういう事……」
私は慌てて陛下の部屋に聖力を巡らせる。
部屋には何も奇妙な感じがしなくて、首を傾げる。
しばらくして……、陛下の部屋に現れたのは、王妃エリス様だった。
特に彼女におかしい様子もないし、夫婦なのだから寝室が同じでも問題はない。
特に何も無さそうだから、聖力を流すのをやめようとした時だった。
急にバチッと、聖力に何かが触れて弾けるような衝撃を感じた。
それは、王妃エリスの後ろに控えていた侍女の持っている小さな瓶。
集中力を研ぎ澄ませて二人の会話を聞く。
「エリス様……本当にやるのですか?」
「仕方ないでしょう。西の事が失敗した。今すぐ死なれては困るけれど元気に各地に動かれては困るわ」
「それは……そうですが」
「私の愛するあの方がこの国の王になるには、今の王には退場してもらわないとならないの。それはできるだけ大きな失敗である方があの方を国民も受け入れやすいでしょう」
そう言って、その侍女から瓶を奪い取ると、寝ている陛下のベッドサイドに置いてある水差しに流しいれた。
彼女たちが出て行くのを見計らって、私は水差しに聖力を流す。
湖の時と違い単一の毒だったから簡単に解毒することができてほっと一安心した。
それにしても、岩の精霊たちが言っていたこと……。
陛下の敵が多いってどういうことなのかしらと考える。
きっと、国王陛下が亡くなることが国民の幸せにつながらないという事だけが分かった夜だった。
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