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死ねない怪物の私は、もう祈らない~私の心はもう死にました。なのにどうしてあなたは私を探しているのですか?~  作者: 紫乃てふ


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精霊の話

 今まで聖力を多く流さないと届かなかったはずなのに、ほんの少し流すだけで湖の中に溶け込んでいく感覚がした。

 これが、精霊の力を借りるという事なのだろう……。

『レウシアの聖力は温かい』

『ティアさまとも違うねぇ』

 そんな声が頭に流れるけど、嫌な気持ちにはならない。

 しばらくして、『もう大丈夫』とたくさんの声が言っているのを聞き、聖力を流すのをやめた。

「あなたたちは、ずっと私に話しかけていたのに……ごめんなさい」

『いいよ! ティア様が言ってたの。レウシアは、間違ったことしか教えてもらってないって』

 精霊の言葉に驚く。

 彼らは、創世の女神ティア様と話ができるの?

 それに、『間違ったことしか教えてもらってない』って……。

 つまり私が教会に引き取られてから教わったことは、何一つ本当の事は教えられていなかったという事なの?「あなたたちは、本当の事を知ってるの?」

『僕たちも知らない。僕たちは、レウシアみたいな子がくれる聖力でようやく繋がれるから!』

 それは、そうよね……。

『でも、人間の王様は知ってるって言ってた』

『そうそう! 人間の王様は知ってる……だけど、今の王様は知らないの』

 今の王様は、知らない?

 国王陛下は聞かされていない話があるってこと?

 あんまり考えたことないけど、たしかに変なことはあるわよね。

 なぜ王妃エリス様は、聖女を騙れているのか。

 私は、ずっと教皇猊下と手を組んでいるからできているんだと思っていた。

 二人が王家までも偽っているのだと……。

 でも、本当にそうなのかしら?

 二人が王家までも欺いているのだと……。

 よく考えたら、この部屋は王城の地下深くにある。

 なぜこんな部屋があるのか……。

 考えたこともなかった。

 だって、教会で聖女は『国王陛下』の為に祈るものと教えてもらっていた。

 それがもしかして、『間違い』ってことだよね。

「精霊ってあなたたちしかいないの?」

『違うよ! 国中にいるの!』

「そうなのね。みんな私に協力してくれるかな?」

『みんなレウシアと話すの楽しみにしてたから、きっと話したいと思ってるよ』

「そう……私、一人じゃなかったのね」

 今まで、独りぼっちだと思っていたのに……。

 そうか、私は独りぼっちじゃなかったんだ。

 そう思うと、涙が出てくる。

 ずっとずっと、この地下の部屋に縛り付けられていた。

 そして、最後は必ず国王陛下の死で終わる。

 そんなことを何回も何十回も……何百回も繰り返してた。

 でも、私が気づいてなかっただけで私の周りには精霊たちがいてくれたんだ。

『レウシア! 見てみて~』

 湖の精霊の声に、ハッとする。

 私は、湖の浄化をしていたんだ。

 少しだけ状態を見てみようと聖力を流した。

 そうすると、今まで繰り返す中で話に聞いていた湖とは、全く違う風景が広がっていた。

 透き通った青色の水。

 そのほとりには色とりどりの花が咲き誇っている。

 そして、ちょうど湖の真上に来ている陽の光が優しく湖を照らしていた。

「きれい……」

『レウシアのお陰! 聖力がたくさんだからキラキラになったよ』

 嬉しそうな湖の精霊の声が聞こえる。

 私、誰かの役に立てたんだ。

 湖のほとりには、まだ国王陛下と一緒に来た青年が居た。

 彼は、湖の変化に驚きながら近づいてくると、水を掬って瓶に入れてまた驚いていた。

 でも、すごく嬉しそうで……。

 乗ってきた馬を連れてきて、自分も湖の水を飲んで、馬にも飲ませている。

 そんな彼のそばに、ここの領民の人たちが来る。

 聖力をもう少し多く流す……。

「おぉ、湖が生き返ったようだ」

「本当だな。爺さんが言ってたみたいにキラキラしてるよ」

 領民らしき彼らは、水を汲むための桶をたくさん持っていた。

 そこに、青年が近づいて行った。

「みなさんは、この領地にお住いの方々ですか?」

「ん? 見ない顔だね……」

「あっ……僕は、国王陛下から西の湖の調査をするために派遣された者です」

「おぉ! 陛下が! あのぼんくら領主がようやく動いたのか?」

「ぼんくらって、そんなこと言ったのがバレたら炭鉱に送られるぞ」

「い、いえ……。陛下が内密にお調べになっての事です」

「そうかそうか。で、湖はどうなんだ?」

 リーダー格なのか体格のいい男性が、青年に声をかける。

「先ほど、元気な状態に戻りました」

「そうか……よかった。最近、水を飲むと子どもや老人が体調を崩すことがあって、心配してたんだ」

「きっと、もうそんなことはありません」

「たしかに、こんなに綺麗な湖。俺らが子どもの頃にもみたことないよ」


  領地の人たちが喜ぶ声を聞いて、精霊たちもみんな嬉しそうに騒いでいるのが伝わってくる。

 私が教えられた『間違い』なのかは、まだ分からないけれど……。

 死ぬことができなくて、『怪物』と罵られた私が、人を笑顔にすることができてよかったと嬉しくなる。

 今までは、国王陛下の幸せだけを願い続けて、彼を不幸にばかりしてきたから……不安だった。

 こんな私が、彼の為に祈ることをやめて、国の為に祈っても何もできないんじゃないかって……。

 でも、違った。

 私は、この地下に来て初めて、人を笑顔にすることができたのだ。


最後までお読みいただきありがとうございます!

本作は「ネトコン14」エントリー予定です。

少しでも「気になる」と思っていただけたら、ページ下の評価やブクマ登録をしていただけると、執筆の励みになります!

明日も更新しますので、またお会いしましょう!

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