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 数日後、ヨハンから古びた羊皮紙の写しが届けられた。

 遠い昔の年代記、あるいは誰かの手記をまとめたような不確かなもの。


 ――風に囁く声を聞いた王子がいたこと。

 ――白き花と共に現れ、彼を孤独へと誘った女の姿。

 ――やがて王子は正気を失い、ある日忽然と姿を消したこと。


 記述は断片的で、真実かどうかもわからない。

 けれど、いずれも「風」「花」「囁き」という要素で繋がっていた。


「……やっぱり、風に関わる存在か」

 アウレリウスは資料を閉じる。

「ただ、本来シルフは穏やかだと伝えられている。悪意よりは、むしろ軽やかさや自由を象徴するものだ。……だから少し、違う気もするんだよな」


 エドワードはしばらく黙して答えなかったが、やがて彼は、強く言い切る。

「……いいや。あれはシルフだ。僕の目の前にいるのは、紛れもなく」


 その言葉を口にしたとき、エドワードの空色の瞳が淡く揺らぎ、まるで内側から翠を溶かし込むように輝いた。ぞくりとするほど幻想的で、美しい。


 アウレリウスは一瞬、主を見ているのではなく――幼い頃から共に育った片割れを見失ってしまったかのような感覚に囚われた。

 伸ばした指先から、遠くへ攫われてしまいそうで。

その恐怖が胸を灼いた。

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