表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

10

 舞踏会場――王宮の大広間。

 磨き抜かれた大理石の床は光を映し、幾重にも垂れ下がる絹のカーテンが窓辺を飾る。

 壁には金箔を施したモールディング、彫像や鏡が並び、無数の燭台とガス灯が一斉に輝き、夜を昼のように照らしていた。

 天井の漆喰には、神話の一場面を描いた大きなフレスコ画。そこから吊るされた巨大なクリスタルのシャンデリアが、星のように光を散らしている。


 礼儀として、はじめのダンスを共にする。

 音楽、笑い声、衣擦れのざわめき。会場は眩しいほどに華やいでいた。


 けれど、エドワードの掌は妙に熱かった。

 ――花びらは、いつの間にか消えていたはずなのに。


 曲が終わり、夫人を休憩席へと案内したときだった。

 ふわり、と視界を横切る白。


 一枚の花びらが、天井から舞い落ちてきた。


 気づいたのはエドワードだけだ。

 笑い声も音楽も止まらず続くなか、花びらはゆっくりと落ち――そして、消えた。

 まるで最初から存在しなかったかのように。


 その瞬間。

 天井から鈍い音。

 会場の中央で、巨大なシャンデリアがきしんだ。


 そして、轟音とともに落下した。


 悲鳴が響き、舞踏会は混乱に包まれる。


 落下したシャンデリアは幸いにも人を直撃せず、軽傷者が出た程度で済んだ。

 すぐさま騎士団が駆けつけ、舞踏会は一時中断となる。


「老朽化だそうです」

 後日、調査の報告はそれだけだった。


 けれどエドワードの目には、あの白薔薇の花びらが焼き付いて離れない。

 ――老朽化で、花びらが落ちるものか。


 人知れず、彼の胸に不安が根を広げていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ