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結界の札とダイヤモンド

今後、敵からの夢攻撃を防ぐために、マノンのベッドに結界の札を貼らないといけない。(ついでにガルムの分も)


キュウビ「買いに行くわよ?」


ブラック「そんな便利なもん、街に売ってんだ?」


キュウビ「街に行くのは姿鏡を買うためよ。」


ん?


ブラック「姿鏡(すがたかがみ?なにそれ?」


姿鏡が結界の札と何の関係があるのだろう?

俺のように出不精な古い(ドラゴンより、彼ら新しい神の方がこの世界について詳しい。


ビャッコ「確かに、この家にはないな。」


とりあえず、行くわよ。


俺はぐったりしているマノンをビャッコとガルムに任せてキュウビと一緒に街へと向かった。持ち物係として。


ブラック「この手があったね。」


キュウビ「考えたでしょ?えっへん!」


俺はケモノモードのキュウビの背中に乗って街道沿いの藪の中を颯爽と移動していた。バスなんかよりスイスイ進める。さすがは神だ。


ポッ、ポッ


ドッザァァァ……!


嘲笑うかのようないきなりの通り雨。さすがは星。

神の知恵なんて星の前ではないに等しい。


……二人ともベチョ濡れになった。ケモノモードで移動は天気のいい日に限る。と、したほうがよさそうだ。


ボンッ!


キュウビが人間モードに戻る。


キュウビ「最悪。一張羅なのに。」


そういうが、身体にピッタリ張り付いている着物姿がいつもより一層、彼女をなまめかしくしている。


…………正直、体が反応してしまう。


ブラック「とりあえず、乾かそう。」


俺のファイアブレスを最低出力“熱風”で使う。


ブオオォ…………!


キュウビ「アッツ!」


近づきすぎたか?まぁ、それですぐに乾いたのだから勘弁してもらいたい。


キュウビ「今度は私ね?」


平地でのフウスイ魔法。風が巻きをこり、俺の体を乾かす。


ヒュオオオォ!


……寒い。


街の側の藪の中で互いの体を乾かしてインテリアショップに向かう。市内の巡回馬車バスに揺られながら。


俺はキュウビと隣合わせで座った。彼女の匂いが脳をくすぐる。


キュウビ「?なに?」


ブラック「い、いや?」


ガン見していた。

昔はこんな事なかったのに。なんだろう?この気持ちは?最近、妙に彼女が気になる。人間の文化に触れているからだろうか?


ブラック『ドラゴンのような、古い神にはない概念なのかもしれない。』


キュウビ「…………。ほら、着いたわよ。降りましょ?」


葉っぱを錬金した小銭で運賃を払って、バスを降りる。


ブラック「こっから何分くらい?」


キュウビ「さぁ?周辺の地図あるかしら?」


運良くバス停の近くに地図の貼ってある掲示板を見つけ立ち見する。


キュウビ「こっから歩いて5分くらいね、行きましょう。」


彼女に手を繋がれ、足早に連れて行かれる。

そんな事しなくても、フラフラ変な脇道に入るような性分ではない。しかし、悪い気はしない。


ブラック『彼女なりの気遣いなのだ。』


んもう……


ん?空耳か?


そうこうしているうちに、お目当ての店に着く。




カランカラン


店員「っしゃっせー。」


店員は目の周りにクマがある。魔女か?やつらは人里には居ないはず。

目つきは怖いが、たぶん襲ってくることはない、はず……


ブラック『うう、魔女にそっくりで怖い……。』


キュウビ「姿鏡を2枚ちょうだい。」


店員「かしこまりましたー。」


キュウビ「割れないようにしてちょうだいな。寝室に置きたいの。買い物はそれだけ。」


といいつつ彼女は店員が鏡の在庫を奥から取ってくる間、店内を物色して手鏡コーナーでピンクの縁の手鏡を手に取っている。


ブラック「それも買えばいいじゃん。」


キュウビ「え?いいの?」


ん?会計、俺か?まぁいいや。


彼女が喜ぶと俺もなんだか嬉しい。


店員「これもですか?合計で○万2980円です。」


ブラック「……あの、小銭でいいですか?」


「はぁ?」


店員が露骨に嫌な顔をする。


うう、怖い。


紙幣を手に入れる手段を考えねば。




帰りのバス


キュウビ「今日はありがとう、ブラック。」


ブラック「何の、何の。」


キュウビ『まぁ、まだやることはあるんだけどね?』


ゾワッ


なんか嫌な予感がする……




マノンの家


両親の寝室に姿鏡を合わせ鏡にして片方の鏡にキュウビの紅で手のひらサイズの長方形を描く。

さながら、扉に見えなくもない。


キュウビ「でーきた!さ!行くわよ!」


ビャッコ「いってらー。」


ブラック&ガルム「どこに?」


キュウビ「え?ガルムはともかくブラックも知らないの?」


すみません……。知りません。


キュウビが何かしらの呪文を唱えると長方形をかいた鏡にサイケデリックな色をした次元の扉が開いた。


ガルム「おおー。」


ブラック「一応、聞くんだが、今から行く場所って魔女関連?」


キュウビ「そうよ!ついてきてねブラック!」


とほー、今回のお代はなんだ~?




鏡の中の世界 幽世かくりよ


ギュ


今回は自分からキュウビの手を握る。魔女は怖い。それに鏡の中の世界は闇が広がっている。


俺は洞窟暮らしでも暗い場所が苦手だ。


だから、天上に穴がある場所を選んだ。あそこなら闇に覆われることはないからだ。


キュウビ「あん。」


ブラック「ごめん、握るの強い?」『君だけが頼りだ。』


キュウビ「い、いいのよ気にしないで!」


たぶん、俺だけじゃマノンは助けられなかった。

キュウビがいてくれたからこそだ。

彼女の知識、技、交友関係(魔女)があったから、今の状況までこれた。


キュウビ「見えてきた、あの店よ。」


カランカラン


魔女だ。

黒い服やとんがり帽子をかぶってはいないが、魔女特有の目のクマ、うっすらと黄色いオーラを放っている。魅惑チャームの類いだ。


東洋の服を着ている、作務衣と言うやつか?

薬になる葉をすり鉢でゴリゴリしていたのをやめてこちらを向く。


店主「あら?キュウビ?いらっしゃい!」


中は漢方の匂いのきつい店だった。たくさんのラベルにしてある小さな引き出しの棚が整然と並んでいる。


外見は普通の西洋建築の佇まいだったのに中は東洋の店のようだ。


キュウビ「マリサ、札のコーナーってどこ?」


カウンターに座る店主のマリサは右手で俺等から見て店の左端のコーナーを示した。


マリサ「あっち。」


キュウビ「ありがと!」


キュウビは俺を置いて札のコーナーに向かった。

俺は目の前にある棚の引き出しが気になって、1つ開けてみた。


スッ


ブラック『カイゲン?』


マリサ「そこは病気した時の薬が入ってるよ。主に発熱かな?」


ブラック「コーナーのところに何があるかラベリングしといたら?毎回聞かれるんじゃない?」


マリサ「あ、そうかも!それ採用!」


さっそくとマリサは後ろの引き出しからラベルシールのシートを取り出して何やら書き出した。

そこへキュウビも目的のものを見つけてきたのか会計に来て俺を手招きしている。


ブラック『今回は、何がお代なんだ……』


キュウビ「お会計よ。マリサ。」


マリサ「ほいきた、えーと結界の札を2枚か。ダイヤモンド一つでいいな。」


持ってないよ……


キュウビ「大丈夫よ、ブラックならできるわ?」


ブラック「どうやるんだ?」


マリサ「あー、ソイツが例のドラゴン?」


うげっ!バレた!


キュウビ「何も知らないから説明してあげて?」


マリサ「錬金できるのに知識がないんじゃなぁ?しょうがない。引きこもりだし、ドラゴンは。」


引きこもりになった原因になんか言われてる……


マリサ「ダイヤモンドも構成元素は炭素だ。空気中にも炭素化合物が含まれてる。

お前さんなら空気中の炭素でダイヤモンドが作れるはずだ、やってみな?」


そんな物があるのか、全然知らなかったなぁ。


左手で空気を圧縮&錬金する。


シュゥバッ!

コロロ!


マリサ「おー!できた、できた!さすがドラゴン!見てくれは悪いがカットすれば十分、値打ちもんになる!」


キュウビ「どう?自分の力、ちゃんと学べばいろんなことができるようになるのよアナタは。」


ブラック「へー、知識かぁ。」




帰り道


ブラック「ありがとう、キュウビ。」


キュウビ「何?改まって。」


手を繋いでるが先を行くキュウビの顔は見えにくい。


ブラック「キュウビのおかげで俺、外に出てみようって決心がついたよ。」


キュウビ「今でも、外に出てるじゃない?」


そうだけど。


ブラック「今まで、外の世界になんて興味なかった。マノンの件が終わったらまた巣に戻ろうと思ってた。」


キュウビ「私との探偵事務所は?」


ブラック「あれも、飽きたら帰ろうって思ってた。けど、今は違う。もっと、外の世界が見てみたいって思えるようになった。」


キュウビ「ふーん?」


ブラック「だから、その、探偵事務所が飽きたら、キュウビと一緒に世界を旅するのもいいなって。」


キュウビ『わ、私と!?』


握るキュウビの手が熱くなる。


ブラック「その時は、ついてきてくれる?」


キュウビ「もう、しょうがないからついてってあげるわよ!」


キュウビは満面の笑みで振り向いてくれた。

それはきっと、楽しい時間になるだろう。

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