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マノンの夢

ビャッコ「ブラック、着いたぞ。」


俺は目を覚ました。一面、薄い灰色の世界。ところどころ画像が抜けたかのように濃い霧がかかっている。


ブラック「ここは、マノンの村か?」


ビャッコ「たぶんな。」


そこは村の外れにある定期馬車の停留所のベンチ。

俺たちはそこに並んで座っていて、俺はあたりを見回した。


ワラワラ……


ブラック「うわ!なんだこれ!手が生えてるぞ!?」


足元に奇妙な草が生えている。


手?


それは村のあちこちから生えていた。


家の植込み、玄関の扉から手がワラワラとたくさん生えていて何かを必死でつかもうとしている。


ビャッコ「ここは、マノンの夢の中だからな。」


キュウビ『(ザー)ブラック、(ザー)コ、聞こえる?』


空からキュウビの声が響いてくる。俺は空を見上げてキュウビに質問した。


ブラック「キュウビ、ここにマノンはいそうか?」


キュウビ『いや?そ(ザー)反応がない。いな(ザー)。』


ビャッコ「いないか……」


ブラック「俺もこんな気色の悪い所には居たくはないな。」


俺たちが村の方を振り返ってみていると、家の屋根の上からヌゥっと巨人が顔を出す。

ギラついた目がギョロギョロ何かを探している。


巨人「ぐおおおお、にえみ子ぉぉぉ!」


ブラック「ありゃ、村長か?!」


ドゴォ


その巨人がこれまた巨大な兎のぬいぐるみに殴り倒された。その兎は顔の半分が取れかけている。


兎「キライ、キライ、キライ!」(ガスッ!ガスッ!)


兎にマウントを取られて殴られるだけの巨人の血しぶきが家の屋根に降り注いでいる。


ブラック「………………」


その光景の下、家々から恐ろしい仮面をつけた村人達が鎌と笑顔の仮面を持って、ゆっくりとコチラに近づいてくる。


ビャッコ「ここは危険だ。」


ブラック「あぁ。」


俺たちは立ち上がるとケモノモードとドラゴンモードになって街へ向かった。


ビャッコ「停留所がスタート地点ってことは。」


ブラック「遊園地リンボは街の中かその向こうか。」




街につくと俺たちは人間モードに戻って、遊園地リンボの探索を開始した。


ブラック『ありゃ、この前入ったレストランか?』


簡素な長方形だった看板の形が違う。あれは、お子様ランチについてたハンバーグの形だ。


その時、空からマノンの声が聞こえてきた。


「ママって呼べばいいの?」


「協力したげる!」


ブラック「………………」


キュウビ『あちゃー。』


ビャッコ「…………俺は騎士団詰所方面を探してみる。ブラックはホームセンターだ。」


そこからは敵対者が出てきた。


ブラック「くっそ!なんなんだこいつら!」


骸骨やらゾンビ、羽の生えた大きな芋虫が襲ってくる。


キュウビ『気をつけな!ソイツら夢魔の類いだ。攻撃を受けると呪いゲージが溜まるよ!』


キュウビの声がさっきよりクリアに聞こえる。マノンを中心として形成された夢だからだろうか?


ブラック「呪いゲージ?」


キュウビ『あんまり、攻撃を食らうなってことさ!』


そこまで早く移動する奴らではないから、避けるのは簡単そうだ。


キュウビ『地形が変わるような大技使うんじゃないよ!マノンが負荷に耐えられない!』


ブラック「分かってるよ!フレイムタン!」


ゾフッ!


俺の持つ炎のムチが敵対者を両断する。


ブラック「ビャッコそっちは見つかったか!?」


遠くにいるビャッコに通信する。


ビャッコ『まだだ、コッチも敵対者でいっぱいだ!しかも騎乗してやがる!』


キュウビ『雑魚に構うんじゃないよ!早く進むんだ!』


街の中は霧が濃い、数m先も見えやしない。


キュウビ「街はあんまり来ないからだろうね。脳が画像を処理しきれないんだ。」


それが霧が濃い理由?説明されてもよく分からない。人の夢の中に潜るのはほとんどしたことないし。


ビャッコ『見えた!遊園地リンボの改札口だ!先に入るぞ!』


キュウビ『ビャッコのルートはメモってある!ブラック!』


俺は踵を返して来た道を引き返した。


タタタタ……!


ブラック「ドラゴンモードで行っていい?」


キュウビ『そんなに天井高くないよ。建物にぶつかる。やめときな!』


そ、そうなのか。

ここは素人判断するより、人世ひとよ研究家のキュウビの言葉に従おう。


ビャッコ『早めに頼む!ここのヤツらそこそこ強いぞ!(どかっ)』


キュウビ『あ!ビャッコが!急いでブラック!』


ブラック「ビャッコ、一人で進むな!」


ビャッコ『ぐ、分かってるよ!しつこいんだ!コイツラ!』


ホームセンター方面より騎士団詰所方面のほうがより凶悪な敵対者が出るのは父親がいるからか?そんな気がする。


ブラック『マノンの父親は俺たちが救ってやるさ!』


濃い霧で覆われていた空の隙間から一筋の霹靂へきれきが差し込み目の前の敵骸骨騎兵に当たると、騎兵は音を立てて溶けてなくなった。


ブラック「これは!」


キュウビ『今だ!ブラック!走って!』


ドカラッ!ドカラッ!……


先ほど避けた他の骸骨騎兵がこちらを向く前に俺はその場を駆け抜けた。


敵対者を避けつつ、しばらく道なりに進むと改札口が見えてきた。


ブラック「遊園地リンボだ!」


キュウビ『マノンの反応はそこからだ!』


遊園地の改札を飛び越えて中に入る。


そこでいたのはボロボロで大太刀を振るうビャッコと見たこともない化け物たちだった。


人型のそれは口の部分から胃袋の部分までむき出しの鋭い歯を持つ化け物や溶けた人のパーツを内包したスライム、内臓むき出しの溶けてベロベロのゾンビだ。


ブラック「悪夢だな!フレイムタン!」


ビシュッ!

ガッパァ!


ビャッコを取り囲んでいたスライムを両断する。


ビャッコ「来たか!助かった!」


キュウビ『アンデッドタイプ!火属性だ!』


ビャッコ「五行剣、火!火炎斬り!」


ズバッ!

ブジュゥゥゥゥ!


真っ二つに割られたゾンビの腐った肉が焦げる匂いとともに再生しなくなる。


ブラック「俺の十八番だ!教えてくれて、ありがとよ!キュウビ!」


キュウビ『敵がどんどん湧いてくる!きりがないよ!』


ビャッコ「ここにいてもだめだ!マノンを探そう!」


ブラック「一人じゃ無理だ!行くぞ!」


俺とビャッコは連立つれだって、園内を探索した。


途中、

追いかけてくる化け物達を小シアターの出入り口や鏡のアトラクションでまくことに成功した。




ビャッコ「見ろ!マノンだ!」


ビャッコがジェットコースターのアトラクションを指さす。


気を失ってるマノンはジェットコースターに安全装置なしで乗せられている。コースには回転するところがある。


ブラック「あんなところに!」


ビャッコ「やばいぞ!」


駆け寄るオレたちを察知したかのように動き出すジェットコースター。加速器があるかのようにいきなりトップスピードだ。


ブラック「あれじゃ、間違いなく落ちるぞ!」


ガコン!

フワッ


その小さな体はそこに入る前のカーブで外に放り出された。


ブラック「マノン!」


ビャッコ「!」


ぽふっ


咄嗟にケモノモードのビャッコが救い出す。


ブラック「危なかった!」


ビャッコ「本人確保!」


キュウビ『よし!離脱だ、そんなとこ!』


俺達がケモノモードのビャッコにマノンを括り付けているとジェットコースターのアトラクションの奥から巨大な影が迫ってきた。


???「まてぇ!貴様ら、娘を置いてけぇ!」


霧の中から現れたのはヌルヌルしたタコのような見た目の巨大な怪物だった。


ビャッコ「親玉だ!」


ブラック「さっさと行くぞ!」


キュウビ『だめだ!遊園地リンボのそとが!!村や町がなくなってるよ!』


人は自分の記憶を繋いで幽世かくりよ遊園地リンボに行く。つまり、


キュウビ『魂が身体から分離された!?』


ビャッコ「早くしないとマノンが自分の体に戻れなくなるぞ!」


ブラック「クソッこのデカブツをやらなきゃだめか!?ファイアブレス!」


ドゴォォ!


タコ怪物「属性変化!」


炎が無効化されるどころか、タコ怪物の黒焦げ部分が元通りになる。


タコ怪物「無駄だぞ?ここは俺のテクスチャーだ!」


ブラック「これならどうだ!」


ミニョーン


ドラゴンモードになった俺はそのタコの怪物と取っ組み合いの接近戦を仕掛けた。


ブラック「ドラゴン、パンチ!」


パキィン!

ドゴォォ


俺の体が吹き飛ばされる。


ブラック「何?!」


ビャッコ「反射だ!」


キュウビ『マノン!起きて!』


その時、ビャッコの、背中でマノンがうわ言を口にする。


マノン「お父さん、お母さん……」


霧の間から遊園地に霹靂の光が何本も差し込む。


タコ怪物「うぎゃー!」


光に当たった怪物たちが煙を上げながら溶けていく。


ブラック「うるせーんだよ!」


苦しむタコ怪物を大きな光の中に殴り飛ばす。


タコ怪物「あぁぁあ!俺が溶ける!溶けちまう!…………。」


ブツッ!


タコ怪物は遊園地リンボとともに消えた。

残ったのはドラゴンとマノンを背中に乗せたビャッコとだけだ。そこには、何もない灰色の空間が広がっていた。


ビャッコ「やったか。」


ブラック「たぶんな。」


早く戻るぞ

そう言うとビャッコは天上から差し込むひときわ輝く光を目指して天を駆け上がっていった。


俺もそれについてマノンの夢から現し世に戻った。



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