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ビャッコとファフニール  〜土塁奴(どるいど)〜

朝食の用意をしてる時に家の扉が激しく叩かれた。


ドンドンドン!


ブラック「なんだ?朝っぱらから?」


キュウビ「私が出るよ、マノンはそこに居な。」


何かを思い出したかのようにマノンは怯え、俺にしがみついてきた。

この村で、父は連れて行かれ、自分は生贄にされたのだから、さもありなん。


マノン「う、うん。」


キュウビと村人たち数人が外で何か揉めている。


埒が明かないからと、キュウビは村長と村人たち数人を家に入れた。


その中には見知った顔の男がいた。


ブラック「ビャッコ、なんでお前がここに。」


その旅人姿の屈強な男が俺の顔を見る。


ビャッコ「やっぱりお前の仕業か、ブラック。ってことはコイツはキュウビだな?」


キュウビ「なんだい?アンタら知り合いだったのかい?」


村長は席に着くと事の経緯を話しだした。


村長「儂らは土塁工事の賃金払ろうてもらおうと、領主様に言いに行きましたですじゃ。」


「くそ!しぶりやがってよー!」


「あの、くそったれめ!」


「こら!やめぃ!巫女様が怯えとるぞ!」


村長「……そこのものが言うように、領主様は土塁工事はお前らが自発的にやり始めたことだと言って払ってくれませんでした。」


「お願げーしますだ!カミナ様!」


「お願げーします、巫女様!俺等を助けてくだせえ。」


マノン「分かりました。龍神様に助けてもらえるよう、お頼みしましょう」(棒読み)


キュウビ「…………」


ブラック『…………もう、何も言うまい。』




村人たちを帰して、ビャッコを追加した、俺たち四人(?)はリビングのテーブル席についた。


正確には人間一人とドラゴンとケモノが2匹だな。今は人の姿だが。


ブラック「とりあえず、背中の大太刀を置けよ。」


ビャッコ「うむ。」


ブラック「で?ビャッコは何であの中に混ざってたんだ?」


俺の質問にビャッコは短く切られた頭をワシャワシャ撫でながら答えた。


ビャッコ「たまたま、あの川を通りかかったら建築途中の土塁のところで奴らが肩を落としてたんだ。

だから、話を聞いて、それなら、その巫女様とやらに頼んでは?って言ったんだ。」


キュウビ「面倒なことに首を突っ込む奴がここにもいたよ。」(クソデカため息)


マノン「ど、どうしよう?私、お金なんて持ってないよぉ。」(プルプル)


土塁工事従事者たちの給料概算総合計が書かれた紙に目を通してマノンはべそをかいている。


ブラック「だよなぁ。」『外にある木の葉っぱで足りるかな?』


キュウビ「アンタ、まさか全部小銭でやろうってのかい?」


ブラック「え?だめなの?」


マノン&キュウビ「ダメだよ!」


ビャッコ「それなら、俺がいいこと教えてやるよ。」


ブラック「?」


キュウビ「なんだい?そのいいことってのは?」


マノン「お金もらえるの?」


ビャッコ「ファフニールの財宝だ。あの川を暴れさせてる張本人だよ。」


ブラック「ファフニール、俺の親戚じゃん。たぶん。」


キュウビ「財宝かぁ。いいのがありそうな予感!」(ムフフフ)


鼻の下を伸ばしたキュウビは鼻息が荒い。


マノン「その人(?)に頼むの?」


ビャッコ「いや?アイツは過去の戦で呪いかなんかを受けちまって気が狂ってる、話は通じない。これの出番だ。」


カチャ


テーブルに立てかけてた大太刀にビャッコは手をかけた。


キュウビ「えー?まじー?荒事は苦手なんだよ~!」




ビャッコに連れられて俺たちは川の近くの山にある洞窟へ入った。中は湿度が高くジメジメしている。

そして臭い。カビか?


嫌がるキュウビを連れて、奥へと進むと異様な息遣いがしてきて、何かが光を放っていた。


ブラック『うわ、いたわ。』(ヒソヒソ)


キュウビ『ありゃ、財宝自体が光ってんのかい?!』


ビャッコ『気づかれないよう、身を低くしろ。』


すぐに大量の金銀財宝を見張る巨大な黒いドラゴンが姿を現す。

俺と一緒のブラックドラゴン。遠い親戚なんだろうが面識はない。


ブラック『何属性だ?』


ビャッコ『さぁ?』


キュウビ『なにそれ?!下調べ無しかい?呆れた!』


ドラゴンはあまり巣からでない。だから、同種と交流がない。

まぁ、それにも文化的背景があるが今度にしよう。誰にも聞かれてないし……


ファフニール「グルルル……」


ブラック『うわぁ、ホントだ。目が逝っちゃってるな。』


マノン『ブラックとは大違いだね?』


ん?うん。


キュウビ『帰ろうよー。他にもいい方法があるって。多分。』


キュウビの言う多分は無いと同義だ。100%自信がないと何事もやらない性分だ。


ビャッコ『俺が切り込んでやる。』


ブラック『キュウビはマノンを守っててくれ。』




ブラック「行くぞ!」


物陰から俺は右とビャッコは左とに飛び出し、ファフニールに狙われないようにジグザグにかけた。


ブラック「ファイアブレス!」


ビャッコ「五行剣、金!斬鉄剣!」


ファフニール「!?」


ザァァァ!


ブジュゥゥゥ!


ファフニールの手前に水の壁が沸き立ち俺のファイアブレスを無効化する。同時に奴は口を大きく開ける。


ファフニール グワッ!


ドバババ!


ブラック「こいつ!水属性!?」


超高速の水玉が俺めがけて水の壁から発射される。咄嗟にその場から右側転してかわす。


ドドゴォ!


洞窟の岩でできた地面や壁に深々と大穴が穿たれる。


ガキィン!


ビャッコの金属性の太刀が水に吸収されファフニールの大きな鱗に弾かれる。


ビャッコ「ブラック!火属性のお前じゃ分が悪いぞ!」


ブラック「ビャッコ!麒麟刃きりんじんだ!」


ビャッコ「分かってるよ!」


ドゴォ!


ファフニールの極太の黒光りする尻尾でビャッコが洞窟の壁に叩きつけられ、気絶する。


ーブラック!ヌクレイアだ!ー


あの光景がフラッシュバックする。


そんな魔法をここで使えるか。軽く一都市が吹き飛ぶ魔法だ。


ーぐわっ!早く!ー


いやだ!無理だ!


「臨兵闘者皆陣烈在前!」



キュウビ「どきな!ブラック!」


目を動かして後ろのキュウビを視認する。その手は何か印を結んでいる、東洋式の魔法だ。

咄嗟にその場を離れる。


キュウビ「岩杭ロックステーク!」


キュウビの後ろの壁が変形し岩の杭が勢いよく発射される。


キュウビの地形を使った魔法、“フウスイ”だ。


ズドドドド……!


水の壁を貫通しファフニールの大きな鱗に何本も深々と突き刺さる。


ファフニール「ゴハッ!お、れ、は……」


ズズン……


キュウビ「やった、な。」


岩の杭でハリネズミになったファフニールが絶命し、よろよろとビャッコが立ち上がる。


ビャッコ「ゴホッゴホッ、水の相克は土属性。」『もし、あの時ー』


ブラック「ビャッコ。」『やめろ。』


過去は変えられない。たらればで、こねくり回すのは死者への冒涜だ。俺たちは最善を尽くした。


マノン「これだけあれば……」


キュウビとマノンがいつの間にか、ファフニールの財宝の前に立っている。


そうさ、今度こそは誰も死なない様にすればいいんだ。




のっし、のっし……


ファフニールの財宝を持って村に戻る。


ブラック『荷物運びでドラゴンモードに戻されたのだが……』


キュウビ「文句言わない。」


ビャッコ「そうだぞ?俺なんて人間モードのまんまで持たされてるんだ。」(ずしっ)


のっし、のっし


「ひぇぇ!こ、黒龍様じゃ!」


まだ、人食いと思われてる……


「カミナ様がもどったぞー!」


集まる村人達の前にファフニールの財宝が詰まった宝箱を置く。


マノン「土塁工事の給料としてお受け取りください。」(棒読み)


村長「龍神様!ありがとうごぜーます!」


「巫女様が救ってくなすった。」


「ありがてぇ、ありがてぇ!」


ブラック『?おや?』


「それじゃ、さっそく……」


「オラも!オラも!」


「待て待てわしのジャ!」


皆が財宝に目の色を変えて群がっていた、その後ろから領主が複数の警官を引き連れて来た。


ジンガー「お前たち全員動くな!盗品を確かめる!」


マノン「え?!」


怖くなったマノンがキュウビの腰の後ろに隠れる。


ジンガー「ふん!その小娘に皆踊らされおって、どうせどこぞから盗んできたものに違いないぞ?」


「し、しかし!領主様!」


村長「儂らの給料にって巫女様が龍神様にお願いして持ってきてくれたものでごぜーますよ?」


「盗品なんて言いがかりだっぺ!?」


「そうじゃ!そうじゃ!」


ジンガー『けっ!んなこたぁ、どうでもいいんだ!

それを国に献上すれば、俺はこの国の大臣様よ!

手元において公爵家と政略結婚に使うのもいい!』


領主からは明らかに異常なオーラが出ていた。


財宝に、悪心あくしんを増幅させるのろいでもあるのだろうか?


村人も棍棒を持った警官も領主も一瞬即発な睨み合いをしだした。


ブラック「ファイアブレス!」


俺はファフニールの財宝を溶かした。


「あぁー?!」


「黒龍様!なして!」


「もったいねえ!」


キュウビ『まさか、財宝に呪いがかかってたとはねぇ。ブラックもういいよ。呪の気配は消えた。』


マノン「これは元々、龍神様のもの!人々が争うのであれば、溶かすのみです!」(棒読み)


ジンガー「ぐ、これで勝ったと思うなよ!」


領主と警官はすごすごと帰っていき、村人達はその場にへたり込んで残念がっている。


マノン「龍神様!どうかこの者たちをお救いください!」(棒読み)


え?どうしろと?


キュウビ『溶けて固まった金塊を口の中で再錬金するのさ。』


ブラック『うわぁ、俺のをパフォーマンスに使いやがったな?』


キュウビ『文句言わないの!』


俺は金塊をおもむろに口に含んだ。


「あーぁ。」


「俺たち結局、タダ働きかよ……」


「はらへったな……」


村人たちが帰ろうとした時、俺は口から錬成した金貨を吐き出した。


ドシャァ!


ブラック「意地悪な領主はいなくなった。ほれ、受け取れ。」


村人達は我先にと金貨に群がった。あれは、ホントに呪いだったのだろうか?と疑ってしまう。


こうして、土塁工事はその後も続けられることとなった。

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