ドラゴンの旅立ち
真っ白な空間
ここはどこだ?
目の前の大きなスクリーンに映された画像の中で同胞がたくさん逃げ惑っている。
仲間を逃がそうと魔女達に攻撃する者は尽く肉塊にされていく。
怖い。
あの時の光景だ。神代の時代の外来の神の侵攻。
魔王「リュウは皆殺しだ!殺せ!」
魔女「八柄の剣!」
ズバッ
時空ごと切り裂く見えない刃に両断される同胞達。無抵抗の幼体も全てが活動を停止していく。
竜「クソ!外来種!」
大蛇「我らでは敵わん!」
俺達は負けた。
世界樹は切られ。守るべきものも、従うリュウオウも無くし、逃げ惑うしかなかった。
夢魔の王の声で命乞いが叫ばれる。
その姿は見えない。奴のFPS視点なのか?
「待ってくれ!殺さないで!」
魔王「なんだコイツ?喋りやがるぞ?」
魔女「なら、貴様、我らの手助けをせよ。他のリュウ共を殺せ。」
「わ、わかった!」
俺達に残されてた選択肢は二つ。
外来の神の軍門に下るか、洞窟で隠れながら暮らすか?だった。
俺は後者を選んだ。
もう、外のことも仲間のことも忘れてしまおうと思った。体にコケがついても寝て過ごす日々。
外で洪水が起きようが星が降ってこようが知ったことか!勝手にやっててくれ!
それからしばらくすると、世界が静かになった。
なんだ?
外来の神の竜狩りが終わったのか?
みんな、うまく逃げたのか?
???「あ、ホントにいた。竜だ。」
ブラック「キュウビ。」
夢魔の王「なに?!」
ジンガー「気が付きやがった!?」
……お前はいつも俺を連れ出してくれるな。愛してるよ。
ブラック「プラズマキャノン!」
カァォン!
ドゴォン!
夢魔の王「ぐぁ!?」
ジンガー「ぎゃぁぁ!服が!も、燃える!」
夢魔の王の魔力の壁でも、プラズマ化した炎の熱で炭素は燃え出す。
ブラック「どうだ!?」
それと同時に後ろの扉も開く。
そこにはボロボロになりながらもマノン達を救出したキュウビ達がいた。
キュウビ「ブラック!いいよ!」
よーし!キュウビ達は今、俺の後ろ、かつ、魔封のペンダントを持ってる。やるなら今だ!
ブラック「ヌクレイア!」
カ!
辺りが閃光に包まれ、空気が爆縮する。
ドォォォォォ……ン!
屋敷とその周囲にあった山々がなくなり、地形が変わる。現し世と幽世、その両方の星のテクスチャーを破壊する。
火属性最上位魔法、またの名を戦略魔法。それがすべて吹き飛ばす。辺りにはもう何もない。ジンガーも夢魔の王も消し飛んでいた。
世界は再び元の色に戻っていた。
…………あ。
ブラック「外にいた狛狐を忘れてた。」
チーン
…………それから10年後
カランカラン
マノン「ただいま戻りましたー。」
キュウビ「頼んでた、固形のやつあった?」
机で事務作業をしていたメガネのキュウビが顔を上げる。
マノン「ありました!ありました!持ち運びに便利そう!」
キュウビの立ち上げた探偵事務所のソファで座って、
激甘なブラックコーヒーを飲んでいた俺は大きくなったマノンからレジ袋を受け取り、中の固形ミルクを取り出した。
固形ミルクは使う分だけ割って使うのか。長い袋に包まれている。
ブラック「あー、これ、開けた袋を何かで閉じないとだめだわ、100円均一でクリップ買わないと。」
マノン「私が行きましょうか?」
ボヨン
特に体の一部分が大きく育ったマノンが買い物に行こうとする。しかし、それを制して俺は立ち上がる。
魔女(+オペも)が怖くて、右目はまだ光を失ったままだが。両の目でキュウビを見る。
美しかった長いピンク髪は子供に引っ張られるとかで、短くボブカットにしている。
ブラック「俺が行ってくる。マノンはカミナにミルクをやっててくれ。」
マノン「はーい。今度のみんなでお出かけ楽しみですね!」
キュウビ「この前の仕事は実入りが多かったし。たまには息抜きしなきゃ!」
ほとんど俺がやったんだが……
マノン「子供さんができてしばらく行ってなかったから、ガルムも楽しみにしてます!」
キュウビの補佐にと雇ったマノンがミルクの準備にと台所に消える。外に出ようとしていた俺にキュウビが声を掛ける。
キュウビ「アナタ、腰派よね?」
ブラック「はい?」
キュウビ「胸も大きいのがいいの?」
ソ、そそ、そんな事……、
ブラック「なく、はないかな〜?」(滝汗)
どうせ、バレる。心の声は全部聞かれる。
キュウビ「素直じゃない。ついでにドラッグストアで、あれも買ってきてよね?」
は、はい!
俺は新世界の扉を開けた。
ーおわりー




