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第9話 キャンピング。

「なあ、寝た?」

「ん?起きてるよ。」


簡易宿泊所と呼ぶのもなんな、向かい合わせのベンチに三角の屋根が付いたようなところ。ベンチに馬車から毛布を下ろしてきて敷き、旅行用のカバンを枕にして横になっていた。星空が見える。


少し離れた場所ではまだ宴会をやっているようだが、隣同士が結構間が空いているのでさほど気にならない。僕たちも風呂に入ってから、村民の出している出店でご飯を食べ、酒を飲んでいた。素朴な料理に地元の酒。


「マルはすごいよね。この村は過疎化が進んでいてさ。働き先もないし。農業をやる人手もない。いろいろと問題ありの村だったのにさ、見た?みんな楽しそうでさ。」


「ああ。そうだな。立地条件がドンピシャなんだな。ちょうどほしかった場所だね、北回りの街道だとな。客も楽しそうだし、やっている村の人たちも楽しそうだ。何よりじゃないか?何が不満なのさ?」

「・・・・・」

「十分、ジーモン侯爵家の奥方としてやっていけそうじゃん。不満?あいつは本の虫だったから実践はどうかな?って思ってたけど、ちゃんと村人を巻き込んで起業するなんて!我が妹ながら、感心するよ。」

「・・・・・」

「で?問題点はどこ?」

「・・・俺、必要?あの子に?」

「・・・そこかあ。それはあの子に聞いてみるしかないな。」


昔からマルは合理的な考えが好きな子。


これは必要か、必要じゃないか。

そこで切り捨ててくるものも多いので、よく議論した。人の話を聞かない子でもないから、今は必要じゃないかもしれないけど、あたりで折れてくれることもままある。

だから…ランドルフ、この男が必要じゃないと?思うかな?結構仲良かったんだけど?


「なんかさあ、心当たりはないの?春の舞踏会あたりじゃないのか?」

「・・・俺もそう思った。ほとんど一緒にいたしな。帰るころ、人が多すぎて疲れた、と言ってはいたが。」

「田舎者だからね。人が多いのは苦手かも。学院に行かなかったのも、その理由だったから。」

「・・・・・」

「まあ、明日はマルを訪ねて行ってみよう。今日はいなかったな。」

「・・・・・」



翌朝、目が覚めると、早い馬車はもう出発するところだった。

御者も誘って、朝市に出かける。


機嫌のいいおばちゃんから焼き立てのパンを買い、ベーコンや野菜をはさんで食べた。お隣にパンケーキも売っていて、結構評判の様だ。

僕はそこにハンナおばさんのスープ、っていうのを買った。ランドルフはエラおばあちゃんのミネストローネスープを飲んでいた。味見したが、どっちも美味しかった。

紅茶とコーヒーを売っている店もあって、食後のお茶も楽しんだ。

御者は少し離れた店で、カール爺さんの飼葉、を買って、馬に運んでいた。


さて。とりあえず、マルを探そう。


マルハウスに向かって歩いていると、子供連れの親が子供を預けていくようだ。

ひょいと慣れた手つきで子供を受け取っているのは…マルと侍女のアンネ。

子供も慣れたものである。


「何?」

「託児所らしいよ。1日1000ガルドでお昼付き。昨日のチラシに書いてあった。」

「・・・託児所?なんで?」

「ああ。この辺じゃあ麦の収穫の仕事に子供をおんぶしていってたんだけど、去年小さな子が暑気あたりで死んじまってな。それでマルちゃんが預かってくれることになったんだよ。助かるよ。働きたいけど、子供に死なれちゃたまんないからね。みんな仕事に行く前にああやって子供を預けて、仕事帰りに子供と風呂に入って帰るんだ。子供の皮膚病とかも減ったよ。」


パンを売っていたおばちゃんが、僕たちの会話に割り込んでくる。


「働くとこもできたしねえ。年寄だって小銭が稼げるしね。マルちゃんは救世主みたいだよ!あははっ!」

「・・・・・」


仕事中なら邪魔もできないから、昼寝でもして待つか?と話していたら、クルトに会った。一見、見逃してしまうほどの庶民だ。腕利きの騎士なんだが。


「ああ!いいところにいらっしゃいました!お時間はおありで?夏休みですよね?いつまでご滞在で?」


結局…クルトに森につれて行かれ、僕たちは一日中木を切った。

冬用の薪らしい。

切って、枝葉を払って、丸太を積んでいく。

切って、枝葉を払って…


夕方、へとへとになった頃、ようやく今日の分が終了。

「うちで待っていればいいですよ?じき帰ってきますから。」

そういわれて、クルトの家に案内される。

脇を流れる小川で水をかぶる。


「狭いですけどね、どうぞ。」


案内された小屋のように小さい家は、台所とあと一部屋、といったところか。まあ、一人で住むには十分か?

綺麗に片付いている。花柄のカーテンとかかかっていて、知らなかったら新婚さんの家みたいだ。


「じゃあ俺、そろそろ二人を迎えに行ってきます。」

「ああ。頼むよ。」


少し…いや、かなり…今日の労働はハードだった。一緒に行きたいところだが、体力を温存させていただくことにした。




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