第7話 キャンプ地・マル。
結局、どうなったかって?
キャンプ地になった。
小屋を壊した向こう側の土地も使って構わないと村長に許可を取って、森から背丈ほどの若木を掘り出してきて、等間隔に植えていく。
・・・クルトは実は、人使いが荒いことがわかった。スコップでえっちらおっちら印をつけた木の根元周りを掘っていく。物凄い力仕事だ。印はクルトが付けて行った。常緑樹に限定したらしい。冬のこともあるから?この辺りはほとんど雪はないけど。
掘り出した木を借りてきたリヤカーに積んで運ぶ。
ついでに、誰も住んでいない崩れかけた家から、部材を調達。ちゃんと村長さんに許可を取った。この村に、3軒ほどある。
穴を掘る。ひたすら。
等間隔に印をつけたところに、1メートルくらいの穴を掘り、水を満杯に入れる。水が引いたら、運んできた若木を植えていく。これがお隣りとの境の印と、馬を繋ぐ木になるらしい。まだ小さいけど。その隣に、屋根と椅子だけの小屋?レンガを積んで作った四角いかまど?
レンガも部材も、廃屋から持ち込んだ。
端っこに深い穴を掘る。これはトイレになる予定。ここにドア付きの小さい小屋が乗っかるだけ。
もう…ここのところ、穴掘りしかしていない。暑くなってきたし、へとへとだよ。
これが終わったら、水でも浴びよう。
「おまえ、良く働くな?」
「え?誉めてる?バカにしてる?」
仮住まいの家に帰って、ザバリと水を浴びてさっぱりしてから、着替える。
今日の夕食当番はクルト。
待っている間、この前雑貨屋で貰ってきた端切れやボタンでぬいぐるみを作る。
ウサギやら、犬や猫。後は何かな?クマ?
「これは何??」
白いマルが二個つながった形。うさぎを作った残りで作った。黒い目を付ける。
「・・・雪だるま。」
クルトが泣きながら笑っている。えええ?かわいく出来たと思ったんだけど?
食後に私が皿を洗っている間、持ち込んだ大きな板に、クルトがえんぴつで何やら書き込んでいる。じゃまなんだけど?
「なに?」
手を拭きながら覗き込む。
【キャンプサイト・マル
この先5分。ご飯もお風呂も完備。】
*****
始まってみたら、何とかなった。
パン売りのおばちゃんの功績かな?
朝市を出していた場所を、キャンプサイト近くに移動してくれた。みんなを説得してくれたらしい。ぶーぶー言っていた人もいたらしいが、これが良く売れた。
朝ごはんにちょうど良かったから。パン、野菜、スライスしたベーコン…。
売るものがないと不貞腐れていた人たちには、薪や飼葉を売るように勧めてくれた。
ちょっとの間に、○○じいさんの飼葉、だの、○○おばちゃんのスープだの…。みんなオリジナリティを打ち出してくるようになった。意外と商魂逞しい。これはお年寄りの小遣い稼ぎ。みんな早起きだから、早く出かけてしまうキャンパーにちょうどいい。
若者は麦の刈り入れに出掛けるので、行く途中、子供をマルハウスに預けていく。
帰りはお迎えがてら、風呂に入っていく。
入浴料は100ガルド。子供の入浴は無料。こどもを一日預けて1000ガルド。昼食付。マルちゃんが読み書きも教えてくれる。キャンプサイトの利用はひと区画3000ガルド。入浴券つき。薪は別売りでひと巻500ガルド。
そうそう。廃屋はマルハウスとして生まれ変わった。
マルハウスを管理するのはヤン爺さんの一家。これもパン売りのおばちゃんの紹介。
ヤン爺さんが高齢になったから、町に出ていた息子夫婦が帰って来て、それで空き家だったんだね。(死んだのかと思っていたよ。)思い切って住み込みにしてもらった。奥の物置だったところを改装した。
ついていたことに、ヤン爺さんの息子は町の食堂のコックさんだったから、マルハウスのメインダイニングを任せた。子供たちの昼食と、宿泊客の夕食。キャンプサイトに泊まる人たちも利用できる。部屋の管理と掃除は奥さん。5つある部屋はそれぞれ2つずつベッドを入れた。ここの利用料金は、一人、一泊夕食付きで5000ガルド。
ヤン爺さんは風呂焚きの仕事。孫たちも水くみや受付。キャンプサイトの案内…。
給金は日額を決めて、支払い。残りは設備投資や仕入れに当てていく。もちろん、マルちゃんや私とクルトも日額を決めて給金をいただくことになった。
今は村の有志で、朝市の出る並びに、屋台を作っている。夜食や、少しだが酒やつまみも提供するそうだ。ここの管理は村長に頼んだ。
驚くべきことに…お土産屋も作った。正面玄関、受付の隣。
家にいるおばあちゃんたちが作った地元民が使う籠とか?それをアレンジした買い物籠とか?ジャム、とか?芋の干した奴とか…こんなの売れるんかい?と思っていたら、その素朴さが良いらしく、売れている。
しかし…準備に1か月、稼働1か月…口コミで安いキャンプサイトの噂は瞬く間に広がった。と、いうか、クルトが言っていた通り、この辺に泊まれるところがあったらなあ、ってみんな思っていたんだね?