第4話 廃屋。
「教会に預けるのに、お金を取られる、っていう感覚になりませんかね?」
クルトが帰り道にぽつりと言う。
「ほら、なにせ教会でしょう?金もうけに使うのはどうかと…。」
なるほどね。まあ、そう言われればそうかもね。
「うーん、なるほど、騎士さまの言うことも一理ありますよね。」
3人でうんうんうなっていたら、昨日パンを売っていたおばちゃんが一輪車を押して通りがかった。お嬢様がかくかくしかじかと説明している。
「んじゃあ、ちょうどいいところがあるよ!ついて来な!
夏場にさ、子供を預かってくれるのはありがたいよ。聞いたかい?去年は一人暑気あたりで子供が死んじまってな。じゃあ無理して働かなくても、っていうほどこの辺りは裕福でもないしね。仕事ないし。今年は小さい子は納屋にでも閉じ込めとくか、って真面目に話してたよ。」
納屋ねえ…。
パン売りのおばちゃんについて歩いて、15分くらい?すっかり村の集落からは離れてしまった。こんなとこに??
「あそこだよ!もうずいぶん放りっぱなしだけどね。」
目印のように高い木が何本か立っている。
そこの下にある 廃屋。
母屋らしい大きな2階建ての建物と周りに小屋らしきもの、三軒。小屋だったらしきもの、のほうがあっているか?屋根が崩れ落ちている。
この通りはまっすぐ行くとあと20分くらいで主要街道の北街道にぶつかる。馬車だと5分くらいか?と、いうことは?通ってきたけど見落としたかな。まあ、廃屋だし。
「まあ、どなたのお家ですか?」
「今は誰も住んでないよお。前に商人が王都と隣国の真ん中だから、って建てたらしいんだけど商売がこけて、夜逃げしたらしくてね。しばらく村で管理してたんだけどね。もう10年以上も使ってないからどうかとも思うけど、場所的にはいいよなあ。」
「本当ですね。」
本当ですか?お嬢様。
正面玄関は板が打ち付けられているから、お嬢様がパン売りのおばちゃんと二人で、玄関わきの窓から中を覗き込んでいる。
「ここでよけりゃあ、村長にはあたしから話しといてやるよ。どうする?」
「よろしくお願いいたします。早速中を確認していってもいいでしょうか?」
「いいよ、いいよ。」
早いね。即答かよ??
「駆け落ちの二人も手伝うのかい?よろしく頼むよ!!」
おばちゃんが私たちにウィンクして、帰って行く。
・・・駆け落ちの二人、ねえ。まあ、いいか。
クルトが力づくで玄関に打ち付けられていた板を引きはがす。
玄関のドアを開けると、かび臭いような埃っぽいような、何とも言えない匂いがする。
3人で建物内を探検する。
1階はホール。ダイニングかな?テーブルやいすが乱雑に散らかっている。
隣にキッチン。思ったより広い。蜘蛛の巣だらけだ。
その隣は従業員の休憩所か?
廊下の奥は、トイレが2つと大きめな風呂が2つ。客用と従業員用、という感じかな。
2階にそろそろと上がってみる。
左側に小さ目なホール。廊下に添って客室、というかまあ、部屋が5つ。
泥棒でも入ったのか、引き出しという引き出しが開けられて、散らかっている。
所々、床が傷んでいるのは雨漏り?カーテンもボロボロだ。
お嬢さまがガタガタと窓を揺すりながら開ける。
蜘蛛の巣だらけの部屋に、風が通る。
「いいわね!」
そうですか??