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第3話 求職活動。

翌日もお嬢さまは早くから村に降りるらしい。

リュックを背負って、軽快に坂を下りていく。


「行くわよ、クルト。」

「呼び捨てかよ。」


適当に距離を取って、ぶらぶらと歩く。今日は市もたっていないはずだけど、どこに向かっているんだろう?

野菜や花が植えられている畑を眺めながら歩いていると、お嬢様は教会に入って行った。小さい教会だ。

しばらく待ってみたが、外からは中の様子が良く見えないので、仕方なくそっとドアを開ける。


「おや、あなたたちは駆け落ちのお二人さんですね?」

白髪の神父が私たちに気が付いてにっこり笑って招き寄せる。呼ばないでほしい。

「こちらにいらっしゃい。新しい村民が増えて、喜ばしいことです。」


お嬢さまの背中が見える。ばれるよね?これ。


「あら!まあまあ!駆け落ちしてきたのって、アンネと騎士さまでしたのね!お二人がそんな仲だったなんて、存じ上げませんでしたわ!!そう言われればお二人はお似合いですわ。お付き合いをご家族に反対されたんですの?」


お嬢さまが、驚きながらも嬉しそう。知り合いがいるのって心強いよね。うん。


「・・・そうなんです。色々ありまして。」

「まあ…大変だったのね。」


そうでもないですけどね。

クルトは上を向いて顔を赤らめている。何を?照れる要素がどこにある?


「今ね、神父様に私が働けるところはないか、お伺いしていたんです。村での困りごとは教会に行けと言われましたので。でも、男の方なら、もうすぐ小麦の収穫作業が始まるので仕事があるようなんですけど…女性は落穂ひろいくらいでしょ?倍率が高いらしくて。」

「・・・・・」

「毎月の家賃を支払わなければいけませんでしょ?働かないと、ですよね。お義母様とお約束しましたので。」

「・・・・・」

「丁度良かったですわ。アンネさん、私と一緒に働きませんか?」


お嬢さまの計画は、こう、だ。


教会は日曜日以外は無償で礼拝堂を貸してくれるらしい。

そこに、仕事に出掛けるご婦人方の子供を預かる。朝から夕方まで。子供たちのお昼ご飯は、教会での炊き出しを手伝い、なおかつ一食当たりの金額を決めて教会に支払う。まあ、それだけ聞くと、なかなかWINWIN。


「でも、そんなに子供が集まりますかね?」

「そうですね。それに、預かり賃を取るってことでしょう?金を払ってまで子供を預けますかね?」


私たちはお嬢さまよりは、世の中のことを知っているはず。


「それがね、」

黙ってにこやかに聞いていた神父さんが、

「何人かのお母さんは子供をおぶって仕事に行っているんだけど、昨年の夏は早くから暑くてね。幼い子が一人ひどい暑気あたりで亡くなってしまってね。」

「・・・・・」

「かといって、一人で家に置くわけにもいかず、知り合いを頼るにも忙しい時季は一緒だからね。おばあちゃんたちは走り出す子供についていけないし。」

「・・・・なるほど。」

「こちらの、マルさんの提案に賛同したいところなんですがね、みなさん、そんなに裕福でもないでしょう?一日当たりの金額がね…」


・・・・なるほど。






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