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小説

時戻りのカロリーネ ~最悪のボタンの掛け違いだけは、もう起こしたくない女性の決意~

作者: 重原水鳥

 最悪のボタンの掛け違いをなんとかしようと決意する女性の話。

 あらすじにもあります通り、決意したところで終わります。


 思いついて設定も詰めていたものの、書いていくとしんどいターンが長すぎて放置していた小説です。

 一つボタンを掛け違えたら、すべてがただしくボタンを掛けられなくなるよな、というお話。

 自分が良い人生を送ったのか。

 それとも悪い人生を送ったのか。

 カロリーネには分からなかった。


 若い頃はさておき、いままさに天の国に渡ろうとしている身としては、さほど不幸であったとは思わなかった。……周りからは終始不幸と思われていたようだったが。


(むしろ私の存在ゆえに、周囲()不幸になったように思うわ)


 辺境伯の令嬢として十六年。


 王妃として二十九年。


 夫――と言ってよいのか分からない国王に先立たれ、追いかけるように国王の最愛であった側妃まで先立ってしまい、まだ若い新たな国王を支えながら王太后として三十五年。


 こうして振り返れば、随分と色々な事があったものだとカロリーネは思った。


 横になっている寝台の脇には、立派になった国王がいる。もう彼も六十となり、妻も迎え子も孫もいる。

 不思議なもので、顔立ちこそは実父である先王に似ているのに、どこか雰囲気は亡くなった先王の兄に――カロリーネの、かつての婚約者に、似ていた。


「王太后」


 低い声が、カロリーネを呼ぶ。

 ついぞ母上と己を呼ばなかった国王を見上げながら、カロリーネの心は酷く凪いでいて、けれど同時に、どこかホッと明るさすら灯っていた。

 じわじわと枯れ切った体に力が灯ってくる気すらした。


 そして彼女は、人生最後の言葉を吐いた。


「わるくなかったわね」


 そうして王太后カロリーネは眠りについた。彼女の最期の言葉を聞いた国王は、理解できないとばかりにずっと、王太后の傍を離れなかったが、死したカロリーネはそのような事は何も知らなかった――。





 ◆





 カロリーネは死んだはずであった。


 ところが目を覚ませば、辺境伯領にある実家の、自室の天井の装飾を見上げて寝ているのである。

 思考は朦朧とし、息苦しさであえぐ。


(熱だな)


 とかき集めた冷静さでカロリーネは判断する。


 だるさに逆らい手を視界にいれると、酷く小さい手があった。けれどそこに、枯れ木のような皺などはありはしない。


(これが現実ならば、まるで時戻りのナナね)


 国に伝わっている童話を思い出す。


 他人にいじわるされて死んでしまったナナが、何故も過去に戻り、何度も失敗しながら、次第に幸せに近づき、最終的にはとても幸福になるというものだった。


 特に好きでもなければ嫌いでもない童話だが、有名であるのでつい思い出した。


 そんな所まで考えた所で、カロリーネの意識は落ちた。





 ◆





 カロリーネが意識を取り戻しても、彼女の体は小さかった。

 あれこれと確認をし、世話をしに来た侍女がずっと昔に寿命で亡くなった辺境伯領から出た事がないはずの侍女だと理解したカロリーネは、時が遡っている事を知った。


(まさか本当に、私は時戻りのナナのように……?)


 これが時戻りのナナ(おとぎばなし)と同じ状況だとすれば、これから何度も死んで、何度も同じ時間を繰り返すのだ。

 流石のカロリーネも、何回も人生を繰り返したくはない。

 となれば、流石にそのまま放置して同じ事を享受する訳にはいかない。


 一度目の人生では、カロリーネは王太子オスヴァルトと婚約者であった。


 二人が婚約関係になった切っ掛けは、国王である。

 なのでまずはカロリーネたちの父世代の話に目を向けなければいけない。





 ◆





 オスヴァルトの父である国王は、若かりし頃辺境伯の令嬢と婚約関係にあった。

 この令嬢というのはカロリーネの父の姉の事で、伯母にあたる。

 完全な政略結婚で、元はと言えば隣国に接し、王家すらしのぎかねない力を持ち始めた辺境伯家を囲うために組まれた婚約だった。


 それでも国王と伯母は、当初、良好な関係であったそうだが、国王があるパーティで一人の伯爵令嬢と恋に落ちてしまったせいで予定が狂いだす。


 国王は心から伯爵令嬢を愛してしまい、結果として伯母との婚約は解消された。

 それに傷付いた伯母はその後、従者と共に駆け落ち同然に国を出ていった、らしい。


 その後伯爵令嬢は努力を重ね、周りから見ても問題のない王妃となった。

 国王も王妃も素晴らしく、なんの問題もない。


 ――訳ではなかった。


 何せ繋がりを強める予定だった辺境伯との関係は、むしろ冷めきってしまっていた。

 原因は、実姉をこれでもかと慕っていたカロリーネの父である。


 カロリーネの父は、伯母(あね)が居なくなった原因は国王と王妃だと決め(実際、切っ掛けであるのは間違いない)二人のことを恨んですらいた。

 そんなカロリーネの父に対して謝り続け誠意を見せ続けた結果、カロリーネの父から辺境伯家と王家が再び良好な関係になるために、一つの条件が出された。


 それが()()()()()()()()()()()()()というものだ。


 国王と王妃は承諾。そしてその場で、二つ年上であったオスヴァルトとの婚約が決定したのだ。

 こうして、幼くして、カロリーネは次の王妃である事が決定された。


 そのような経緯で婚約者となったオスヴァルトとカロリーネだが、それでも良好な関係を築けていただろう。

 当初は。


 ――結局、オスヴァルトは国王(ちちおや)と似た事を、国王(ちちおや)よりも酷い形で行った。


 カロリーネの知らぬ所で親しくなっていた男爵令嬢を王妃にするために、カロリーネに存在しない罪を被せて断罪しようとしたのである。

 国王(かれのちちおや)王妃(かれのははおや)ですら、そこまでの酷い事はしなかったわけだが、息子は、遥か上を行く非道な行為を行ってしまったのだ。


 唯一幸いであったのは彼のたくらみは国王や王妃や弟であったマテーウスをはじめとした人々の活躍もあり阻まれた事だ。

 辺境伯(カロリーネのちち)の怒りを恐れた彼らは、オスヴァルトを逆に国家反逆罪として即座に処刑した。


 …………まあ、国王陛下の決定に異を唱えて逆の道へ行こうとしたのなら、不敬であることには変わりない。どちらにせよ、オスヴァルトが生き残る道はなかっただろう。ちなみに男爵令嬢も一緒のタイミングで処刑された。


 それで終われば良かったのだが、事は終わらなかった。


 オスヴァルトがいなくなっても、国王や王妃と、カロリーネの父である辺境伯が交わした約束は変わらない。


 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 オスヴァルト亡き後、王太子として立ったのは弟のマテーウスであり、辺境伯家との契約に基づき、カロリーネはマテーウスの妻となることが決定した。

 マテーウスには、婚約者がいるのに。


 そう、マテーウスには婚約者がいた。

 カロリーネも良く知る侯爵家の令嬢のマリアンヌだった。

 カロリーネから見てもマテーウスとマリアンヌは愛し合っていて、お似合いの二人だった。


 カロリーネは望んだ訳でもないのに、二人を引き裂いた。


 だが二人の思いはそれぐらいでは消えなかったのだろう。マテーウスは即位し、正式にカロリーネと夫婦になった後に、マリアンヌを側妃として召し上げた。

 一般的に側妃は王妃が子供を産めなかった時に召し上げるものであり、結婚直後に召し上げるものではない。

 しかしカロリーネは気にしなかった。

 元はと言えば、二人が国王と王妃になるはずであったのに、カロリーネの父が原因とはいえ、カロリーネはその邪魔をしているのだから。


 そんなカロリーネを、マテーウスは抱いた。彼が浮気性の男だったからではない。これまた、カロリーネの父のせいであった。


 カロリーネを王妃にした事で満足したはずの父は、マテーウスが早々にマリアンヌを側妃として召し上げた事にお怒りだったのだ。形だけカロリーネを王妃にして、マリアンヌの子供を次期王妃にする心づもりではないか――そう疑った、国内でも強い力を持つ辺境伯と敵対しないためにも、マテーウスはカロリーネに王子を産ませなければならなかった。


 そうしてカロリーネを抱く裏で、マリアンヌの事も抱いていたのをカロリーネは知っている。

 望まずとも王宮の侍女たちは情報を仕入れ、カロリーネの耳元で囁くのである。

 嫉妬でもするかと思われていたのかもしれないが、カロリーネ自身は申し訳なさこそ感じたものの、嫉妬などしなかった。


(私がいなければ)


 そう、何度も思った。


 時が過ぎ。


 同じ時期にカロリーネとマリアンヌは子を孕んだ。


 流石に不味いとカロリーネは思い、マリアンヌに万が一がないように手を回しまくった。

 これでカロリーネの産んだ子が女児で、マリアンヌが産んだ子が男児であったならば、最悪子供を取り換える覚悟すらした。

 そうでなければ、マリアンヌの命も、その子供の命も、危うかったからだ。


 そうしたカロリーネの手回しのお蔭で、カロリーネもマリアンヌも無事に臨月を迎えた。


 カロリーネは医者の予想よりも遅く、マリアンヌは医者の予想よりも早く、何の因果か、同じ日に二人とも男児を産み落とした。



 しかし運命は、丸くは収まらなかったのである。



 マリアンヌの産んだ子は、一夜を明かすこともなく、天の国へと渡ってしまった。

 マリアンヌの胸からは子供を生かし育てるための乳が溢れているというのに、冷たくなった子供はただの一度も母親の乳房を咥えることもなく、動かなくなってしまった。


 一方で元気の良すぎる子を無事産み落としたカロリーネだったけれど、その乳房にいくら子供が吸い付いても、乳が出なかった。

 医師は体質だといい、乳母に頼るしかないといった。



 ――同じ日に、二人の女が子を産んで。


 一人は、子供を失って。

 けれど子供のための乳が出て。


 一人は子供はいるけれど。

 子供のための乳が出ない。



 その事実を知ったマテーウスは、カロリーネの子供を、マリアンヌのもとへと運んだ。


 マテーウスとマリアンヌの悲恋を憐れんでいた城の女性たちですら、「いくらなんでもと」マテーウスを非難したが、カロリーネは何も言わなかった。

 子供を取り上げられた時にマテーウスから詳しい説明があった訳ではないけれど、我が子を失ったマリアンヌの憔悴が酷いものであるということは聞いていたからだ。


(私が生んだ子が切っ掛けで、マリアンヌ様が元気になるのならば……)


 自分のもとにいたところで、カロリーネはあの子に乳を与えられない。

 事前に用意されていた二人の乳母は、どちらも、マリアンヌのもとに移動した。


 ……カロリーネの願いが届いたのか、マリアンヌは次第に元気を取り戻したそうだ。

 そしてカロリーネの子供は、そのままマリアンヌを乳母として育てられる事になった。


 その子供――ローベルトはマリアンヌの手によって立派に育てられ、マテーウスがある日突然倒れて亡くなった後、若いながらも立派の国王の立場に立つ事になるが、この時はそのような事は誰も知らない。



 ……子を出産して以降、カロリーネは王宮で以前より、生きやすくなった。

 王妃だったカロリーネの筆頭侍女は、元はマテーウスとマリアンヌの悲恋を応援している人間であった。しかし、そんな彼女も、カロリーネから子供を取り上げて王妃としての仕事だけをさせる二人は、いくらなんでも酷いと言い、カロリーネに同情的になったのだ。筆頭侍女が自分に反発していた頃より、寄り添ってくれる頃の方が生きやすいのは、当然の事である。


(けれど、もともと、あの二人に割り込んだのは私だわ)


 今の現状の原因をたどるなら、それはオスヴァルトが婚約を破棄したせいだ。

 そんな結果に至った大本の原因を遡れば、それはカロリーネの父のせいだ。

 更に、カロリーネの父にそんな事をさせているのは、更に遡れば先代国王や先代王妃やカロリーネの伯母であった。


 マテーウスとマリアンヌは被害者だ。

 少なくともカロリーネはそう思っていたし、マテーウスを愛してもいなかったので、余計にマリアンヌに申し訳なく感じていた。


 ――そう、愛していなかった。

 カロリーネはマテーウスを一人の男性としては、ついぞ、彼が亡くなっても、愛していなかった。

 国王としては敬愛していたが、カロリーネの中のマテーウスは、永遠に、婚約者の弟だった人で、友人だったマリアンヌの愛する人だった。


(どうせ立場だけの王妃になるのなら、マテーウス様よりもオスヴァルト様が良かったわ)


 マテーウスの態度に不満があるというよりも、単純に、好みか、相性の問題だろう。


 オスヴァルトはカロリーネを裏切り、その上嘘の罪を着せて人としての尊厳まで奪おうとしてきた。


 けれどこうして月日がたつと、マテーウスの王妃となってマリアンヌが側妃として召し上げられるぐらいなら、オスヴァルトの王妃になって彼が側妃を召し上げて側妃との間に出来た子を次期王太子として育てる手伝いでもするほうが、よっぽど良かったと……カロリーネはそう思うのだった。


 もしかすれば、現実逃避からそう思っただけかもしれないが、どちらにせよ、どれもこれも最早起きない。

 オスヴァルトは死に、カロリーネは男女の愛などないままにマテーウスの子供を産んで、その子供はマリアンヌを実の母として慕って育ったのだから――。





 ◆





 かつてを一通り振り返ったカロリーネは、いずれ訪れる未来を回避する方法を考える。

 つまり、どうすればマテーウスが次期国王になり、カロリーネと結婚するような事態を招かないか、という事である。


(マテーウス様が国王になるなんてアクシデントさえなければ、あの方はマリアンヌ嬢と結婚して、幸せな家庭を築いていたでしょう)


 自分が生まれるよりも前の、先代国王――今は現役の国王だが――たちのいざこざは、どうしようもない。

 今から自分が変えられるのは、目の前の状況だけである。

 それを変えるために、自分は動かなくてはならない。


(一度目の時は……何もかも諦めていたわ)


 オスヴァルトと上手くやれなかった事も。

 父のせいで愛し合う二人を裂いた悪女と言われた事も。


(不幸ではなかったけれど、私は、もう少し明るい生き方を求めてもよかったのかもしれない)


 これから先の未来は、どうとでも出来る。出来る、はずだ。


(……とりあえず。私とオスヴァルト様の婚約をなかった事には出来ないでしょう)


 それならば、オスヴァルトがカロリーネとの婚約を破棄しなければ良いのだ。


 婚約を破棄しないのならば、側妃の一人や二人、国庫に異常を出さないのならばいくら囲おうとどうでもよい。

 重要なのは、彼が無理矢理カロリーネとの婚約を破棄しようとする事によって起きた、その後の事態を防ぐ事だ。


 どうすればオスヴァルトがカロリーネとの婚約を破棄しないか。


(男女の愛に夢を見なければ良いのでは?)


 カロリーネに冤罪を押し付けたとき。オスヴァルトは、愛するティナとの間にある感情を、真実の愛と言った。


(オスヴァルト様は確かに、ティナ嬢に真実の愛というものを注いだのでしょう。……ティナ嬢は、それを返しませんでしたが)


 返されなくとも気にしないのが真実の愛なのか。

 それとも互いに思い合わなければ真実の愛ではないのか。


 真実の愛についての問答はさておき、あの時のオスヴァルトが若いからこそ持つ情熱と勢いで突っ走っていたのは、誰にも否定できないと思う。


 ならば、オスヴァルトが情熱に突っ走る前に、前例として情熱で突っ走った結果の惨状を見せればよいのでは? とカロリーネは考えた。

 オスヴァルトほど大掛かりで重要な立場の人間で、あれほどの失態をする事はそうそうないだろう。

 だがもっと大きな目で見れば、男女の情愛が絡んだいざこざは、掃いて捨てるほどある。それをうまく使えば、オスヴァルトが女性に妙な期待をすることもないのではないか。


(オスヴァルト様は明らかな失態を犯すほど愚かではなかったわ。……おそらく)


 オスヴァルトが婚約破棄をやらかすまで、彼は幸福であっただろう。


 両親の仲は良好で、兄弟仲も良好で、だからこそ険悪な夫婦のイメージなどなかったかもしれない。


 国王と王妃が互いに互いを支え合う素晴らしい関係性であったがために、無意識に自分もそうなるのだと決めつけていた。

 そうして考えたときに、お互い押し付けられた婚約で、基本的に受け身で口数も少なず、心を開かなかったように見えたカロリーネを嫌がった。


(私も……人より、感情が動かない人間である事は、分かっているわ)


 オスヴァルトはきっと、もっと、はっきり知りたかったのだ。カロリーネの感情を。


(あの時の私は、男性はみな、お父様のような人だと思っていた)


 こちらの意見など求めておらず、自分の意見にただ大人しく従っていればいい。そういう態度をするのが男だと、カロリーネは思っていた。

 王太子オスヴァルトの婚約者として、そうではない男性にも会ったのに、結婚や家族のイメージから、カロリーネは、オスヴァルトも父である辺境伯のようになるのだと勝手に決めつけていた。


 それがきっと、オスヴァルトは嫌だった。


 ――まあ、あの時のオスヴァルトの心境などカロリーネには分からないので、全ては妄想でしかない。


(オスヴァルト様との関係はまた考えるとして――ともかく、婚約が破棄されなければよいのだわ)


 カロリーネとの婚約を破棄せず、愛する女性を側妃や妾として召し上げる。そんな判断が出来る冷静さを、十七歳までにオスヴァルトが持ってくれさえすれば、万事解決問題なし。

 そして巻き込まれ被害者であったマテーウスやマリアンヌも、幸せになる。


(よし。そうしましょう)


 一度死んだせいか、酷く心が軽かった。

 あれほどずっと、陰鬱としたような、けれど静かすぎて凪いだような心地で生きてきたが……。


(死んだときに感じた、あの、静かな森に差し込んだ日の光のような感情……あれがきっと幸せなのよ)


 それを今度は死の間際ではなく、生きている間に感じたい。


 ……という訳なので、カロリーネはオスヴァルトが若さゆえの、けれど取り返しのつかない決定的な間違いをしないよう、フォローしていくことを決意した。

◆カロリーネ Caroline

 辺境伯の令嬢。王太子オスヴァルトの婚約者。親世代のいざこざが原因で、王妃になる事が定められている。

 謎の時戻り現象によって二度目の人生を送る事になる。

 一度目の人生では真実の愛に目覚めたオスヴァルトから冤罪をかけられ婚約破棄される。オスヴァルトと真実の愛の相手が断罪されたのち、次期国王となったマテーウスと結婚し子供を作ったりしたが、その子供はマテーウスの最愛マリアンヌの元にいった。周りからはあまりの扱いで心が壊れているのではないかと思われていたが、マテーウスとマリアンヌの死後は淡々と自分が生んだ息子であるローベルトの後ろ盾として彼を支えた。恐らく一番親しくしていたのはローベルトの妻だった。

 正直マテーウスの結婚相手になって以降の方が愛憎が複雑でややこしかったので、結婚相手はどうせ愛人を抱えるのだし、それならオスヴァルトの方がいいなと思い、オスヴァルト矯正計画を立てる。


◆オスヴァルト Oswald

 第一王子で王太子。親世代のいざこざが原因でカロリーネと結婚する事が定められている。

 一度目の人生ではずっと能面のように表情が変わらず、感情の変化も無なカロリーネに引くと同時に気味悪さを感じて、ハキハキしている男爵令嬢と恋仲になる。そして恋に一途な血筋のため、男爵令嬢と結婚しようとし、次第に周囲の出来事全てが歪んで理解するようになって、カロリーネをとてつもない悪人と思い込むようになった。その結果冤罪をかけて婚約を破棄すると宣言し、速攻処刑された。死ぬまでずっと男爵令嬢を愛していた。相手から罵られても、彼女を愛していた。

 二度目の人生でカロリーネからあれこれ矯正をかけられる運命にある。


◆マテーウス Matthäus

 第二王子。

 兄オスヴァルトの失態のせいで次期国王の座が回ってきて、最愛の婚約者と引き離された。それまでは兄の婚約者であるカロリーネに悪感情は抱いたりしておらず、将来の義姉として友好関係を築いていたが、愛に一途であるがために愛する人間と引き離された事から精神がおかしくなり始める。その後マリアンヌを愛しているのにカロリーネを抱かなくてはならなくなり、最終的に愛するマリアンヌが生んだ息子が命を落とし、それがきっかけでマリアンヌがおかしくなってしまった事で本人も完全におかしくなってしまった。マリアンヌに対してはおかしくなる以前の人間のような態度だが、それ以外のすべてに対して能面の感情のない人間の状態になって仕事をし生活している。当時のマテーウスとカロリーネが並ぶと能面が二人並んでおり、威圧感がすさまじかった。ある日唐突に限界が来て突如倒れて死んだ。


◆マリアンヌ Marianne

 侯爵令嬢。マテーウスの婚約者。

 オスヴァルトの失態までは、カロリーネと親しくしていた良き友人でもあった。ところがオスヴァルトが処刑され、マテーウスが次期国王になる事が決まり、婚約は解消。本来であればそこでマテーウスとの関係は終わるはずであったが、マテーウスからの強い希望もあり、側妃として上がる。本来であれば怒ってもよさそうな状況で、何も感じていなさそうであったカロリーネに恐怖を抱き、彼女との間には距離が出来る。普通の女性なので、愛するマテーウスがカロリーネを抱いている事に苦しみ続けていた。同時に、自分が側妃として召し上げられている事も間違いだったと後悔もしていた。そんな中愛する人の子を産んだが、その子供は一日も生きる事が出来なかった。そこで心が折れて泣きくれる日々を送る。ここで精神は正常ではなくなった。マテーウスが連れてきた赤子――のちのローベルト――を自分の生んだ子だと思い込んでずっと育てていたが、自分を支える柱であったマテーウスの死後急速に弱り後を追うように死んだ。


◆ティナ Tina

 一回目の人生の時のオスヴァルトの運命の相手。男爵令嬢。

 ただ豪勢な暮らしがしたかっただけなので、処刑されるなんて冗談じゃないとして速攻オスヴァルトを捨てて逃げようとしたが許されるはずもなく処刑された。恋に落ちたオスヴァルトの視野をゆがめる一端は担っていた。


◆ローベルト Robert

 一回目の人生の時にカロリーネとマテーウスの間に生まれた男児。

 マリアンヌを母として育てられたわけだが、父マテーウスの死後、実の母親は王妃カロリーネと知った。

 カロリーネとはついぞ母子として会話することが出来ぬまま、結婚し、子を成し、王としては一人前になった。そしてカロリーネは死んでしまい、公務以外ではまともな話をすることもないままに生母を失った。


◆エルンスト Ernst

 辺境伯。カロリーネの父親。超超超シスコン。


◆フリートヘルム Friedhelm

 国王。オスヴァルトとマテーウスの父親。

 元はといえば彼が婚約者であった辺境伯令嬢との関係を解消した事がすべての始まり――だが、しっかりと回りに根回しをし、当時の婚約者には秘密裡に何度も話し合いを重ね、十分な慰謝料も払って別れたので、オスヴァルトがした事に比べるとしっかりしている。

 オスヴァルトのやらかしのせいで子世代の関係が更に最悪になったとずっと後悔し続けた。


◆グレーテル Gretel

 王妃。オスヴァルトとマテーウスの母親。元伯爵令嬢。

 国王と結婚した経緯は略奪婚ぽいのでさておき、カロリーネは彼女を立派な王妃だと思っていたので特に悪感情はない。

 自分と夫が結ばれた結果、巡り巡って子供たちが苦しみ続けていて、酷く後悔した。


◆辺境伯の姉 / カロリーネの伯母

 国王フリートヘルムの婚約者だった元辺境伯令嬢。

 内内に打診のあった婚約解消は普通に受け入れた。ただその経緯を特に家族に相談していなかった。

 婚約解消後、周囲にあれこれ言われるのがいやで、慰謝料を持ってサクッと他国に移住した。その後、母国の惨状は特に知らず、幸せに生きて死んだ。



【一回目の年齢】


■婚約破棄時

カロリーネ15

オスヴァルト17

マテーウス・マリアンヌ14

ティナ15


■結婚

カロリーネ16

マテーウス・マリアンヌ15

オスヴァルト・ティナ(死)


■出産

カロリーネ20

マテーウス・マリアンヌ19

ローベルト0

マリアンヌの子(死)


■夫が先立つ

カロリーネ45

マテーウス・マリアンヌ44(のち死)

ローベルト25


■死

カロリーネ80

ローベルト60


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― 新着の感想 ―
やらかした人間の血縁含む関係者が、ノブレス・オブリージュの連帯責任で全員不幸になっているのが面白いし、一番の元凶を何とか意識改革する方向でのやり直しの話も面白そうだなと感じました。
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