第7話 魔王
第7話です!
「今度はこっちから行くぞ」
早速サイコが刀を振り、攻撃をしかけた。
『疾風スラッシュ』
「ほう、斬撃を飛ばすか。並大抵の奴なら防ぐことは困難だろう。だが……」
そう言ったサンモトは目にも止まらぬ速さで固く握り締めた拳を打ち出す。
『空亡』
パァン!
斬撃と拳圧が音を立ててぶつかり合い、相殺された。
「そんな技じゃワシは殺せんぞ」
「それなら直接ぶった斬ってやるよ!」
サイコはサンモトに急接近し、首を斬り落とそうとした。
カーン!
頭上からサイコへと、タライが落ちてきた。
「イテッ!何だよ!?」
「コレがワシの能力だ」
「タライ落としか?そんなパッとしない能力でよく魔王になんてなれたな」
「敵に能力を教える愚か者が何処にいる。だが、それだけでは無いとだけ言っておこう」
「あっそ!」
サイコは武器を機関銃に持ち替え、頭を狙って発砲した。同時に、サンモトも懐から武器を取り出す。驚くべきことに、サンモトが右手に持っていたのはピコピコハンマーだった。サイコの撃った銃弾がサンモトに迫る。
ピッコーン!
サンモトはピコハンで弾丸を打ち飛ばした。
「まだまだ!」
サイコは再び引き金を引くと、サンモトへ向けて機関銃を連射した。
(おもちゃごときでこの銃弾の雨を防ぎきれるわけがない!これでアイツはハチの巣だ!)
サイコは勝利を確信した。
ピコピコピコーン!
しかし、サンモトはピコハンを使い、すべての弾丸を弾き飛ばしながら、サイコに正面から迫ってくる。
(正面から来るか!?だが、どう来ようがピコハンを防げば問題ない。…………いや、これはフェイント!ピコハンを警戒させて、意識の向いていない頭上からタライ落としをするつもりだな)
サンモトがピコハンの届く範囲まで近づいたと同時にサイコは腕を振り上げ、タライを防ごうとした。
グシャ!
突然、サイコの視界が真っ白になった。
「タライ落としだけではないと言っただろう?」
サンモトはパイをサイコの顔面に投げつけると、勢いよくピコハンで殴りつけた。サイコは反射的に受け身を取り衝撃を最小限に抑え、すぐに立ち上がった。
「ヘッ!楽しくなってきた!」
顔をについたクリームを拭い取ったサイコが、ニヤリと笑みを浮かべた。
「その楽しさもすぐに苦しみに変わるだろうよ」
それに呼応するかのようにサンモトも笑みを浮かべる。
かくして、大天使と魔王の戦いは第二ラウンドを迎える。
サイコは機関銃による銃撃を再開した。
「阿呆が」
サンモトがピコハンを振り回して弾丸を弾き飛ばし、サイコに接近する。距離が詰められたところでサイコは銃撃をやめ、ナイフを取り出した。そして、サンモトの懐に入り込み、ナイフを突き立てる。サンモトは左手でナイフを防ぎ、右手に持ったピコハンで反撃しようとしたが、サイコがナイフを当てて軌道をそらす。そのままピコハンをたたき落とし、素早く蹴り飛ばした。
「ッ!」
シュバババ
サイコが攻撃を畳みかける。武器を失ったサンモトは徒手空拳での戦いに切り替えた。高速でナイフを突き続けるサイコと隙を見て反撃を狙うサンモト。両者の強さは互角。一進一退の攻防が続いた。しかし、一瞬サイコの動きが僅かに乱れた。当然、サンモトがその隙を見逃すわけもなく、すぐさま拳が突き出される。
「やっぱしそうくるよなぁ!」
サイコは迫りくる拳を躱し、サンモトの脇腹にナイフ突き刺した。
「ぐふっ!」
サンモトの脇腹が赤く染まっていく。サイコは刺したナイフを引き抜くと、追い討ちをかけようとする。しかし、ナイフの先端が再びサンモトに当たろうとした時、サイコの足は地面に沈んだ。サイコの足元には足首まで入る程度の小さい落とし穴があったのだ。
強者同士の戦いでは一瞬の隙が命取りになる。当然、それはサイコも同様である。
ドゴーン!
サンモトの拳が勢いよくサイコの腹部に打ち込まれた。勢いよく殴り飛ばされ、壁に激突したサイコは口から血を吐き出しながらも立ち上がる。
「狡いマネしやがるじゃねぇか。本気で相手してやるよ」
サイコはサンモトを睨みつけた。
(凄まじい殺気!何をするつもりだ!?)
サンモトは本気になったサイコに警戒し、身構える。
「心配せずともすぐに終わらせてやるよ」
そう言うと、サイコは右手を伸ばし、天にかざす。
『デストロイ時雨』
サイコの必殺技が魔王サンモトへと繰り出される。
『デストロイ時雨』!!!