第5話 サイコの能力
第5話!
足に水がまとわりつき、攻撃を躱すことができなくなったにも関わらず、サイコは不敵な笑みを浮かべていた。
「何や?わろてるぞコイツ……」
トニトはピアスに電気を溜めながらサイコの様子に違和感を覚える。
その時、既にサイコの能力は発動していた。
大天使サイコエルの能力は『救恤』。この世界を亜空間と接続し、物質の移動を可能にする能力である。
能力を発動したサイコの手にはモーニングスターが握られていた。トニトが違和感の原因に気づいた時にはもう手遅れだった。
「これなら一歩も動かねえで皆殺しにできるぜ!」
『黎明コメット』
サイコはその場から足を離さず、モーニングスターを振り回し始めた。
「まさか、能力を使えたのですか!?」
トゲのついた鉄球が防御を貫き、ウェントを打ち飛ばす。
『通電殻』
トニトが電気を溜めたピアスを発射する。しかし、サイコは鉄球をピアスにぶつけて攻撃を防いだ。
バチィ!
「電気は防げんで!」
「残念!対策済みだ!」
鉄球から、鎖を辿りサイコの手に向かって電気が流れていく。しかし、サイコに電撃が通ることはなった。
「ゴム手袋やと!?」
サイコはモーニングスターと同時にゴム手袋を取り出していたのである。
ゴッ!
「あと1人」
鉄球が命中し、トニトはボタボタと血を流して倒れた。
「ウェント!トニト!」
アクアが2人に呼びかけるが反応はなかった。
ギュン!
(クソッ!能力が使えたのか!それに2人ともやられてしまった。もう勝ち目はない!早く逃げなければ殺される!)
サイコの猛攻をギリギリで避けながら、撤退することを決めた。
『誤理霧中』
空気中の水分や、水たまり水が霧に変化し、サイコの視界を遮る。
「どこだ?どこにいやがる!?」
サイコはアクアに当てようと、むやみにモーニングスターを振り回していたが、命中することはなかった。そして、霧が晴れると、アクアは既にこの場を去っており、灰のようにして消えかけていく二人の屍だけが残されていた。
「チッ!逃げられたか!」
サイコはモーニングスターをしまい、家に帰ることにした。
家に着き、スマホを開くと、『リンネ』の通知が3桁になっていた。サイコは『リンネ』の通知を切り、ソファで昼寝を始めた。
ピンポーン♪
玄関のチャイムの音で目を覚ましたサイコが扉を開けると、配達員が箱を持って立っていた。
「お届けものです!」
サイコが配達物を受け取った。
ドーン!
突然、サイコの受け取った箱が爆発した。サイコはとっさに箱から手を離し、距離を取った。音や煙とともに、置いてあった靴が吹き飛ばされ、壁も真っ黒に焦げてしまった。配達員の方を見ると煙の向こうに狐のような耳と複数の尻尾をもった女の姿があった。
「さすがは大天使。少しは丈夫なようじゃのう」
女は長い尻尾を使い、サイコを突き刺そうとした。サイコはこれを避け、反撃をしたが、複数の尻尾によって防がれてしまった。サイコは『救恤』を発動し、バールを取り出すと、女を殴り飛ばした。
ドサッ
女が倒れた。
「まさか、配達員に変装してくるとはな……。まぁ、弱者がどんな手段を使っても私には勝てないがな!」
「アンタ何やってんの!?」
サイコが敵を倒し、満足しているところに音夢が帰ってきた。
『黎明コメット』!!!