第2話 サイコエル降臨 後編
後編です!
音夢はしばらく呆然としていたが、ふと我に返り、急いで帰ろうと歩き出した。
ザッパーン!
「待て!」
噴水から何かが勢いよく飛び出す音とともに少女の声がした。音夢が振り向くと、噴水の中にさっきまで火だるまになっていた少女が立っていた。どうやら噴水に潜って火を消していたようだ。少女は音夢に近づくと、口を開いた。
「おい人間、私をお前の家に泊めろ」
少女の発言に音夢は困惑した。その反応を見た少女は音夢のように、再び話し始めた。
「ああ、そうだな。自己紹介を忘れていた。私は最強の天使、サイコエル!3日前に天界を追放され、人間界に来て生活の拠点を探していたところだったが、今見つけたところだ」
火だるまになっていた少女、サイコは既に音夢の家に泊まることが決まったかのように話を進めた。
「無理」
「私に逆らうというのか?!」
「あなたみたいな変な人を家に入れるなんてできるわけないでしょ」
「誰が変態だ!最強の天使だと言っただろ?!」
「そもそも黒髪で天使の輪もないのにどこが天使なの?」
「天使の輪は追放された時に没収されたんだよ!髪の色は生まれつきだ!」
「とにかく知らない人を泊めるなんてできません!」
音夢は自称天使の視線を感じるが気にせずに走り去っていった。こういう時は逃げるが勝ちなのだ。
家に着いた音夢はすぐに鍵をかけ、靴を脱ぎ、鍵がかかっていることをしっかり確認してから、汗を流すために浴室に行った。シャワーを浴びながら、音夢は公園での出来事を思い出す。
(あの自称天使は何者だったの?っていうか殺人なのでは!?……いやいや、そんなこと考えても意味ない。だって二度とアイツに会うことはないんだから、きれいさっぱり流して忘れよう)
風呂を出て髪を乾かした音夢がリビングに行くと、そこには自称天使がソファでくつろぐ姿があった。
「なんでここにいるんだよ!」
音夢の声が家中に響き渡った。
ーーー魔界
3人の悪魔が円卓に集まっていた。
「イグニスがまだ来とらんけど、また遅刻か?」
ピアスや指輪などを大量に着けた女、雷のトニトが円卓を指でトントンと叩きながら言った。
「炎のイグニスは殺された。今回集まったのもこの件について話すためだ」
長く伸びた青髪の男、水のアクアがイグニスの死を伝えた。トニトは驚きのあまり、席から立ち上がった。
「なんやて!あれでもアイツは上級悪魔四天王で2番目に強い男やで!敵はどんだけ強いねん!」
「どうやらイグニスさんを殺したのは大天使の1人、サイコエルのようですよ」
トニトの言葉に冷静に返したのは、四角縁のメガネをかけた男、風のウェントだった。
「ウェント。サイコエルと戦った場合の勝率を出してくれ」
「既に算出しています。私がサイコエルと戦闘した場合、勝率は3%です」
「なんやて?!」
「俺とトニトの勝率はどうだ?」
「はい。アクアさんは7%、トニトさんは4%ですね。ちなみにイグニスさんは6%でした」
ウェントの発言にトニトは再び驚いた。
「嘘やろ。計算ミスとちゃうか?」
「残念ながら間違いありません」
「そんなん勝てるわけ無いやろ!」
「落ち着けトニト。奴は堕天したことによって能力を失っているようだ。イグニスとの戦闘で能力を使っていないのが良い証拠。それなら俺達3人で行けば奴を倒せると思わないか?」
「なるほど。……サイコエルが能力を使えないと仮定して、私達3人で戦った場合、勝率は31%になりますね」
「作戦次第では奴に勝てなくもないだろう」
かくして、3人の悪魔はサイコエルを倒すための作戦会議を始めたのだった。
トニトは西魔界弁なので、関西弁とは少し違うかもしれません……




