表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/37

第7話 スキルについて

「今のって向井くんがやったん! なんでそんなことできるん? ウチにも向井くんみたいなことできるんかな」

「……え」


 今の今まで泣きじゃくっていたのが嘘のように、本間はパッと瞳を輝かせながら問うてきた。俺もいのりも彼女の変わり身の早さに唖然としてしまった。


「えー……と、本間さんも攻撃系のスキルを習得しなかった? ちなみに俺の職業は【術士】の【黒魔術】。今のはスキル【水魔法】による攻撃かな。発動の仕方はそんなに難しくなくて、イメージすれば可能だと思う」

「ウチは【剣士】の【盗賊】ってのを選んでるよ。習得したスキルはさっきも言ったけど【恐怖耐性】と【電光石火】。せやけど、恐怖耐性はアカンね。今は大丈夫みたいやけど、さっきはめっちゃ怖かったもん。効き目にむらがあるんかも」


 いくらパシッブスキルとはいえ、完全に恐怖心を取り除くことはできないんじゃないのかと、俺は自分の考えを口にした。

 いのりも本間も納得した様子だった。


「せやけど、電光石火ってどんなイメージすればええの?」


 言われてみれば、それは確かにイメージし難いな。

 異世界ではイメージ、もしくは強く唱えたりすることで技を発動できた。試しに唱えてみることを提案するが……。


「なんも起きひんよ?」

「いのりはどうだ?」

「あたしもダメみたい」

「そう言えばいのりはどんな職業を選んだんだ? 攻撃系のスキルは【チャージショット】だったよな?」

「うん。あたしは【戦士】の【狩人】だよ」

「狩人……か」


 彼女らしいと言えば彼女らしい職業だ。

 俺は二人にステータスを見せてほしいとお願いし、二つのステータスを見比べた。



 スドウイノリ

 Level:1

 HP:13/13

 MP:5/5

 腕力:9

 耐久:9

 俊敏:8

 魔力:2

 知識:3

  S P:0

  J P:0


 職業:戦士

 スキル:恐怖耐性/チャージショット



 ホンマカンナ

 Level:1

 HP:11/11

 MP:4/4

 腕力:12

 耐久:10

 俊敏:7

 魔力:1

 知識:3

  S P:0

  J P:0


 職業:剣士

 スキル:恐怖耐性/電光石火



 HP値や俊敏値の初期ステータスは戦士職のほうが高いようだが、腕力値や耐久値は剣士職のほうが高いみたいだ。

 俺は試しにいのりのステータス、【チャージショット】をタップしてみる。


 すると、ページが切り替わった。


【チャージショット】

 弓を使ったスキル、攻撃力が2倍になる。石などを投擲する際にも応用可。


「弓を持ってなかったから発動しなかったってこと?」

「というよりかは、投擲できるものをいのりが持っていなかったから、チャージできなかったってことなんじゃないか?」

「そういうことか!」

「ほな、ウチのこれは?」


 いのりのステータス画面から、本間の画面に視線を移す。


【電光石火】

 対象を認識後、高速での移動を可能とする。(※対象との距離が五メートル以内であることが条件)


 なるほどなと俺は頷いた。


「そこを動かないでくれるか?」

「ようわからんけど、ええよ」


 俺は本間から距離を取り、彼女に俺のところまで走るようなイメージをするように指示を出した。すると、本間の全身から青い稲光がパチパチと迸り、一瞬のうちに俺との距離を詰めていた。


「な、なんや今のっ!? 身体が勝手に向井くんのところまで走り出したよ!」

「それがスキル【電光石火】のようだな」

「でも、なんかちょっとくらくらするわ」


 額に手を当てた本間に「それはたぶん」と言いかけた瞬間、凄まじい程の衝撃音が轟いた。


「「――――!?」」


 突然の破壊音にびっくりして音の方に顔を向けると、壁に何かがめり込んでいた。

 消しゴム……?


「ご、ごめんなさい!」

「これ、いのりがやったのか?」

「試しにポケットに入っていた消しゴムにぎゅって力を込めたらね、消しゴムが薄っすら光はじめたの。あたし怖くなって壁に向かって投げちゃったの……」


 それでこうなったってわけか。まるでショットガンだな。

 チャージショットは想像以上の威力だった。無闇に発動すれば大惨事になりかねない。いのりにはできるだけ使わないように言っておこう。


「本間さん大丈夫?」

「うん……なんか頭がくらくらしてな。嫌やわ、こんな時に貧血かな?」


 壁に背を預ける形でもたれ掛かる本間に、「それは貧血じゃない」と告げる。


「貧血ちゃうって、なんでそんなこと向井くんにわかるん?」

「本間さん、もう一度ステータスを開いてくれるか?」

「別にええけど……」



 ホンマカンナ

 Level:1

 HP:11/11

 MP:1/4

 腕力:7

 耐久:10

 俊敏:7

 魔力:1

 知識:3

  S P:0

  J P:0


 彼女のステータスを見た俺はやはりなと思った。


「ウチのステータスがどないかしたん?」


 訝しむように眉根を寄せる本間に、俺はMP値を確認するように言った。


「あれ、4から1になっとる」

「本間さんの電光石火は発動するたびにMP3を消費するようだな。今一回使ったから、MPが減って疲れているんだと思う」

「せやけど、それやったら須藤さんはなんで平気なん?」


 続いていのりのステータスを確認する。彼女のMP値は3/5と表示されていた。


 このことから、いのりの【チャージショット】はMP消費率が2だということがわかる。対する本間の【電光石火】のMP消費率は3。さらにいのりと本間のMP値にも僅かだが差がある。


 残りMPが1になってしまった本間が疲れを感じ、まだMPに余裕のあるいのりは疲れを感じないってわけだ。


「このくらくらはそういうことなんやね」

「もしMPがゼロになったらどうなるのかな?」

「ゲームとかやったらHPがゼロになった時点でゲームオーバー、つまり死亡ってことやから、MPも同じってこと?」

「いや、仮にMPがゼロになっても死にはしないと思うぞ。ただ――」


 異世界で魔力が枯渇すると気を失うことがあった。こちらの世界でも同じだと仮定すれば、かなり厄介だ。モンスターがあふれる世界で突然倒れでもしたら、それこそ命が幾つあっても足りない。


 それに現時点ではどのようにMPが回復するのかも不明だ。時間経過による回復か、あるいは休息や瞑想が必要なのか、いずれ調べる必要がある。


 俺は二人にMP管理だけは決して怠らないようにと忠告した。


「それより、吉野は大丈夫?」

「ん、なにがだ?」

「さっき【水魔法】だっけ? 使って助けてくれたから」

「……あぁ、うん。俺は問題ないよ。術士は他の職業より基本MP値が高いみたいなんだ」

「よかったぁ〜」


 安心して頬が緩むいのりを見て、俺も思わず口元が緩んだ。

 見た目は痩せてだいぶ変わったけど、自分のことより他人を思い遣るところは昔のままだった。


「それやったら、ウチも術士にすれば良かったかもな」


 唇を尖らせて不満げに愚痴る本間に、俺は他のステータスが嫌になるくらい低いことを伝えた。(元の俺のステータスが低いことも関係してるのだが)


「そんなに低いん?」

「多分だけど、本間さんやいのりなら耐えられる攻撃も、今の俺だと即死だと思う」

「え……」

「そんな……」


 目を見開いて絶句する二人に、そうならないためにここからは慎重に行動しようと言った。特に本間に向かって。


「せ、せやな……」

「吉野はあたしが守るからね!」


 胸の前で拳を握りしめ、真剣な眼差しを向けてくるいのりを見て、俺は何があっても彼女だけは守ると決めた。


「うん。俺もいのりを守るよ」

「―――っ!?」


 いのりは途端に耳まで真っ赤になって俯いてしまった。どうしたのだろう?


「ウチは熱すぎて上せそうやわ」

「……?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ