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【番外編】気づかぬ想い

※別途短編でシリーズとしてアップしていましたが、番外編として本編にまとめました。

「ここはお悩み相談所じゃないのよ?」


 相変わらず美しい、紫がかった黒髪を揺らしながら、ミシュレが溜息を吐いた。

 その足元ではリアが素知らぬ顔で大きな欠伸をした。


「リア、あなたまで酷くない!?」

「痴話喧嘩の愚痴を聞くほど暇じゃないにゃ」


 じとり、と半目で睨まれたローズがむっとしたようにリアを見返す。


「…痴話喧嘩なんかじゃないわよ」

「まぁ、いいわ。今度は何が原因なのよ」


 数か月前に正式に王太子ウィリアムの婚約者となったローズだったが、その翌日から早速王太子に振り回される事になった。


「最近国境付近に魔物が出没しているのはご存じだと思いますけど…」

「あぁ、そういえば騒がしいな、とは思っていたのよね。でもこの国には関係ないでしょう?」


 この国はミシュレの魔力と王家が持つダイヤモンドの結界のおかげで、外から攻撃される心配はない。


「えぇ、特に魔物によって被害が出たという報告はないんです。ただ、国境付近の住民から不安の声が上がってて…」


 そこまで聞いたミシュレとリアが「なるほど」という表情をした。その先はいつもの展開だというのが想像できたらしい。


「住民を安心させるために遠征に行けって言われたのね」

「そうなんです!あの人、私のこと自分の所属部隊の兵士とでも思ってるんじゃないかと!」


 別に恋人らしい甘い時間が欲しいなどとは思わないが、こうひっきりなしに地方に遠征させられるのは想定外だ。


「あら、嫌なの?」

「困っている住民を助けるのは嫌じゃないです。ただ…」

「一緒に行ってくれないのが不満ってわけ?」


 当然ながら王太子とその婚約者が一緒に頻繁に王都を不在にするわけにはいかない。それはローズもわかっている。


「違います!そ、そうよ!たまには自分で行けばいいんだわ」


 思ってもいない一言を呟いたローズにミシュレとリアが顔を見合わせる。


「ウィリアムもちゃんと言ってあげればいいのにねぇ」


 そう言ったミシュレの脳裏に先日別件で尋ねてきたウィリアムとの会話が甦る。




「相変わらずローズに無茶させてるのね?」

「できない相手にはやらせませんよ」


 それは自分の代わりに派遣するほど信頼しているということだ。

 ローズは知らない事だが、婚約後にローズが王国内のあちらこちらに遠征し、地方の問題を解決している事が知れ渡ると、その魔力の強さも相まって国内での評価が高まっているのだ。


「ローズが赴けば、ほとんどの事は解決する。それも最上の方法で、です」


 ローズは魔力にものを言わせた解決などはしない。当事者の立場に立って話をきき、その状況で最適な解決方法を見つけ出す。

 そんなローズの素直で人を思いやる事のできる性格が人々に『この人が将来の王妃になるなら』と希望を抱かせるのだ。

 そしてその評価は宮廷内においてもローズの評価を上げ、その身を護る事に繋がる。


「随分ローズを大切にしているのね。ちょっと意外だったわ」


 その言葉に「彼女だからですよ」と言って幸せそうな笑みを見せたウィリアムを思い出した。




「言うって何をですか?」


 唐突なミシュレの言葉にローズが首を傾げる。


「どれだけローズを大切にしているかって事をよ」


 話の流れと全く関係ないセリフにローズの頬が一気に赤く染まった。


「は、話が見えないんですけど…なんでそんな事…」


 あたふたするローズを楽しそうに見ていたミシュレだったが、ある気配を感じると「お迎えがきたようよ」と言った。

 その直後に扉をノックする音が聞こえると、ミシュレの返事を待たずに扉が開いた。


「返事くらい待ちなさいよ。仮にも私の屋敷よ?」


 からかうような口調にウィリアムは一応丁寧な礼で返す。


「突然の訪問をお詫びいたします。そして失礼ついでにローズを連れて帰っても?」

「ウィリアム様、どうしてここに…!」

「お前の逃げ込む先などお見通しだ。明日の朝は早いのだから、さっさと戻って準備をしろ」

「言われなくても出発に支障をきたすような真似はしません」


 つん、と横を向いて返答したローズの隣にウィリアムが座ると、慌てたようにローズが彼を見る。


「な、なんですか?」

「いや、出発に支障がないなら構わないが…」


 途中で言葉を区切ったウィリアムにローズが警戒したように若干身体を引くと、逆に引き寄せるようにウィリアムの腕がローズの腰を抱き寄せる。


「ひゃっ!」


 驚いたローズが両手を突っ張るようにしてウィリアムの胸を押し返すようにするが、そんな抵抗もむなしく上半身も抱き寄せられる。


「な、なによ…」

「いや、今回は久しぶりに一緒に出る事にした」

「え…?」


 思いがけない言葉にローズの動きが止まる。そんな二人の様子にミシュレが呆れた声を出す。


「いちゃつくなら王宮でやってちょうだい」

「まとめて転移させるにゃ?」


 リアがミシュレに伺うように言えば、ウィリアムが苦笑する。


「ミシュレ様、では今日はこれで失礼します」

「はいはい、しっかり捕まえておきなさいよ」

「言われずとも逃がすつもりはありませんよ」

「…不穏なセリフを吐かないで…」


 がっくり項垂れるローズにリアが同情の視線を向ける。


「ローズ、行くぞ」

「それではミシュレ様、今日はこれで失礼いたします。リア、またね」


 ミシュレはローズの挨拶に軽く手を振って応えると、二人が扉の向こうに消えたのと同時に小さく笑う。


「まったく…魔物がいる場所に一人で行かせるのは心配だ、って言えばいいのにねぇ」

「相変わらずローズは考えが単純なのにゃ」

「あら、最初の師匠は厳しいのね」


 そう言って笑ったミシュレの横で、リアは無言でしっぽを振るのだった。



End.

「戦う最強令嬢は自由を謳歌したい ~侯爵令嬢と王太子は最強のバディです~」の番外編です。

やっぱりこの話のキャラクターは書いてて楽しいです!

とりあえずローズ頑張って!(笑)


そして評価やブックマークしていただいた方々、ありがとうございます!

番外編も楽しんでいただけたら嬉しいです!

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