プロローグ
「危ない!」
危険を知らせる声が聞こえた瞬間、自分の中から溢れる光が一瞬にして周囲を埋めつくす。その直後、自らの光に押されるようにバランスを崩した自分を後ろから誰かが支えてくれた。
「大丈夫か?」
目の前では自分に向かって暴走してきていた馬車がぴたり、と動きを止めている。
「あ、ありがとう…ございます」
まだ状況の理解が追いつかず、不自然に動きを止めた馬車を見つめたまま動けない自分の肩を、支えてくれていた人物の手が落ち着かせるようにゆっくりと撫でる。
「よくやったな」
だが自分が何をやったのかすらわからず、不安と共にゆっくりと振り向くと、自分よりも少し高い背の少年が自分を見つめていた。
「…それにしてもあの暴走馬車を一瞬で止めるとはな。お前、相当な魔力を持っているな」
冷静に指摘された内容を理解するよりも先に、自分を呼ぶ声が聞こえた。
「ローズ!」
声の方を見れば、両親と兄が走ってくるのが見える。
「迎えが来たようだな」
そう言うと、ローズの肩をとんっ、と家族の方に向かうよう押し出すと、彼もその場を立ち去ってしまう。
「ローズ、大丈夫か?あれほど離れてはダメだと言っただろう?」
「…ごめんなさい」
「無事で良かったよ」
口々に自分の無事を喜ぶ家族を見ながらも、ローズは先ほどの少年に言われた言葉が気になっていた。
(魔力が多い…?)
そんな事を考えていたローズの耳に、父親の驚いた声が聞こえてきた。
「ローズ…まさかこれはお前がやったのかい…?」
そう言ってまだ止まったままの馬車と娘を見比べる父親に、ローズは曖昧に微笑んだのだった。
初連載です。強い女の子が好きです。
今回の話は既に最終回まで書き上げているので、毎日朝7時に更新予定です。
もし楽しんでくださる方がいれば、続編を書きたいなぁ、と思ってます♪
よろしくお願いします。