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第92話:最奥の部屋

 比叡山の最強護符(角大師)の燃えた灰から発生した紫の煙は周囲の思念波を励起させ早神令時がいた2028年の統合AIアルフ・ライラに思念波で繋がり支配下の暴走している幻影(ファントム)幻覺(ファルゥー)にシャットダウンプロセスが実行された。


2つの機体から発せられていた回転音が停止し、床に金属体が転がっている。あの、部屋全体を占拠していた量子コンピュータの成れの果てがこのコンパクトな体で移動手段をも獲得した姿であった。


「こいつら停止したようだな。このような機体のデザインは思いつかないな」


「ソウダネ」十三夜(つきみ)幻覺(ファルゥー)の頭部のアンテナ様の部分をつんつんしながら部屋に入った。先には3匹の蛍胞子が浮遊していた。


「なんですの、この者は。われわれ昆虫族の様でもないし、動物のような手足でもない。寒気がするわ」レアフルは翅を震わせた。


それに合わせて御香のように立ち込めている紫の煙はさらに周囲に拡散していった。


「また、これましたね。この部屋に」葵は以前、甲虫女王レアフルの父の黄金のスカラベにこの部屋で囚われの身になっていたことを思いだしていた。今は味方であるがやはり昆虫は苦手なようだ。


 地下7階にある部屋でその中でも最奥のこの研究室は、M9クラスの直下型地震にも耐えられる区画にある。耐震強化されたドアの厚さは30cmほどもある金属製であるが魔弾はその中央を打ち抜いて部屋の壁に立てかけられている鏡面仕上げの金属に突き刺さっていた。


 魔弾は本来は着弾時には爆発しその衝撃波によって蒸発するものである。それがこうやって残っているということは、爆発を止めた者がいるということだ。


 レアフルが金属鏡に突き刺さっている魔弾を前足の細いヒゲで触れると、魔弾は床に落ちしばらく激しく回転していた。突き刺さってはいなかったのである。


「この魔弾は……」俺が手にした魔弾は線条痕はあるものの無傷だった。


 この状況は非常にまずい。暴発を止めた者は敵ではない。最後の一発だと分かって保護したのだ。


 何の為に。


 敵もどこかにいる。


「マスター」


 すぐさま、弾倉に魔弾を再充てんした。


 頭の中でエコーのかかったような声に聞こえた。過去の統合AIアルフ・ライラの思念波と現在の同じ思念波を持つ存在からの呼びかけだった。


 金属の鏡の中心から光線が向かってくる。


 魔弾は発射できず、ダブルショットガンもろとも床に落ちた。


 早神令時の前に差し出されたレアフルの硬質の虹色の翅のガードすらその光線は撃ち抜いていた。


「令時さん」葵が早神令時に駆け寄り抱き上げた。心臓は避けられたが左肺は打ち抜かれている。


 左肺に血が溜り、呼吸が困難になって令時は意識が遠のいて行った。



--



 ここは、戻れたのか? いや何もない空間。黒でも白でも透明でもなく色が認識ができない。


 だめだ! 覚醒しなければ! 俺は紅のドラゴン。


--




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