第43話:医学研究科にて十六夜の幻影と
俺と十三夜は、京都先端科学大学の医学研究科に来ている。
血液検査だけでなく、MRI検査もするらしい。
採血はたった一滴である。造影剤を静脈に注射され、MRI装置に潜り込む、
過去に何回か撮ったことがあるので慣れたものだ。十三夜は大丈夫だろうか。
「動かないで下さいよ。あと5分で済みます」
ヘッドフォンからその言葉を聞いたのが最後だった。
そこで意識が薄れる……
「レイジ、レイジ」
「ここは? どうした十三夜、蜂妖精女王に変幻したりして」
ああ、ここは『迷いの森』か。また迷い込んだのか。夢か。
「ひさしぶりじゃの、第21代にてして令位守護者の早神令時」
目の前の翡翠ベンチに深草色のワンピースを着た少女が座っていた。
十六夜は微笑んでいるが、頬には涙がつたっていた。
『迷いの森』ではない、十六夜のいる未来世の1万964年だ!
起き上がろうとしたが起き上がれなった、実体がなかった。
「十六夜、無事でいるのか? あれから幾年経ってるのか?」
あいかわらず、全く動けない。自分の言葉が届いているのかさえわからない。
「わしは、こうして満月の次の日にこのベンチに座ってお主を待っておる。
心配しなくても大丈夫じゃ、こちらには、十五夜がおる」十六夜は十五夜に目をやりながら言った。
いつのまにか、十五夜も隣に座っていた。三姉妹揃ったわけだ。
それを見て安心できたのか、意識が途切れるような感覚に陥っていく。
「待て、待つのじゃ。こちらでは、黄金甲虫スカラベ王が居なくなり、各地の昆虫族が無秩序に暴走しておる。甲虫スカラベの子孫がお主の世界に時空位相されておる。
十三夜がそちらに時空位相した時に三匹の蛍胞子が付いて行ったはずだ、それを捕獲して特殊進化した甲虫スカラベの子孫を葬り去るように。本来はそのような進化が生まれるはずがなかった種だ。
十三夜、令時を頼んだぞ」
薄れいく意識のなかで、「必ず迎えに行くと」思念波を十六夜に送った。
「ああ、わかってるよ、いつもここで待ってるから」
「早神さん、お疲れ様です。終了しました」
「レイジ、レイジ」
意識が戻った。ドームから出て来たら、十三夜が覗き込んでいた。
隣の部屋が何か騒がしい。
「あれ、十三夜じゃないか。隣の部屋でMRI検査受けてたんじゃないのか?」
「気がついたら、ココニイタ。十六夜、十五夜に会えたよ」
ああ、十三夜は実体ごと未来世を往復したようだ。夢ではなかったようだな。
「十三夜さん、こんなところに。どうやって抜けだしたの。
突然、ドームから居なくなって大騒ぎですよ」と技術師が言った。
「検査結果が楽しみだな。時空位相の方法も見えてきたような気がする」





