第25話:クレナザイトと九条美香
クレナザイト製レンズを装着した集積疑似思念波カウンターは、上手く動作した。
九寨溝の北西に位置するサバクトビバッタ群体の先頭を確実に捕捉できていた。
これには、昆虫生態学者の九条慎太郎は大満足のようだ。なにしろこのクレナザイト製レンズがなければ、日本から数千kmの中国内陸部にやってきて特殊なサバクトビバッタを捕まえることができないとこらだったのだから。
今の特殊なサバクトビバッタは三代目であるが、前世代の時は群体はそれほど拡散せず中央に特殊なサバクトビバッタが陣取っていたが、中国内陸部に移動するにつれて群体の範囲はアメーバー状態に広がっており、中心がどこかすらわからなかった。
集積疑似思念波カウンターで調べると、アメーバー状態に広がった複数の触手群体の一つにあたりが付いた。一つの触手といってもその幅は10kmにも達する。
「このクレナザイトはすごいわね。鉱石にクレナザイトという名はそもそもありませんが、どのような鉱物ですの?」鉱物結晶学専門であり鉱石マニアの美香が言った。
集積疑似思念波カウンターもグレードアップして凄いが、それまでは探検家オタクとでもいうような、いで立ちであった九条美香であるが、色白のすっとした首に掛けたルビー色のクレナザイトのネックレスが深草色の探索専用ジャケットに映えていた。
男性陣のみならず女性陣も美香に釘付けである。本人は何も感じていないようだったが。
「ダイヤモンドより硬い鉱物はロンズデーライトで結晶構造は、ダイヤモンドに類似している。クレナザイトもその一種でジルコニウム、アルミニウム、チタンでスピネル構造型結晶を有しています。そこまでしか知りえておりません。残りの欠片で物性解析をお願いししたいところです」
クレナザイトを未来世で生成し教授してくれたのは、俺の師匠である漆黒の狼の十六夜だ。
思念波の研究を継続しているのは、十六夜に再び会うことだ。十三夜と同じく現世に連れてきたい。
あの最後の時、十三夜は俺と同じ時空間にいてかろうじで、別空間の「迷いの森」に飛ばされたが、連れてこられたが、十三夜はまだ未来世にいる。今頃どうしているか。十夜族の妹の十五夜と元気にしているだろうか?
「それにしてもよくその構造をご存じですね。早神さん……」
「あ、すまない。少し考え事を」
「レイジは時々、ムカシのこと。ミライのことを思い出してボーっとするクセがアル」
「未来の事を思い出すって、どういう意味なの十三夜ちゃん?」
「アレ、聞かれてナカッタですか? 我々十夜族のこと」
「はい」
「その話はまた、おいおいすることにして、九寨溝に行かねば」
「早神殿、先ほどの紅のドラゴンに乗って一っ飛びはどうでしょうか?山脈の西側沿いなら人に見られないと思いますが」九条慎太郎はもじもじしながら言った。
「九条殿、俺の背には今まで一人しか乗せたことがなく、それ以上だと安定しないのですよ。案内役の郭君を乗せたら、肝心の九条さん達を乗せられないし。もっと練習しとけばと今更ながら思いますが……」
「やっぱりキャラバンで行くしかないのかの、早神殿」
「ふふ、日産キャラバンか」
「レイジ、また何か思い出シテイルナ」
「ああ、今度お話してあげるよ」
俺は十三夜を見ながら考えていた。未来世ではいつものように、蜂妖精女王に変幻して上空偵察を指示していたが、今回は危険な気がする。未来世では10m以上の昆虫種の偵察等を指示していたが危険という気は起らなかった。それ以上の危険が回りにあったので危険の認識レベルが下がっていたのかもしれない。
「上空テイサツならいつものことだから行けるヨ」
「いや、今回はよしておこう、俺が目視観察して危険がないようなら行ってもらう」
「ダイジョウブだけどな。レイジがそういうのなら。そのニッサンキャラバンとかで行くか」





