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第22話:成都の金沙遺址博物館、杜甫草堂にて

 上海から成都へ1,600kmのフライトは3時間を切る。京都から沖縄と同じくらいの移動距離である。


 郭は、探索に必要な機材を揃えに実家に帰った。成都では高名な風水師の家だが、


 周辺の地下水脈の探索にもたけており、見たこともない機器を揃えている。


 それをエンジニアである郭は流暢にいろいろ教えてくれたが、本当に効果があるのかもわからない代物である。


 ダウジングロッドとエレクロニクスが合体したようなものだ。


 我々が使っている集積疑似思念波カウンターもある意味似て非なるものかも知れない。


 郭がいない間、我々はまず『金沙遺址博物館』を参観した。


 金沙遺跡では、金製品が多く出土する。


 出土品で最も貴重なのはこの貴重な黄金仮面の「金面具」であろう。大体三千年前の物である。


 「眼晴形銅器」は目をモチーフにした銅器もあり、何かエジプト文明に通じるような感じがするのであった。


 「太陽神鳥」は太陽と鳥を組み合わせたモチーフである。


 まさに、この実物を不死鳥のフェニックスの十七夜(かなき)が見たら、多分狂気乱舞しただろう。


 俺以外の皆も、ここに来て初めてこのようなものが太古の中国で派生していたことを知った。


 中国切手に太陽神鳥と鳳凰のセットの切手がある。お土産に買っていくことにした。


 最後に気になったのが「十節玉琮」である。天地の結合のシンボルだそうだ。見事な淡い光沢のある緑、翡翠を思い出させるがこれは硬玉である。


 未来世では硬玉は翡翠より思念波の増幅が各段に劣っていたが、この十節玉琮は方形柱状の周囲を三十数段のラインがきり込んであった。


 わずかだか集積疑似思念波カウンターがこの展示物の周囲で数値が上がっていた。方形柱状に施されたラインが思念波を増幅しているようだった。


「これは、貴重なデータだわ。硬玉でも立体形状で思念波が増幅されるなんて」


 こちらはこちらで、鉱物結晶学専門の九条美香が目を光らせて念入りに展示物の周囲を回っている。


 しかも、眼鏡までかけて。他の見学者はだんだん遠巻きに十節玉琮ではなくて彼女を見つめていた。


「もう、よろしいでしょう美香さん。集積疑似思念波カウンターはしまった方が良いかと」


 『金沙遺址博物館』で多種のインスピレーションを得た。


 「太陽神鳥」の幾何学デザインは、量子回路のコアに適用できるのではないだろうかと漠然としたイメージが沸いてくる。


 いままでの量子回路のコアのデザインは、周囲の円形から中心へと等価分割されて集中しているが、これは、周囲の円形から中心へと渦を巻いた感じになっている。実は無意識に避けてきたデザインである。


 実物を見てみると、むしろ積極的に考察した方がよさそうだ。後で郭に相談することになるな。


--


 次に我々は、『杜甫草堂』に来た。ここは早朝がすばらしく爽やかだということだったが、『金沙遺址博物館』で時間を取られて、午後三時になってしまった。


 とはいうものの、草木浴というのだろうか日本でいう森林浴とは違い、草木の香りがして、子供のころ草原で寝ころんだ時の感じだ。風に揺られる草木の音とそれにのって香がするという感じで気が休まる。


 朝に来たらさぞもっと良いだろう、鳥のさえずりがそれに加わるのだから。


 ここでは、昆虫生態学の九条慎太郎が十三夜(つきみ)を引き連れて、子供のように葉っぱの裏とか、木の根元とか何か探して回っている。


 多分、珍しい昆虫がいるのだと用意に想像できた。何か捕まえてはしゃいでいる。いいじいさんがである。


「早神殿、これを見て下さい」


 見せて貰ったのは土蜂だった。十三夜(つきみ)を引き連れていたのは、センサー役か。


「蜂のようですね。翅が少し退化しているようですが」


「そう、このタイプの土蜂はね、日本にいないので貴重なんだよ」


 九条慎太郎は嬉しそうに、いろいろ教えてくれた。


--


 ここ『杜甫草堂』でも、集積疑似思念波カウンターが少し上昇いていた。ただし北に向けたときだけ上昇するのである、その方向はサバクトビバッタ群体が迫っている九寨溝(きゅうさいこう)である。


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