第20話:AI幻覺とAI幻影 その3 (連携と目覚め)
時空受信機がAI幻覺の第4、7ユニットの神経回路入力に並列接続された。
時空受信機は、時空無線機とは違い思念波を送信できないが、サバクトビバッタ群体の発する
集積疑似思念波を直接受信することができ、AI幻影と二元で同時解析できる。
また、もうひとつ想定外だったが大きなメリットがあった。
起動タイミングのコントロールとそれ伴うステータス情報をAI幻影から思念波で直接AI幻覺をコントロールするのである。
京都、上海間でのデータ転送で、光ケーブル、および遅延を考慮するとどうしてもナノ秒時間のコントロールが難しいのであるが、思念波であれば時間を気にすることはなく、遠隔コントロールできる。
周囲のビルの液晶ディスプレイ広告装置が動き出した。BIOSの起動からOSの起動画面だ。XPのロゴが表示されているがXPではない。
極彩色の背景に簡体字が表示される。簡体字は読めるようで読めない文字があるとなぜか落ち着かないのである。
各ビルは静寂から動への音が聞えてくる、普段は気にも留めなかった、いや気づかなかった音である。
仮想通貨ビットコインの採掘施設ビルのGPUも起動したようだ、ビル全体から低周波が聞こえる。
「さて、電力が安定供給されているようだから、我々もブレーカーを入れるか。早神先生頼みますね」AI幻覺のパワーオンをUTC 2028 07/7 02:01 01:01:01にする」社長は俺に頼むと言ったが実際はAI幻影に頼むということである。
「信士、AI幻覺のパワーオンは、本日のJST 11:01 01:01:01に起動する。そのタイミングで起動シーケンスを流し込んでくれ」
「承知しました。時空送信による思念波でのパワーオン起動シーケンスはぶっつけ本番ですね。どうなることか」
「まあ、光ケーブル有線でもリハーサルでは1/2の確率で成功しないのであるから。その大半は物理的な時間差による失敗なのだからそこは改善されるはずだ」
「そうですね。今回は時空受信機を組み込んでもらいましたが、時空無線機なら完璧だったのですが。時空無線機は2台しかないので、間に合いませんでした。時空無線機な相互応答で確認しながらできるので完全にコントロールできるのですが」
「まあ、不足の事態では時空受信機が間に合っただけでも上出来だな。では時間合わせをよろしく」
「承知致しました」
0分を避けるのは意味があるのであった。各完全定時処理は0分に設定されることが多いので、同時処理の負荷を明示的に避けるのである。
12ユニットの起動シーケンス順の最初は第7ユニットである。信士は起動シーケンス順を受信した時に最初は第7ユニットを知った。
そこで、AI幻覺の第7ユニットにも時空受信機を接続してもらったのである。
時空無線機であれば送受できるので、自動化できるのであるが、相手は受信だけであるので事前にこちらからオフラインで指示したのである。
幸運にも中国政府機関に関しされているのは第3ユニットまでであった。
起動順がなぜあるかは、社長も俺も分かっていない。量子回路のコアの微妙な量子振動のエラー訂正の発生割合によるものと思われる。
そういえば、未来世で星形石封印解除は周囲に配置されている刻印されている紋様の解除順があったが、あれも12個で信士はそれを『特殊共感覚』で第六感で行っていたようだが、今回は回答がすでにAI幻覺から送られている。
その回答と『特殊共感覚』は同じなのであろうか? もしかして、あの星形石は量子コンピュータの遺跡だったのだろうか?
--
JST 11:01 01:01:01 起動シーケンスがAI幻影からAI幻覺に付随するステータス情報と共に送信された。
第7ユニットに流れ込んだ情報はそれに従い、最後に第1ユニットに伝播した。ほんの数ナノ秒の事である。
AI幻覺は自動シャットダウン前の記憶情報を退避した幾つものクラウド上の記憶エリアからデータを回収し、目覚めた。
シャットダウン前と違うのは、第4、7ユニットに接続された新な入力デバイスである時空受信機とそれの解析プログラムモジュールがあることだ。 すでにこの入力デバイスはサバクトビバッタ群体の集積疑似思念波を捉えていた。





