86話 脱出
ピザが旨い。
コーラが旨い。
お向かいさんのスピカ女王が、さっきまで『何のんびりしているのですか』とうるさかったが、羨ましそうに見ている。
旨いは正義なのだ。
何故そんなに余裕なんだって?
いや、だって出ようとしたら普通に出れるので。
どうやって?
例えば、グランマリア様の黒い炎なら鉄でも溶かせるし、
まあ、加減を間違えると、向かいのスピカ女王も炭火になっちゃいそうですけど。
辞めてくれ?
大丈夫です。
『俺は』常識人なので。
大切なことなので、もう一度言います。
『俺は』常識人です。
うん。
わかって頂いて光栄です。
さて、みんな食べ終わったら帰りますか。
どうやって?
勿論、妖精のチョークでですよ?
妖精のチョークって何?
妖精石で作ったチート道具です。
誰から貰ったの?
ん?
ドワーフのククルトンとラランだけど…
あっ、この辺りはまだ詳しく話してなかったね。
おっ、やっぱり『オタク』
ドワーフとかの、ファンタジーど真ん中は興味津々なんだ。
今なら、シャルティア様なら素手で牢屋の鉄柵をグニャリって出来そう。
あっ、もうやってるのね。
仕方ないから、スピカ王女も助けますか。
では、ミネゴルド王様ならびに勇者の皆様。さようなら。
俺達は無事脱獄して、ソプラノード領のコンビニに帰った。
「ねえ、本当に一条君達が来たの?」
「ああ、今地下牢に入ってるよ」
良かった。
これで俺の名誉も復活だ。
もう、無能だなんて言わせない。
ミネゴルド王にも報告だ。
なんていったって、魔王のガキと、竜王のガキもまとめて捕らえたからな。
これで俺も、四天王入りだな。
「魔王の娘グランマリアと、竜王の娘シャルティアを捕らえました。
現在城の地下牢に放り込んでいます」
ミネゴルド王の側近に伝える。
ああ、ミネゴルド王の言っていた事が本当なら、もうすぐ元の世界に戻れる。
『竜王の心臓と、魔王の心臓があれば、我がこの世界の真の王となり
召還の魔法も使用可能となる』
真の王とかは勝手にやってくれればいいが、元の世界に戻れる。
戻りたい。
地下牢に戻ると、そこには誰も居なかった。
夢なら覚めてくれ。




