84話 リバーシ
俺はバトン。
現在、城の地下牢を見張る仕事をしている。
地下牢に収容されているのは二人。
少ないと思うが、一般の囚人は別の所に収容されている。
現在城に収容されているのは、スピカ王女。
ん?
スピカ王女で良いのか?
後一人は相楽とかいう変な女。
勇者のガキ…いや勇者様が捕らえた重要な人質らしい。
この女は変わっている。
普通、牢屋に入れられたらショックを受けたり、恐怖するものだが、
この女からは微塵も感じない。
スピカ王女の方が傷心しているじゃないか。
この女は大物なのか?
今も大の字で寝てやがる。
腹を出すんじゃない。
風邪引くぞ。
全く。
おっ、見張りの交代が来たか。
ん?何か持ってやがる。
「おい、これ見ろよ」
何か箱に入ってる物を見せてくる。
結構でかいな。
「もしかしてリバーシか?」
「おう、やっと手に入ったんだ」
マイケル商会が販売している遊具だ。
くそ、羨ましい。
家の小僧たちも欲しがってるんだ。
譲ってくれないか?
無理だよな。
それで、自慢しに来たのか?
ん?練習相手になれって。
子供達に負けたくない?
うん。わかるぞ、親の意地だよな。
よし、協力してやる。
確か角を取ると有利なんだよな。
ふふふ、今のうちに喜んでおくと良い。
後でひっくり返してやるからな。
ん?
誰か来た。
勇者の天野様だ。
さっき急いで出ていったのにもう帰って来たのか。
「お疲れ様」
「お疲れ様です。これは…サボってた訳では」
ヤバい。
何か良いいいわけはないか?
あるわけないよな。
「おっ、リバーシか。異世界のテンプレだな。
あっ、これ差し入れ良かったら食べてよ」
テンプレ?
天野様がパンを差し入れてくれた。
これは…アンパンじゃないか。
かなり旨いんだよな。
気が利くじゃねえか。
天野が、稲葉さん特製の睡眠薬入りアンパンを差し入れた。
一口食べると夢の中に。
凄いな。
さて、相楽さんを救出しなくては。
怖がってるだろうな。
俺だって牢屋に入れられたら怖いしな。
…寝てるよ。
しかもちょっとイビキまでかいて。
「一条様!」
スピカ王女も捕まっていたのか。




