83話 突入。
焦った。
ちょっと目を離すとこれだもんな。
作戦では竜王様が騎士達相手に暴れて、王様と勇者達を引き付けている間に救出って俺説明したよな?
二人がハッとした顔をしている。
忘れていたのか。
それよりも、天野の奴は何処に行った?
居た居た。
おい、何処に行っていたんだよ?
えっ、門番に顔を知られているから出られなかった。
そうだよな。
俺は大丈夫だったのか?
大丈夫って?
俺ってそんなに存在感ないか?
三人とも可哀想な奴を見る様な目で見るんじゃない。
取り敢えず、天野は相楽さんにこれをわたして来い。
俺はアイテム袋を渡す。
中には色々入っている。
天野は素直に受け取ると、相楽さんの元に急ぐようだ。
俺達三人は待機だな。
あれ?
シャルティア様とグランマリア様は?
「あれ?嬢ちゃん達、勇者様の知り合いだったのか?」
「そうなのじゃ」
「ししょーのね、げぼくなんだって~」
「下僕?」
なんてこった。パンナコッタ。
天野は慌てて門番に説明している。
声は聞こえないが、支離滅裂な事を言ってるんだろうな。
あっ、こっちを見た。
うん、睨んでいる。
すまん。
また、油断した。
手招きをしている。
行かなきゃいけないよな?
「いちじょー、はやくー」
「一条、チンタラしてると置いてくぞよ」
どうか、置いて行って下さい。
そして、大きな声で俺の名前を呼ばないで下さい。
門番は苦笑いだな。
それよりも、俺達を通して良いのか?
勇者様のお連れなら問題ない?
勇者の言う事は絶対だと?
俺も勇者だが、言うこと聞いて貰ったことが一度もないぞ。
ああ、もういい突入だ。
ちゃっちゃと相楽さんを救出して、あとは竜王様に任そう。
うん、それが良いな。
それしか無いな。
久し振りに戻って来た王城。
他の勇者と遭遇しなければいいが……
ヤバい。
自分でフラグを立ててしまった。
なんてこった。
パンナコッタ。




