82話 門番の苦労。
俺は王城を守る門番。
名前は覚えなくて良い。
いつまでも可愛い妻と、ヤンチャざかりの息子が二人いる。
そう、目の前にいる二人の子供達と同じぐらいの年だ。
「たのも~」
「たのもー。なのじゃ」
さっきのは訂正しよう。
家の子供達はヤンチャと言ったが、
王城に向かって叫んだりしない。
たのもー?どういう意味だ?
服装も見たことの無い服を着ている。
お揃いの服を着ている所を見ると姉妹かな?
親は何処に行った?
城に向かって叫んだりしていたら、下手したら不敬罪で捕まるぞ。
ここの王はそんな奴だ。
子供にだって容赦しない。
最近は特に酷くなった。
正直、法があって無いようなものだ。
王と勇者が全てだ。
しょうがない。
この子達を追っ払うか。
「よう、嬢ちゃん達。ここは子供の来る所じゃないぞ。
早く帰りな。ほらこれをやるから」
俺はポケットからハイチュウなる物を二人にやる。
このお菓子はとても甘く、食感が不思議な食べ物だ。
マイケル商会の商品だ。
家のチビ達にも大人気だ。
二人もハイチュウを食べる。
旨そうに食っている。
ん?
もう一個?
俺の分が……
まあ、良いか。
「お主は人間の割には気が利くのじゃ」
「そうなのじゃ~」
おう、ありがとよ。
変わった喋り方をする子供だな。
じゃあ、食ったし帰れ。
帰らない?
そもそも、ここに何しに来たんだ?
師匠を助けに来た?
王をぶっ飛ばしに来た?
……俺の耳がおかしくなったのか?
「人間の王のバーカなのじゃ」
「ゆーしゃのアホ~」
俺の耳は正常だったみたいだ。
俺は慌てて、止める。
辺りを見渡すと幸い誰にも聞かれて居ないな。
門番の相棒は俺の後輩なので、多分セーフだ。
空を見上げて口笛を吹いてやがる。
「人間風情がマリーに気安く触るのではないのじゃ」
「ロリコン~?」
ちょっと待て、なんて事言いやがる。
慌てて一人の男がやって来た。
父親か?
いや、まだ若いから兄貴か。
一連の事を説明してやる。
青い顔して謝ってくる。
この兄貴は常識がありそうで何よりだ。
「のう、一条。こんな人間なんかに頭なんて下げる必要はないのじゃ」
「いちじょー、こいつらはししょーをいじめている敵だよ~」
…お兄さん頑張れ。
俺はたったの数分だったが頑張った。
今日家に帰ったら息子達を誉めてやろう。
ん?お礼にくれる?
疲れている時は甘いものが良いと?
お兄さんからハイチュウを貰った。
しかも見たことの無い味だ。
新発売か?
ありがとよ。




