55話 誘拐?された。
二人が盗賊を討伐した。
「お爺!あれ!」
ちっこいのがこっちを指差す。
「おお?おお!!!」
なんだ?
逃げた方が良いのか?
「おーい!お前さん達」
雰囲気的には大丈夫そうだ。
二人が近付いて来た。
「お前さん達それは?」
マウンテンバイクを指差す。
ちっこいのが目をキラキラしながら食い入る様に見ている。
「あの……」
「おお、そうじゃった。挨拶が遅れたわい。
わしはククルトン。で、こっちのが孫のラランじゃ。
見ての通りのドワーフじゃ」
おお、ドワーフ。
流石異世界、相楽さんが居たらテンション上がりそうだな。
「俺は一条です」
「稲葉です」
無難な挨拶をする。
「ねえ、ねえ、お爺」
しゃがみながら、じっくりマウンテンバイク観察している。
目線を外さずに話しかけている。
直接聞いて来ないのは人見知りなのかな?
「おう。で、これはなんじゃい?」
「これは、マウンテンバイクっていって乗り物です」
「乗り物?初めて見たわい」
ククルトンもまじまじとマウンテンバイクを見ている。
ドワーフは珍しい物が好きなのかな?
「どうやって乗るのじゃ?」
「えーと、ここにお尻を乗せて、このペダルを漕ぎます。
乗って見ましょうか?」
「うむ、頼む」
その辺をぐるっと回って見せてみる。
「おお!」
「ほう、ペダルを漕ぐと丸いのが回るのか、ちょっと良く見せてくれ」
断れないぐらい夢中だ。
「このチェーンと丸いが繋がっているのか」
仕組みがかなり気になっているらしい。
「そんなに難しい仕組みでは、無さそうだから作れそうだね。
でも、素材がわからないのがいっぱい」
「いや、ララン。良く見てみぃ、この丸いのにトゲトゲしたのとか均等になっておるぞ。見た目以上にたいへんじゃぞ」
もう、そろそろ返してくれないかな?
夜になる前に帰りたいのだが。
「のう、これはどこで手にいれたのじゃ?」
欲しいらしいな。
「もうすぐ、エリエの町で販売されますよ」
嫌な予感がするから教える。
この流れはくれってことだよな。
「販売される?こんな素材見たこと無いぞ?これはなんじゃい?」
「これはゴムですね」
「ゴム?」
この世界ではゴムは無いのか?
「のう、兄ちゃんと姉ちゃん。もっと詳しく教えてくれんか」
「すみませんが、日が暮れたら困りますので」
よし、断れた。
俺はNoと言える日本人だ。
「…お爺、一緒にドワーフの里に行く」
ドワーフの里?
この近くにあるんだ。
聞いた事無いな。
「それはいい、流石に我が孫じゃ」
いや、全然良くない。
行かないよ。
「いや、行きませんよ」
「…大丈夫。歓迎する」
そういう問題化じゃない。
「なんじゃい?人間の癖に珍しいのう。
普通はみんな妖精の国に言行ってみたいって言うもんじゃかの」
「妖精?」
ドワーフって妖精なのか?
「そうじゃったお前達人間は、亜人って呼んでおるか……」
いきなりテンションが下がったな。
悪い事したかな?
「あ、あの私、ドワーフさんの里に行ってみたいな。なんて」
あ、稲葉さんが空気を読んだ。
「だって、私の祝福【合成】の役に立つ情報ゲット出来るかも知れないし」
確かに珍しい鉱石とかあるかな?
「そう、じゃあ気をつけてね」
「えっ、一条君行かないの?」
「行かないよ」
俺はいいかな、エルフの国には、行ってみたいかも。
「…お兄ちゃんも行くの」
ラランちゃんに手を握られる。
「珍しいの。ラランが初めて会った奴に懐くなんて。じゃあ行くぞ」
そう言って、白いチョークの様な物で、何か地面に何か書き出す。
魔方陣みたいな物が書き上がった。
暫くすると、光に包まれる。
いや、俺は行くつもりは無かったのに。
目を開けるとそこは、さっきまで居た森の中では無かった。




