3話 意気投合の二人。
「ありがとう?」
恐らく頭が混乱しているのだろう。お礼を言われる。
大丈夫。俺も同じ。
「このスキルはネットショッピング(ゴールド会員)って言うらしい」
祝福らしいが、スキルといった方がしっくりくる。
まあ、どっちでも良い。
「そう何故か、王様達は能力無しって言ってたけどね」
そう、それが謎だ。
「私も…」
消えそうなくらい小さな声だ。
「『私も』って?」
「私も無能って言われたけど…木板には表示されたの」
彼女も俺と同じで、木板にはしっかりと表示されていたようだ。
どうして、俺達二人だけ他の人には見えなかったのだろうか?
「なんて表示されたの?」
彼女の祝福が気になる。
思い切って聞いてみた。
「…タク」
消え入りそうな小さな声だ。
上手く聞き取れなかった。
「ん?ごめん聞き取れなかった」
「【オタク】って表示されてた」
オタクってあのオタク?
「そうなんだ」
相楽さんは顔を赤くして下を向いてしまっている。
ああ、人に知られたくないのか。
確かにそうかもしれないが、
オタクは気にしなくなってからが、本物だと思う。
「もしかして、相楽さんってアニメとか漫画が好きなの?
それとも他のオタク?」
下を向きながら
「アニメも漫画も好きです。キモいですよね?スミマセン。スミマセン」
早口で謝ってくる。
謝らなくても。
あっ、もしかしてそれが理由で苛められてたりしたのかな?
「いや、俺もアニメや漫画好きだよ。ゲームも、あとラノベとかも」
すると、ガバッと顔を上げて
「本当ですか!」
今までで一番大きな声だった。
「本当だよ。グッズは集めて無いけどね」
そこからどんなアニメが好きだとか、
好きなゲームのジャンルだったり、
追放系や悪役令嬢のラノベの話等で盛り上がった。
あれ?結構仲良くなれるんじゃね?
既に数時間喋りながら歩いた。
それで気付いた事がある。
そう、疲れていない。
どうしてだ?
帰宅部の体力ってこんなに無いよ。
隣の相楽さんも、全く疲れている様子も無い。
俺が不思議に思っていると
「ねえ、一条君。今、ふと思ったんだけど、この世界って魔物とか居るのかな?」
そうか、ここは異世界だから魔物も居るかもしれない。
いや、むしろ魔王が居るらしいので、絶対に魔物も居るだろう。
「多分居るだろうね…」
「……だよね」
相楽さんも同じ考えの様だ。
ふと会話が止まる。
聞き耳を立てているからだろうか。
ちょっと怖くなって来たじゃないか。
それから少し進むが、会話が止まっている。
それから、ちょっと歩いただけで、かなりの疲労が襲って来た。
さっきまでなんとも無かったのに。
「ねえ、一条君」
「何?」
「ラノベとかだったら、ここで王族の姫とか、商人とかが魔物に襲われてるよね」
「テンプレだったらそうだね。商人だったらマイケルさんだね」
二人で笑いあう。
一気に疲れが取れた気がした。