38話 とある警備兵。その1
俺の名前はカラム。
国境を警備する王国騎士団の部隊長だ。
独身だが、王都に俺にはもったいない女がいる。
浮気していないか心配だ。
任期の半年がもうすぐ迫っている。
正直早く帰りたい。
このソプラノード領は魔族と竜族の国に隣接する。
まあ、この半年は平和だった。
馬鹿な王が竜族にちょっかい出した時は、
正直色々覚悟した。
もうすぐ任期が終わるってのに、なんとこのソプラノードに領主が就任するらしい。
これまで、国の直轄の領地だったのに、
何々、新しい領主はミツルイチジョー男爵?
聞いた事無いな。
いや、確か王都を救った商人だったか?
なんか珍しい物をどんどんと売り出したとか、
メリーの手紙に書いてあったな。
どんな人物だ?
振り回されるのだけは勘弁だな。
3日間の砦での、仕事が終わり村に帰ると、既に領主は来ていた。
村の連中によると、もしかしたら悪い奴かもとのことだ。
「横暴な態度だったのか」
「いや、物腰の柔らかい感じの青年だった」
「じゃあ、どうして?」
「あの年で女を四人も囲っていた」
確かに極悪人だ。
しかも、かなり若いらしい。
羨ましい……
いや、違うんだメリー……
俺は一人で何を言っている。
領主は、村の外で畑を作っている?
村の人に迷惑がかからない様に、
結構良い奴じゃないか。
ははは、まずは森の開拓だな。
少し手伝ってやろうか?
……なんだこりゃ!!
昨日まで、森だった所が既に畑になっている。
いやいや……
しかも奥に何か建物があるじゃねえか。
見た目は、木製の家だか、めっちゃ綺麗じゃないか?
どんな魔法使ったら、たった1日でこんな風になるんだよ。
ボケッとしていると、誰か出てきた。
ひょろっちぃ男だ。
「あっ、警備兵の方ですか?
この度、ソプラノードの領主になりました、
一条です」
領主だった。
さっきの言葉口に出さなくて良かった。
首が体とお別れする所だった。
「今日からここで、コンビニオープンするので見ていって下さい」
コンビニ?
聞いたこと無いが、どんな意味だ?
一応領主だし、断るの失礼だよな。
危険は無さそうだし、行くか。
誘われるまま、建物の中に入った。




