18話 竜王アースその1
俺は竜王アース。
偉大な竜族の王である。
この世界の勢力図というと、我ら【竜族】
そして魔王が統括する【魔族】
そして【人間族】
この三種族が、上手く均衡して世界の情勢を保って来たのだが、
最近良くない噂が届いた。
人間族が勇者を召喚を成功させたと。
勇者の存在は面倒だ。
この世界の理に反しているからな。
人間族の王は、その勇者を利用して魔王並び、魔族を滅ぼそうとしている。
もしかしたら竜族にも被害が及ぶかもしれん。
人間族と魔族は昔から、仲が悪かったからな。
少しは仲良くせい。
いつも問題が起こると、面倒みるのは竜族なんだぞ。
今回も勇者召喚のクレームを入れに来たと言うわけだ。
何もしなければ、魔王がうるさいからな。
俺の世界一、可愛い一人娘のシャルティアが、
『シャルね、おとーさまにお願いがあるの~』と言ってきた。
勿論お願いを叶えてあげよう。
「シャルもにんげんの国にいきたーい」
よしわかった。
……いや、駄目だ。
例え世界一可愛い娘の頼みとは言え、遊びに行くわけではない。
「シャルティア、お父様は遊びに行くわけではないのだ。
大切な用事で行くのだからシャルティアは連れては行けないんだよ。
わかっておくれ」
シャルティアは頭のいい子だ。
これでわかってくれるだろう。
「やっ!」
一蹴されてしまった。
どうしよう?
こうなったら聞かない子だ。
全く誰に似たのだ。
「シャルティア、我が儘言わないで欲しいな~」
「やっ!」
参った。どうしよう?
「どうして、シャルティアは人間の国に行きたいのかな?」
「あの、お肉につけるのおいしいかった~。
もっとおいしい物がにんげんの国にはあるかもしれないの~」
たしかに、あれは旨かった。
俺も色々食べてきたが衝撃的だった。
人間も侮れない。
「お土産で買って来てあげるから」
「やっ!シャルもいくの!」
シャルティア、いい加減にしなさい。
お父様もいい加減怒るぞ!
えっ?
連れていかないと一生、口を聞かない?
それは困る。
世界が滅びるよりも、困る。
「おい!警備の数を増やせ」
こうして人間の国に向かう事になるが、妻のフブキまでついて来る様だ。
「フブキよ、遊びに行くのではないのだぞ」
「ふふふ、何を言っているのですか?
私は、王妃ですよ。夫に同行して王妃の役割を果たすだけですよ」
絶対に嘘だ。
これまでは一緒に来てくれなかったじゃないか。
結構寂しかったのだぞ。
も、勿論シャルティアが小さかったというのはわかっている。
文句はありません。
「これまでついて来た事はないじゃないか?」
一応聞いてみる。
「おほほ、ではこれからも同行しませんよ?」
「いや、一緒に行こう」
笑顔が怖い。
妻を怒らすと怖いのだ。
例え、竜王でも怖いのだ。