140話 魔王国に向かって。
俺達はミネゴルド王国から少し行った所にある海岸へと来た。
列車に乗って魔王国に行くと聞いたが、何処にも駅なんて見当たらない。
この世界では移動手段としては馬車が主流だ。竜族など一部の例外はいるが。
同行者はいつもの四人。なお今回も天野は領主代理として留守番だ。
「ねぇ、一条君。本当にここで合ってるの?全然列車なんて見当たらないんだけど」
列車どころか、人っ子ひとり見当たらない。
「そろそろ時間だけど、私達あの怪しいセールスマンに騙されたんじゃない?」
「何の為に?」
「それは勿論一条をからかう為だよ」
いや、君達じゃあるまいし。
俺達が少しの不安を抱いていると、汽笛の音が聞こえる。
辺りを見ても列車の姿が見えない。みんなで探していると汽笛の音がまたなる。今度は上から聞こえてきた。
「嘘でしょ……」
汽笛の音のする方を見上げるとなんと、汽車が空を走っている。
海からこちらに向かって走り、徐々に高度を下げる。
俺達は汽車が着地するであろう場所を開けて待つ。
しばらくすると汽車が着地した。
俺達が汽車を呆然と見ていると、汽車の中から人が降りて来た。
地面に裾が付くぐらいのロングコートに身を包んだ小さな人。子供?
「こちらは魔列車9999。ミネゴルド王国発、魔王国ビスト行きです。
ご乗車のお客様でいらっしゃいますか?」
俺達の前まで来た子供?
「君は?」
「僕はこの魔列車9999の副運転手のニコです」
こんな小さな子供が運転手?
「こう見えても勤続40年ですよ」
「えっ?」
だいぶ年上でした。