139話 セールスマンが帰った後。
「では、チケットを拝見いたします」
俺は車掌にチケットを見せる。
「一条様ですね。代金の支払いがまだみたいですね」
『車掌に直接支払い可能と聞きましたので』
「ええ、勿論。むしろ殆どの方がそうですね」
俺は車掌に白金金貨100を支払った。
「では、8号車が一条様達の車両になります。
質問があれば乗務員にお尋ね下さい。では、ごゆっくりどうぞ」
あれから俺達は怪しいセールスマンから情報を買った。
【ミネゴルド王国~魔王国ビスト 魔列車8号車】
俺の手元には一枚のチケットがある。
なんとミネゴルド王国から魔王国に向けての列車があるらしい。
嘘と思ったが、本当と言い張るセールスマン。
そもそも列車なんてあればとっくに気付いていたはずだが、そんな話は聞いた事はない。
「ほっほっほ。知らなくて当然です。心配なのはわかりますので代金は車掌に支払ってくださって構いませんよ。ただ、この情報だけは誰にも漏らさないで下さいね。もし情報が漏れましたら、ほっほっほ」
情報の代金は後払いで良いらしい。
帰っていくセールスマンを見送り俺達は会議を始める。
「どう考えても嘘だろ」
開口一番に口を開いたのは天野。
俺達よりも長く王都にいたので、俺達よりもミネゴルド王国に詳しい。
その天野ですらそんな話を聞いた事がないという。
「私はあると思うよ」
天野と反対の意見を言うのは相楽さん。
「相楽様、グランマリア様を心配して可能性にすがりたいのはわかりますけど……」
他の三人の表情を見ると天野と同じ意見のようだ。
『俺もあると思う』
「一条……」
呆れとも哀れみとも取れる天野の声。
しかし俺は本当にあると思っている。
『あのセールスマンはおそらくだけど……』
「勇者。多分勇者トーヤだと思う……」
『相楽さん!?』
みんな驚いている。
俺も相楽さんが俺と同じ事を考えていた事に驚いた。