136話 訪問者
グランマリア様と電話で話して数日がたった今、俺達は自分の領地に帰って来ている。あれからフブキ様と交渉したが良い返事を貰えず、半ば強引に送り返されたのだ。
「一条、スピカ女王様から至急城に来るように命令が来ています。あとドワーフ達からの面会依頼が」
領主代理を任せていた天野から不在時の報告を受ける。
領主って俺が思っていたよりも忙しい。
もうこのまま領主を天野に譲ってしまいたい。
『……と思っているんだけど、どうだ?』
「却下に決まっているだろ」
……そうですよね。
各々がグランマリア様を心配し、何も出来ない事を歯痒く思いつつ、スピカ女王との面会の為に王都に向かう日がやって来た。
『あれ?みんな準備は?』
「ん?準備?」
首を傾げる。女子達。
『いや、だから王都に行く準備だよ』
「私達は行かないよ。呼ばれてないし」
『俺だけ行かせる気?』
「妖精のチョークでちゃちゃっと行って来れば良いじゃん。ねっ」
ねっ。じゃない。
いつも通りの理不尽な扱いを受けていると、ピンポーンと呼び鈴が鳴る。
誰か来たようだ。
ピンポーン、また呼び鈴が鳴る。
ああ、そうか。
ここにはメイドドラゴンさんが居ないんだった。
俺達もお手伝いを雇うか。
当然誰も動かない。いや、天野お前は動けよ。
ピンポーン、呼び鈴が鳴る。
はいはい、少々お待ちを。
玄関を開けるとそこには真っ黒なスーツに身を包んだ男が立っていた。
「おーっほっほ。とてもお困りの顔をしてますね。お客様」
『はぁ?どちら様ですか?』
「私はしがないセールスマンですよ。ほっほっほ」
セールスマン?
この世界でセールスマン?
混乱する頭にセールスマンが問いかける。
「お客様、魔王国に行く方法の情報を買いませんか?ほっほっほ」