131話 竜王、魔王国へ。
魔王の死亡という衝撃の報告があり、武道大会の決勝戦が中止になった。
竜王様は竜族の幹部を集めて会議中だ。
俺達はシャルティア様の家に戻った。
「魔王ガルガン・ドレアムってマリーちゃんのお父さんだよね?」
まだ会ったことはないが、確かそうだったはずだ。
「マリーちゃん、だいじょーぶかな?」
シャルティア様も心配している。
二人とも仲が良かったからな、心配だろうな。
「大丈夫だよ。きっと」
シャルティア様だけではなく、みんな心配している。
暫くすると、竜王様が帰って来た。
「竜誕祭は中止だ。これより竜族代表として魔王国を訪問する。
目的は詳しい情報と、魔王ガルガンの妃、ローゼマリアと娘のグランマリアの保護だ」
保護?
どういう事だ?
「魔王国では、以前より派閥争いが激化している。今回のガルガンの死亡はおそらく上級魔族による暗殺だと踏んでいる」
そういえば、魔王国で問題が起こっているといっていたな。
「一条、すまんが父上も竜神様の結界から離れる訳にいかなくなった。
折角来てもらって悪いが、後回しになる、すまん」
『いえ、気にしないで下さい』
世界樹の行き方を聞きたかったが、仕方ない。
他のみんなも頷いている。
すでに魔王国に向かう編成が組まれている。
ミネゴルド王国の時にわかっていたが、緊急時の竜族の対応の早さは凄い。
リーダーが優秀だと頼もしいな。
スピカ王女は……頑張って貰おう。
竜王様がフブキ様に不在時の指示をし、魔王国に向かう視察団に加わろうとしていると、
「おとーさま、シャルも行く」
いつもとは違う真面目な表情で、シャルティア様は、自身も魔王国に同行すると言い出した。
「シャルティア、これは遊びじゃないんだ。フブキと一緒に待っていなさい」
「あそびに行くじゃないもん。マリーちゃんがこまってるなら、シャルがおたすけするの、だってマリーちゃんはお友だちだもん」
竜王様もシャルティア様が本気なのを感じたようだ。
とても困ったような表情をしてから、シャルティア様に語りかける。
「シャルティアの気持ちは良くわかった。でも連れて行く訳には行かないんだよ。グランマリアの事は任せなさい」
「でも……」
シャルティア様も今回の事の重大さが、幼いながらに感じているようだ。
「フブキ、あとは任せた」
「はい。どうか気をつけて」
フブキ様はシャルティア様の肩に手を置き、もう片手で頭を撫でながら、竜王様を見送る。