129話 変身スーツ
稲葉さんが言っているの稲葉特製ベルト。
某ヒーローが着けている変身ベルトだ。
なんの事を言っているのかわかるのは俺達ぐらいで、竜族の人達は未だに修羅場と思って楽しんでいる。
このベルトを作っている時に側に居たのが相楽さんだ。
つまり、相楽さん監修の変身ベルトなのだ。
オタクの本気がこもった変身ベルト。大丈夫か?
俺もアニメや漫画を観るが、残念ながらヒーロー物に疎い。
ベルトのボタンを押す。
すると……何も変化もない。
「あっ、音声案内だよ」
『音声案内?』
「イエス、グー◯ルみたいな……その機能と合成したからね」
『成る程』
俺はベルトに向かって話しかける。
端からみたら滑稽だよな。
『変身』
俺の体が光に包まれる。
光が収まると俺はヒーロースーツを身に纏っていた。
黄色の全身タイツ。
全身タイツ……いや、ヒーロースーツもっといっぱいあるよね?
平成を飛び越えて、昭和のヒーローになったよ。
しかも何故黄色?
『何で黄色?』
「だって赤はリーダーでしょ?青はサブリーダー、ピンクは女子だし……
緑と迷ったんだけど、まあ、黄色かなって」
赤で良いじゃん。
「シャルはピンクなんだ~」
シャルティア様も作って貰ったらしい。
嬉しそうだ。
他の色は?
「ん?まだ未定だよ」
いや、絶対に着たくなかっただけたよね?
みんなどこか遠い所を見ているし。
「相楽。貴女、シャルティアにあんなのを着せる気なの?」
静かな怒りを感じる。
「大丈夫です。一条君のは試作品なので、シャルちゃんのはもっと可愛く仕上がってます」
「一応竜族の姫なのを忘れないで頂戴ね」
「……はい」
流石フブキ様。相楽さんを叱れるのは現在フブキ様だけです。
それと俺のが試作品って……
『ねえ、稲葉さん。このスーツって結局どんな機能なの?』
「え~と……わかんない」
『はっ?』
「いや~、本当はあの筋肉先生から逃げる為に、時間潰しにシャルちゃんのプレゼント用に作ってたんだけど、安全確認の為に一条君に渡してみようかな~って、え~とテヘペロ?」
知ってたよ。
君達がそういう人間だって。
「一条……一条兄ちゃん、なんか大変なんだな」
対戦相手の五歳児に慰められた。