128話 勇者の本気パンチ
目の前には三メートルほどの竜。
五歳児とはいえ、怖い。むしろ子供だから怖い。手加減出来るのか?
俺は護身用のスタンガン銃を出す。
結界の勇者楢崎に使って以来愛用している。
竜とはいえ、本物の銃を使うのは躊躇いがある。
竜族に銃って効くのかな?
銃を構えたら、審判のおっさんからストップがかかった。
「武器の仕様は禁止だ」
『はっ?』
「当たり前だ。武道大会で武器を使うなんて貴様はふざけているのか?」
怒られてしまった。
そんなルール知らなかったよ。
さっきの説明しとけよ。
え~っと、もう降参しても良いですか?
駄目?
更に怒られてしまった。
「一条君!ふざけてないでちゃんとしてよ。一条君なら勝てるよ」
まさかの相楽さんからの応援。
そうだよな、この世界に来てから相楽さんとずっと一緒に居るもんな。
最近はずっと君の事を勘違いしていたよ。
俺頑張るよ。
勇者、一条本気のパンチ!
この1ヶ月、むさ苦しい筋肉のお兄さんと伊達に一緒居たわけではない。
例えこの右腕がどうなっても倒す。
人を殴ったことない勇者の俺が、初めて殴るのが五歳児……
なんかごめんなさい。
罪悪感を抱きながらパンチを繰り出す。
相手にあたる前に体の左半分から強い衝撃が。
俺のパンチより先にプラズマ君の右フックが俺にヒットし、吹っ飛ばされる。
体からミシミシという音が聞こえる。
短い人生でした。
さよなら、お父さんお母さん。
そして読者の皆様。
これにて『異世界ショッピング』は終了です。
次回からは『オタクの紐友達相楽さん』です。
どうぞ宜しくお願いします。
……「金返せー!」
誰かが叫んでいる。
相楽さんだ。
必死の形相で叫んでいる。
あっ、こいつ俺が勝つ方に賭けてやがったな!
ちょっとでも信頼した俺が馬鹿だったよ。
「一条君」
応援している稲葉さんが自分のお腹を指指している。
なんだ?
「はっ!?もしかして稲葉ちゃん。お腹に一条君の子供がいるの!?」
そんな記憶は一切ない。
稲葉さんも強く否定している。
周りの大人達、特にお母様方が騒ぎ出した。
愛の力がどうのこうのと言っている。
「えっ、いちじょーの番って、ししょーじゃあないの~?」
周りのお母さん達が更から更にざわめきが。
「あら、修羅場」
とても楽しそうだ。
武道大会の前座として、別の意味で盛り上げれて何よりです。
「ち、違うって。だからベルトだよ」
ベルト?
ああ、そうか。
今、俺は稲葉さんが合成した特製ベルトを装着しているのだった。
350万PV達成です(*´∀`)
ありがとうございます。