124話 竜王の帰還。
竜誕祭の前日、竜王様達が竜の谷に帰還してきた。
まだ、ミネゴルド王国での仕事は終わってないので、竜誕祭が終わり次第戻るらしい。
竜王様が疲れたサラリーマンに見えるのは幻想だろうか?
単身赴任の竜王は帰って来て早々にシャルティア様を抱き締める。
親子のほのぼのしたいい光景の筈なんだけど、シャルティア様が嫌がってる風に見えるのは気のせいだろうか?
「おとーさま。今いーとこなの!」
シャルティア様は、竜王様の頬をグイーと手で押す。
シャルティア様は今、相楽さんと一緒にアニメの最新話を観ている。
竜王様の背景にガーン!と見える……
それでも諦めずに、一緒にソファーに座ってシャルティア様を抱き抱える。
それは悪手だと思うんだけどな。
そしてグリグリと頬擦りをする。
うん。嫌がっている。
「おとーさま、ウザい~!」
この世の終わりを迎えた様だ。
そういえば、祖父のポルンガ様もそれで嫌われているんだったな。
すっかり落ち込んで、背中を丸めた竜王様がフブキ様に慰められている。
もうすぐ、おとーさまとはお風呂に入らない。って言い出すんだよな。
頑張れ竜王様。
「ああ、一条。居たのか?」
『竜王様お久しぶりです。お邪魔してます』
俺に経った今気付いた様だ。俺の事を竜族の友とか言っていたのに酷くない?
「ああ、ゆっくりしていけ。それで、親父……ポルンガ様には会えたのか?」
『いえ、竜誕祭で、フブキ様が紹介してくださるそうです』
「そうか……」
あれからの事を竜王様が教えてくれた。
スピカ様が女王に再び就任して頑張ってはいるが、やはり側近がほぼミネゴルド王に処刑されたので、以前俺が立て直した時よりも、大変らしい。
しかも、マイケル商会も本店のかなりの人数の従業員が、勇者に殺され、しかもマイケルの妻であり役員のスズランも心にかなりのダメージを受けて、うまく経営が回っていないそうだ。
ミネゴルド王国で働いていたドワーフ達も、王国から離れて職人達の確保にも困っているそうだ。
竜王様大丈夫か?
「まあ、なんとかするしかないだろう」
竜王様が遠い目をしている。
どうか頑張って欲しい。