121話 ちょっとだけ
今日もぼーっと魔法のトレーニング中。
「ねえねえ、無属性魔法って結局何が出来るの?」
稲葉さんが聞いて来た。
稲葉さんはそれほどアニメや漫画を見なかったそうだ。
それを聞いて反応したのが、相楽さん。
「稲葉ちゃん。無属性魔法って言ったらあれだよ」
相楽さんが説明し出した。
俺も知りたいので聞く。
相楽さんが魔法について熱弁する。
回りに居るメイドラゴンさん達も頷いているので、間違っていない様子だ。
さすがオタク詳しい。
「ほぉぇ~、ししょー。すごい~」
憧れの眼差しで見られ、相楽さんも得意気だ。
「身体強化以外で何か出来ることないかな?」
そう、100メートルが0.1秒速くなるぐらいじゃ、魔法の効果を全然感じない。何か魔法を使ってみたい。
う~ん。と考える相楽さん。
それを隣で真似するシャルティア様。
相楽さんが次々に出す無属性魔法。
実現出来そうな物は、残念ながらない。
「はいはい。貴方達もそろそろ自分の仕事に戻りなさい」
フブキ様の解散の声がかかる。
それぞれ持ち場にもどる。
一人になって試しに、さっき相楽さんが候補に挙げた無属性魔法を試してみる。ダメ元だ。
足の裏に魔力を集中させる。
そして一気に放出する。
『浮いた!?』
もう一度やってみよう。
間違いない、ちょっとだけ浮いた。
「一条君。どうしたの?大きな声出して」
「どしたの~?」
相楽さんとシャルティア様がやって来た。
『相楽さん、シャルティア様。浮いた、浮いた』
「何言ってるかわかんないよ?」
「わかんない~」
二人に説明する。
疑わしそうな顔でみられる。
確かに多分数センチだから、わからないかも知れないが。
「えー、本当に?」
『本当だよ!ちょっと見てて』
また足の裏に魔力を集中させる。
そして一気に放出する。
浮いた。
『どう?浮いたでしょ!』
凄い微妙な顔をしている。
「スゴイネ~」
「ししょー。いちじょー浮いてる~?シャルはわかんなかった」
「しっ、言っちゃ駄目だよ」
「あい」
この二人に同情されると、かなり傷つく。
『いや……本当だって。相楽さんもやってみるといいよ』
「う~ん。大丈夫かな」
「シャルも」
俺は頑張って熱弁する。
「ちょっとジャンプしてるんじゃないの?」
『いや、違うって。足の裏から魔力を一気に放出したら、ちょっとだけ浮くんだって』
すると隣でシャルティア様が俺の背丈より高く飛んだ。
「おおおっ!おもしろーい」
ほら、本当だったろ。
「へぇー、私もやってみよ」
それからみんなで、跳躍していたらメイドラゴンさんに「部屋で暴れないで下さい」と怒られた。