120話 計測
「じゃあ、ボーイから行ってみよう☆」
何故か百メートル走の計測をする事になった。
まずは普通に走ってみる。
そんなに運動は苦手ではないと思っているが……
「15秒00だね☆」
普通の成績だった。
「普通だね」
「そうだね」
「流石一条君。期待通りの普通だね」
「いちじょー。ふつー」
普通、普通うるさい。
次は魔臓を開けて、体に魔力を流した状態で走る様に言われる。
現在、魔臓を開いていられる時間は20秒程なので、結構ギリギリだ。
「じゃあ、ボーイ。改めて行ってみよう☆」
魔力を流しながら走る。
おおっ!なんか走りやすい気がする。
「14秒91だね☆……うん。ナイストライ……」
おぉぉ……
なんて微妙な。
魔力で速くなったのか?
「……」
「……」
「……」
誰も何も言わないで、微妙な表情だ。
「ねえねえ、ししょー。いちじょーは速くなったの?」
「微妙過ぎてわからない」
「さすが、いちじょーだねー」
いや、ここにはっきり言う人達がいました。
「次はそこのガール、行ってみよう☆」
相楽さんが指名された。
「ししょー!がんばってねー」
相楽さんの運動している姿なんて珍しい。
「じゃあ、ガールいってみよう☆」
相楽さんが走り出した。
めちゃくちゃ綺麗なフォームで走っている。
……が、遅い。
遅いし、あれ?
途中で止まってない?
ゴールした。
「22秒84だね☆」
……遅い。
それなのになんだか満足げな表情だ。
小声で走り切れたって言っている。
そこっ!?
「じゃあ、ガール。次は魔力を使ってやってみよう」
「いえ、私はもう大丈夫です」
凄い、普通に断った。
いや、魔力を測定してるのだから一回で辞めたら意味ないでしょ。
ほら、ビルダー先生も困っている。
困って俺の方を見ている。俺になんとかしろってか?
「相楽さん。俺よりいいタイム出したら、新発売のポテチを出して買ってあげるよ」
物で釣る作戦だ。
なんだかんだで、相楽さんにはこの作戦が一番効くのはわかっている。
「新作のポテチ一つで私が首を縦に振るとでも思っているの?私はそんなに安い女じゃないよ」
『新作のコーラも付けよう』
「乗った」
扱い易くて何よりです。
相楽さんがスタート位置に着く。
クラウチングスタートの構えだ。
スタートした。
フォームは綺麗なんだよな。
うん?何かぶつぶつ言っていないか?
「14秒88、ガール凄いじゃないか☆君はこんなにも、魔力を扱うのが上手かったんだね☆」
相楽さんにタイムを抜かれた。
かなりショックだ。
「見たか一条君。新作のポテチとコーラ宜しくね」
「よろしくー」
『……わかったよ』
相楽さんがこんなにも魔力を扱うのが上手かったとは。
「ねえ、さっき相楽ちゃんオタクの祝福使ってたよね」
「うん。ぶつぶつ言ってたしね」
あっ!
そういうことか。