118話 魔力は筋肉を美しくする。
あれから魔力を増やすトレーニングをしている。
どうやって増やすのかというと、ただただ魔力を使っているだけだ。
まだ魔法が使えないので、魔臓の開け閉めを繰り返している。
ただ、傍目から俺を見るとただ、ぼーっとしている様に見える。
「ねぇ、いちじょー。あそぼー」
構わずにトレーニングを続けていると、「あそぼー!」
耳元で叫ばれる。
鼓膜が死んだ。
集中力が切れて、間違ってまた魔力を空にしてしまう。
普段は空になる前に閉めるのだが。
そして気絶。
目が覚めるとシャルティアが俺の真似をして、死んだふりごっこをしている。面白いのかな?
子供ってなんでこんなにも遊びを勝手に見つけれるのだろう?
「へい☆ボーイ☆どうしてトレーニングに来ないんだ?」
ビルダー先生が迎えに来た。
俺は魔力を増やすのに忙しいので、ビルダー先生の授業に行かないつもりだだった。
『フブキ様に魔力の使い方を教えて貰ったので、その復習をしたいので、今日は……』
やんわりお断りする。
「そうかい……」
落ち込ませてしまった。
「じゃあ行こうか☆」
そのまま担がれて拐われた。
全然落ち込んでなんかいなかった。
心配は二度としない。
いつもの練習場に来た。
「じゃあ、ボーイ☆いつもの通りにまずはランニングだ☆」
始まってしまった。
いつもの通りに、約一時間のランニング。
その後、腹筋、腕立て伏せ、スクワットと続く。
この時点でもう限界を超えている。
「ボーイ☆ほら、辛いとき程笑顔だよ☆」
ポージングをとりながらのアドバイス。
暑苦し過ぎる。
「ボーイ☆今、魔臓を開いてごらん☆さあ、さあ☆」
全然集中出来ない。
言われた通りに魔臓を開く。
体中に魔力が行き渡る。
すると、少ーーしだけ楽になった。
「どうだい?ボーイ☆」
満面の笑みで聞いてくる。
『少しだけ楽になりました』
「だろう☆だろう☆」
魔力には、体力を回復させる効果があるようだ。
『魔力って体力を回復させる効果があったんですね』
「違うよボーイ☆魔力は筋肉を回復するのだよ☆」
本当か?
後でフブキ様に聞いてみよう。
なんか信用出来ない。
「へい、ボーイ☆もうワンセットいくぞ☆」
結局その後もうワンセットして、ヘトヘトで帰った。
その日の夕食。
「環那、貴女また腕を上げたわね」
フブキ様が向井さんの料理を褒めている。
ここに来てからは向井が食事を作っている。
王族が自分の専属の料理人以外の料理を毎日食べて大丈夫なのだろうか?
大丈夫らしい。
専属の料理人といっても、焼く煮るぐらいで料理の能力は低い。
竜族とはそんなものだろうか?
そうらしい。
フブキ様から料理人の教育を最優先にするように言われている。
シャルティア様も野菜以外は美味しい、美味しいと言って食べている。
まあ、気づかれない様に野菜を料理に入れているみたいね。
「それで、一条。魔法の訓練の方はどう?順調?」
『……はい。今日は魔力が筋肉を回復することを知りました』
「筋肉を回復?」
フブキ様が不思議な顔をしている。
まあ、そんな気はしてましたよ。
「一条君、まだ続けれたんだ」
「何かコツとか掴めたの?」
『フブキ様に協力して貰って、魔力を感じれる様になったよ』
「フブキ様の協力!?」
「聞いてない」
「ずるい」
この後、みんなもフブキ様に魔臓をつつかれていた。