117話 魔臓
「一条何してるの?」
現在俺は腕立て伏せの最中だ。
背中の上にはシャルティア様が乗っている。
「う、腕立て伏せです」
腕がプルプル痙攣し出し限界だ。
「シャルティア、一応貴女も女の子なんですからね。
異性とそう簡単に触れあうものではありませんよ。」
「大丈夫~。一条だけだから~」
「まぁ、それならいいわね」
何が良いのかわからない。
「一条、シャルティアを怪我させちゃ駄目よ。お義父様が怒るわよ」
人間嫌いだったっけ?
なるべく穏便に済ませたいな。
『シャルティア様、降りてくれませんか?』
「いやっ! あと10回」
あと10回出来るか?
『「ああ~」』
……無理でした。
「それで、なんで筋トレなんてしてたのかしら?」
『ビルダー先生からの課題です』
「筋トレが?」
『はい。なんでも筋肉魔法は美しいとかなんとか』
「……何それ?聞いた事がないのだけれど」
フブキ様の知らない魔法があったなんて驚きだな。
「それでどれくらい魔法が使える様になったの?まずは生活魔法を覚えると楽よ。無属性魔法で攻撃系統はあんまり無いからね」
『……まだ、魔法の使い方すら教えて貰ってません。
魔法は筋肉が必要と言われたので、まだ体作りの最中です』
フブキ様が変な顔をしている。
何かおかしな事を言ったのか?
「魔法に筋肉なんて必要ないわよ」
薄々思っていたけど、……やっぱりですか。
「はぁ、しょうがない。
私が教えてあげるわ。ちょっとこっちに来なさい」
フブキ様に呼ばれ、側に行く。
フブキ様の護衛達も俺達の事をそれほど警戒していない感じだ。
信頼されてるのかな?
それとも、俺達が虫けら程度の戦闘力しかないから、安心しているのかな。
「ちょっと服を捲ってみなさい」
言われた通りにシャツを捲る。
フブキ様が俺のお腹に手を当てる。
さっきまで筋トレで汗かいてます。すみません。
そんな事を思っていると、お腹の中をつつかれている感じが。
なんだ?
「これよ、これ。これが魔臓よ」
魔臓?
聞いた事が無い。
そもそもそんなのあったら、とっくに医者が気付いてるはずだ。
それよりもくすぐったい。
『魔臓なんて、初めて聞きました。
俺達の世界では持ってる人はいませんでしたから』
「そうなの?まあ、魔臓は目には見えないし、触れないからね」
衝撃の事実。
魔臓って目には見えないんだ。
「今、私の魔力で貴方の魔臓を触っているのわかる?」
わかります、わかりますので強くつつかないで下さい。
「ああ、やっぱり魔臓が閉まってるわね。じゃあ開けるわね」
ん?魔臓が閉まってる?開ける?
フブキ様がそう言った次の瞬間、体の中に何かが染み渡る。
サウナにギリギリまで入った後、水を飲んだ感覚だ。
フブキ様の方を見ると頷いている。
「わかったみたいね、それが魔力よ」
これが魔力。
不思議な感覚だ。
「これからは、筋トレじゃなくこの魔力を増やす練習をしなさい」
最後に聞こえた言葉だ。
どうやら俺は魔力切れで、気絶したらしい。
あとで「ちゃんと蓋をしなきゃ」と怒られたが、そもそもどうやって閉めるか教えて貰ってませんと言うと「オホホ」ととぼけられた。
投稿再開です。